属性戦士③
「頼んだぞ」
そういって俺は電話を切る。
「伝えたか?」
「ああ」
アキに伝えた内容は穴を使用した魔術師を見つけた。他の魔術師を逃がしてしまって見張りがいない。だから、この場所まで来て見張り頼むというものだ。雷恥は廃工場から離れた場所に移動させてひもで縛りつける。その場所は他の異次元の穴とも近くない遠い場所だ。
もちろん、魔術師の多くが死んでしまっている可能性があることを教えていない。
「よし行くぞ」
「風上」
「なんだ?」
「雷恥の他の魔術師も風上の知り合いか?」
「あの様子だとそうだろうな。今の君では到底太刀打ちできない」
なんか複雑だな。敵はかつて風上の仲間だった。その仲間と命の取り合いをしなくてならない。風上はなんともないような顔をしている。魔術の世界ではそれが当たり前なのだろうか?
「国分教太」
「ん?」
「これから戦う相手は俺のかつての仲間。私情を挟むことになる。俺がもし迷っていたら、問答無用で俺のことを殴ってくれ」
「あ、ああ。分かった」
そうだ。敵の中には風上の彼女もいる。それは迷いも生じる。だが、それは死に直結する。それはウルフとの戦いで十分思い知った。そのことを俺に最初から言っておくということはすでに迷いがあるということか?今は何とも言えない。
「さて、次の穴のある場所に行くぞ」
「ここからどのくらいだ?」
「2キロくらい」
「・・・・・・もしかしてまた?」
「そうだな。ここに来た方法と同じように行く」
戦う前に死ぬ気がする。
風上が刀を抜き取って何かの気配を察知したのか身構えた。
「どうした?」
「どうやら必要ないようだ」
すると木の上から閃光のような攻撃が風上を襲う。風上は後ろに飛び退くついで俺のことを蹴り飛ばして後退させた。まさか、最初の怪我が味方によるものなんて考えてなかった。
「やっぱりですか?」
攻撃を仕掛けてきたのはアキと同じ年くらい、つまり俺と年の変わらない女の子だ。赤髪のツンテール。幼さの残る童顔。その手には細剣、レイピアが握られている。さっきの雷恥は二刀流とはいえ刀を持っていたが、この子は剣種類が違う。
「お久しぶりです。風也さん」
その笑顔はどう見ても普通の少女しか見えない。アキと言い、魔術の世界の情勢は悪いのだろうか。こんな女の子が戦わないといけない情勢に腹が立つ。
「久々だな火輪」
火輪。名前に火があるところを見ると風上と同じ機関出身者ということになる。本当に風上の言うとおり名前だけで機関の出身だと分かってしまう。
「雷恥君は?」
「生きてるが、動けないように拘束してある」
「そうなんだ。だから、集合時間になっても戻ってこないはずだ。それがしかも風也さんに止められたとなると仕方ないね」
「どうする?火輪」
「そうですね。雷恥君を回収したいところだけど、たぶん許さないですよね?」
「当たり前だ」
そうだ。いくら風上の仲間だったからと言って多くの人を殺して何事もなかったかのように許しを得れる訳がない。
「なら、力ずくで」
火輪は左手を後ろに組んで剣を顔の正面に立てるように構えた。風上と雷恥と違って剣術も違うようだ。
「行きます」
火輪はその態勢のまま姿勢を低くして突撃してきた。そして、閃光のごとく突き攻撃をしてくる。風上は刀で防御しながら後退していく。何というか火輪の攻撃には隙がない。だが、未だに属性魔術らしく攻撃をしてこない。これだけ見ていると魔術師同士の戦いには見えない。でも、風上が追い込まれているように見える。そして、木にぶつかり後退できなくなった。
「そこ!」
チャンスとばかりに火輪はレイピアの刃に豪炎ともいえる炎が灯る。爆発力のある攻撃で爆炎が上がり風上のいた木が激しく燃えて倒れる。
「風上!」
そこには火輪しかいなかった。
すると、火輪は何か気付いて3歩トントンと下がる。風上の斬撃を交わす。
「あれをかわすの?」
「お前の戦術は単純だからな」
「読みやすいからこそ、イレギラーを警戒する。そうですよね」
「・・・・・そうだな」
雷恥の時のような余裕そうな顔はしない。属性魔術的には風は火を苦手とする。さっきは属性で有利だったが今は逆だ。それに向こうの方が剣術がしっかり身につけている。
「私は機関で王宮剣術を学んだ。特に決まった型のない雷恥とは違うよ」
王宮剣術を学べるのかよ。
確かに風上には型というものがない。
「国分教太。俺には剣術の型がないみたいなことを思ってないだろうな?」
「思ってる」
「一応俺も型がないわけじゃない」
なんだ?そのあいまいな言い方は?
「でも、今は使わない」
「なんで?」
「大人の事情だ」
俺はお前を大人だと思ってないぞ。
「さて、いくら風也さんでも容赦しないですよ」
火輪が突っ込んでくる。
「いいか。国分教太。いくら、属性的に不利でも勝てないわけじゃない。それはアキナが一番知っていることだ」
「は?どういうことだ?」
「それを見せてあげよう」
そういって風上は刀に風を宿した状態で突っ込んでいった。
「風也さん!終わりです!」
火輪が刃に炎を灯して風上に突いてくる。風上は刀を小さく突いて風を起こして体をふわりと浮かして火輪の攻撃の軌道から外れる。そして、火輪の剣を風上は斬りこんだ。金属どうしたぶつかる音がした後、剣が折れた。火輪の剣だ。
「なんで?」
「風は確かに火を苦手とする。風によって空気が送られて火の威力をあげてしまうから。だが、逆にそれを利用することもできる。俺は君の剣に当たる瞬間に瞬間的に強い風を押して火を強めた。いくら火属性の魔武でも想定外の強い炎でも焼切ることはできる」
風上は火輪の剣を焼切ったというのだ。さすがの火輪も柄だけの剣でもは勝てないと踏んだのか剣を捨てて手を挙げた。
「さすがです。敵いません」
強い。相性が悪くても状況が悪くても風上はものともしない。これが風上風也という男なのだろうか。
そして、思ったことがある。
「俺っている?」
「正直いらない」
だよね・・・・・・。




