魔術のある日常④
「じゃあ、作戦会議を始めるで」
「あのいいか?」
「なんや?」
「なぜ、作戦会議をファミレスでやるんだ!」
「迷惑ですよ。教太さん」
「アキ!お前はおかしいと思わないのか!これから命に関わる作戦をこんなほんわかしたところで練るものなのか!」
するとウェイトレスがやって来た。
「お待たせしました。イチゴパフェでございます」
「ああ、私」
緊迫感ゼロ。
「君の言うとおりだ。これから考える作戦はこれからこちらの世界で張る防衛網にも関わる大切なものだ」
「ハンバーグ定食を食べながらだと説得力ないぞ。風上」
「私のチョコレートパフェはまだでしょうか?」
「いい加減にしろよ」
俺の覚悟を返せ!
「つーか、お前ら金はあるのか?」
アキはこっちに来てかなり日が経っているらしいが風上にリュウにリンさんはこっちの世界に来てあまり日が経ってないみたいだったぞ。金という常識は存在するのだろうか?
「持ってるわよ」
リンさんはウエストポーチから財布を取り出した。
「はい。23ヴァネよ」
「どこの国の紙幣だ!」
しかも23って中途半端な紙幣だな!
「リン。ここは俺たちの世界じゃなんやぞ。こっちの世界にはこっちの世界の紙幣ってもんがあるんやで」
リュウの言うとおりだ。
「ほら、俺がリンの分も払ってやるで。何ルピーや?」
「それはインドの紙幣だ!国間違えてんぞ!」
「ここ何て国や?」
魔術師ってバカばっかり。アキも最初は自分のことを英語で男だと言っていたし、あっちの世界では魔術の知識よりももっと日常生活に支障が出ないように常識を学ぶべきだ。飯を頼むときはお金の心配を最初にしろ!
「面倒だ。君が払え」
「そんな金はない」
常に貧乏な俺にそんな無茶なこと言うな。
「仕方ない。これでいいか?」
風上は金塊を取り出した。
「大丈夫だ」
なかなかの重量だ。これは間違いなく本物だ。
「なら、俺も何か頼もうかな」
「緊張感のない奴だ」
黙れ風上。
「じゃあ、食べながら話を進めましょう」
アキは地図を取り出した。この街全体を記した市販されているものだ。
「というかこれ買ったのか?」
「秋奈さんに頼みました」
そのお金はおそらく美嶋の資金でなくてオカマの資金だろう。なんとなくだけど。
ちなみに俺たちがさっきまでいた廃工場は町はずれの山のふもとにあった。昔は紡績工場だったらしいが時代と共に廃れて行ったらしい。分野を変えたらしいがすぐにつぶれてしまった会社だ。
このファミレスはその工場に近い住宅密集地のはずれにある。
「おそらく、人目のつく地域にはいかないでしょう」
「その根拠はなんだよ?」
「私も人目を避けるように逃げてたのは知ってるでしょ?」
「ああ、そういえば」
俺が最初にアキと会ったのが人通りの全くない裏路地だったな。
「俺たちはこっちの世界の常識が分からない。俺たちが積み上げてきた常識が通用するか分からない。それに下手に変な行動を起こして騒ぎを起こすと居場所を知られることになる」
俺たちはどうなんだ?こんな人がたくさんいるようなところにいて大丈夫なのか?
「とりあえず、チームを二つに分けましょ。私とリュウちゃん。風也ちゃんとアキナちゃんと教太ちゃんって感じの分け方でいいかな?」
「待て!なんで俺が風上といっしょなんだ?」
「嫌なのか?」
嫌だよ。何て言えない。
「嫌だ」
「言えないんじゃないのか?」
あ。しまった。でも気にしない。
「でも、なんでそんな分け方にしたんですか?バランスを考えるとリュウさんとリンさんを分けるべきだと思いますよ」
バランスを考えるということはこのふたりはなかなか強いということか。こっちはまだ覚醒していない力を持つ俺と全盛期の半分以下の魔力しか持たない魔女だ。明らかにお荷物だらけだ。風上がどれだけ強いか分からないが。
「だって、ふたりの目的がいっしょみたいだから」
俺と風上の同一の目的ってなんだ?
・・・・・・・あ。
お互いに気付いたようだ。
俺たちの目的、俺はアキを守り二度と苦しい思いはさせないということだ。生命転生で生き返った風上は恩返しに、俺は美嶋を命がけで助けてくれた恩返し。アキはそんなことは気にしなくていいというだろう。でも、俺たちが許さない。
「分かった」
「了解しました」
「あのふたりの目的って?」
「「さぁ~?」」
俺と風上の意見が初めて合った瞬間だった。




