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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
風と氷の糸
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魔術のある日常①

 俺の入院生活も3日で終了した。風上の治癒魔術によって俺の怪我の治りは超人並みになっていた。医者からはありえないの一言だけだった。退院の日、俺はひとりだった。美嶋とアキは学校に行ってしまった。アキが学校に行くと言いだしてから美嶋は今まで以上に真面目に学校に行くようになった。あのふたりはやっぱり同一人物なのだろう。なかなか知らない人と話すのが苦手な美嶋が自然とアキを受け入れた。いい傾向だと俺は思う。

 俺たちが去った後のショッピングセンターは謎の火災と破壊によって営業再開はほぼ不可能になった。しかも、謎な点が多いことから多くの都市伝説がそのショッピングセンターにはびこった。

 そんなほぼ廃墟と化しているショッピングセンターを俺はひとりで訪れている。

 学校帰りで制服姿だ。

「君はまじめだな」

「ありがとう」

 ある人物と俺はここで毎日のように会っている。

「今日は何を教えてくれるんだ?風上」

「もう、大半のことは教えたつもりだ」

 風上風也はアキ曰くそれなりに強いらしい。いつも肩にかけているバットケースにでも武器を隠しているのだろう。

「だったら実戦でもしてくれよ。属性魔術の戦闘の予行練習とか」

 すると風上は呆れたように言った。

「ここは魔術の世界じゃないんだ。そんな頻繁に魔術師が現れることはない」

 俺の気になることはこの風上から聞いている。この力のこともだ。

 この力の持ち主の名前はシン・エルズーランという人物らしい。イギリス生まれの東洋人。おそらく、シンという人物は無の空間で会ったゴミクズと同一人物だろう。無の空間については風上も知らなかった。

 彼らが来た異世界。パラレルワールド。

「風上」

「なんだ?」

「どうやってこっちの異世界に来たんだ?」

 俺が巻き込まれた運命の根本だ。

「時空間魔術という高度な無属性魔術を使ってここに来た」

 時空間魔術?響きはかっこいい。

「時間と空間を操作できる魔術だ。使える魔術師はこっちの世界でも数えれるほどしかいない。俺たち魔術師に時空間を操ることは難しい」

 そんな難しいのかよ。

「そのためこっちの世界来る人物は限られる。時空間魔術が出来ないのならこっちには来れない」

「じゃあ、ウルフとアゲハはどうやって?」

「尋問をしたらすぐに口を割った。傭兵にはプライドというものはないらしい。彼らは生きるのに精一杯だから」

「そうなのか?」

「傭兵の多くは国を追われたものが多い。生きるために己のすべてを使い戦場に出る。うまくいけば、帰る。失敗すれば死ぬか逃げるかのどっちかだ。俺たちよりも死と隣り合わせの生活をしている」

「そうなのか・・・・・・」

 俺は一体何を考えている。アゲハにやられたことを覚えてないのか?ウルフにやられたことを覚えてないのか?

 なのに俺はなんであのふたりことを気にかけている。

「二人はどうなるんだ?」

 風上は俺の方を睨む。俺はその視線を見て目線を外す。だが、すぐに風上は答えてくれた。

「傭兵なんてものは簡単に裏切る厄介者だ。殺されるだろうな」

「あの!」

「何も言うな」

 風上に強く言われて俺はそれ以上言えなかった。怒鳴り声ではなかった。でも、その強く真の太い声に俺は口をつむる。

「あのふたりはならず者だ。いつ君に復讐を仕掛けるか分からないぞ。あんな奴らは殺した方がいいんだ」

 しばらく沈黙が続いた。

「君は甘い」

 確かに甘いかもしれない。ウルフに関して美嶋を殺した張本人だ。アキも俺もあのふたりのせいで死にかけている。そんな俺たちのことを思った判断なのだろう。でも、それでいいのか?

 俺の力は人を殺す力だった。そんな力を葬るためにウルフたちはやって来た。俺もこれからも人を殺し続ける能力はいらない。これは人を守るために使いたい。それが例え、ならず者の傭兵でも。

「殺さないでくれ」

「何?」

 俺は風上に頭を下げる。

「ウルフとアゲハを殺さないでくれ」

「君はバカか?敵に情けを掛けるな。それがいずれ自分の首を絞めることになるぞ」

 そんなことは分かっている。だが、俺は信じたい。あの時、俺はウルフの表情をこの目で見た。あれはアゲハが無事だったことに対する安心の目だった。闘争心丸出しだったウルフが初めて見せた優しい顔だった。あいつらはふたりならきっとやっていける。

 俺はずっと頭を下げ続ける。軽くてスカスカな頭だけど俺は下げ続ける。

「頭をあげろ」

 風上に言われて頭をあげる。

 風上は大きくため息をつく。

「君で二人目」

「何が?」

「あの二人を生かしてくれって言われたのは」

「え?」

 他に誰が。もしかして、

「アキ?」

「正解だ」

 訳が分からないぞ。アキはウルフに顔を焼かれそうになったじゃないか。十分恐怖をウルフに植え付けられたじゃないか。なのにどうして。

「意味が分からん」

「アキナはもう人の死ぬところを見たくないんだ。いや、見せたくない」

 風上の表情が険しくなる。彼女を守るために命を尽くす俺以上の覚悟を持つ者の目だ。

「国分教太。君にも俺と共にアキナを守ってほしい。この通りだ。君はまだ力をうまく使えないし、一般人だということは分かっている。でも、」

「言わなくても分かってるよ」

 それくらいの覚悟はできている。それにこの力を受け入れるときの俺の望みはアキを守ることだった。小さくて弱いアキを俺はこの大きな力で守りたい。俺に秘められたこの力で。特徴のなかった俺に生まれた大きな特徴で。

「それでウルフたちはどうやって来たんだ?」

「ついてこい」

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