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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
風と氷の糸
31/163

図書室①

「国分く~ん。お~い、国分く~ん」

「うう・・・・・・」

 名前を呼ばれて目が覚める。

 頭がボーっとしていて働かない。重力に支配された瞼を無理やり開けさせる。そこにいたのは赤いフレームの眼鏡をかけた黒髪長髪巨乳美人。いろいろとオプションの突きすぎた完璧な女の子。

「蒼井?」

「正解だよ」

 蒼井空子。確か俺のクラスの図書委員だったはずだ。美嶋とオカマの他に存在する数少ない俺と馴れ馴れしく話す人物だ。俺は一応不良なのだ。だから、気易く話しかけてくる人物は皆無に等しい。そんな中で蒼井は美嶋同様によく俺と行動を共にすることが多い。

「気持ちよさそうに寝てたね」

「まぁな」

 俺は今図書室にいる。蒼井は見た目同様真面目な奴なので授業をざぼってまで俺に会いに来るようなことはしない奴だ。つまり、こいつがここにいるということは昼休みか何かだろう。

「珍しいね。国分くんが本読んでるなんて。時間通りに学校に来ること自体が珍しいのに」

 蒼井は床に散乱している本を回収しながらそう呟く。

「うるさい」

 そう。俺は不良でありながら学校に時間通りに来ている。美嶋もだ。オカマは仲間外れだ。それにはいろいろと深い事情がある。

「歴史の本ばっかりだね。歴史に目覚めた?」

「目覚めてないぞ。少し調べ物をしていただけだ」

 そのおかげで頭がオーバーヒートしそうだ。

 大体やりたくやったわけじゃない。でも、気になって仕方なかったからだ。アキたちが来たパラレルワールドは途中まで俺たちと世界がいっしょだった。革命がどうとか言っていた。そこでそれらしい革命を俺は調べていた。そこで出てきたのが産業革命というものだ。蒸気機関という機械が発明されたのもこの時期だ。ここからは俺の推測だが、魔術の世界では化石燃料がないと言っていた。つまり、機械を使っていないということだ。もしかするとこの産業革命がおこった辺りの時代がパラレルワールドの分岐点だったのかもしれない。

「本戻しておくね」

「ああ、ありがとう」

 蒼井は気の利く子だ。俺にいつもおせっかいをかく。頼んでもないことを進んでやってくれる。クラス内でも人気があるらしい。美嶋が言っていた。そんな蒼井は俺たちとばかり行動している。彼女のイメージダウンにもつながる俺たちと行動して何がしたいのか俺にはさっぱりだ。

「そういえば、美嶋さんが探してたよ」

「知ってる」

 携帯がバンバン震えてたからな。

「それにしても二人とも変わったよね。特に国分くん」

「どこが?」

「なんか・・・・・・こう・・・・・・・引き締まったというか・・・・・・・ほら、いつもなんか抜けてたところがあったけど今は目的がしっかりしていて前を見ているような感じ」

 蒼井は笑顔で言った。確かに変わったかもしれない。あの戦いで。

「あの子が転校して来てからだよね。三月さん」

「・・・・・・・そうだな」

 蒼井の言う三月とはアキのことだ。三月アキ。今の彼女はそういう偽名を使ってこの学校に転校してきた。彼女の目的は俺と美嶋を魔術師の手から守ること。だが、今のアキにはまともに魔術を使える魔力は存在しない。だから逆に力をつけつつある俺のそばにおいて俺が守る。そのためにも知ることがいろいろある。

「ああ!教太見つけたわよ!」

「こんなところにいましたか。探したんですよ、教太さん」

 図書室に入って来たダブル美嶋。茶髪の方が俺の良く知る美嶋で黒髪ポニーテールがアキだ。

「お昼にしましょうよ」

「そうよ。せっかくアキがお弁当作って来たんだから」

「秋奈さんに手伝ってもらって」

「あたしは別に何も・・・・・・」

「楽しそうだね」

「うるさいわよ、空子。ほら、教太もさっさと来なさい」

「はいはい」

 俺は立ち上がる。何も変わらない普通の光景。日常だ。

 だが、俺の身にいつも感じる緊張感。いつどこで魔術師が俺の力を求めて襲ってくるか分からない。俺は守りたい。こんな平和で退屈な日常を守りたい。そう強く思う。

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