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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
27/163

運命⑥

 このままでいいのか?

 意識は完全に現実にはない。ただ、分かる。俺はあのウルフを圧倒していた。俺も知らない力を使って体が勝手に動いてウルフをただ殴る。これは俺ではなくゴミクズがやっていることなのだろう。

 本当にこのままでいいのか?確かにウルフには勝てる。でも、俺がしたかったのはウルフを殺すことじゃない。

 柱で動けなくなっている。俺はそこに無敵の槍を構えてとどめをさそうとしている。

 ダメだ!この力は人を殺す物じゃない!

 俺は抵抗する。

『こいつを今殺しておかないと後々脅威になるぞ』

 そんなの関係ない。殺さないといけない命なんてない!

『だが、こいつはお前の女を殺した。無関係だった。復讐はするべきだろ』

 でも・・・・・・。

『その迷いが死につながる。俺は知っている』

 それだとウルフの言うただの人殺しの力になる!それなら、こんな力葬られた方がましだ!

『じゃあ、どうする?』

 俺の体を返せ!

 意識が戻る。無敵の槍でウルフに攻撃しようとしている最中だった。俺はとっさに槍を右にそらした。床に当たると砂埃が起こり周りの炎が消える。

 ウルフには当たっていなかった。すごく驚いた顔をしていた。

「どうした?とどめをささないのか?」

 息を整える。全身に電撃が走ったように痛む。もう立っているのが奇跡だ。だから、最後に言いつける。

「・・・・・・帰れ」

「は?」

「あそこにアゲハが寝てる。アゲハを連れてさっさと自分の世界に帰れ!」

 するとウルフは俺の胸ぐらをつかみかかる。

「情けを掛けるな!殺すなら殺せ!俺はあの女を殺した張本人だぞ!俺は傭兵だ!死ぬことなんて怖くないんだよ!」

 そうだよ。美嶋を殺した。この件に全く無関係の美嶋を殺した。でも、この力を使って人を殺せない。この力は人を守るために使いたい。俺はそう思っている。だから、

 俺はウルフの顔面を殴る。力を発動していない思いのこもった重いパンチだ。

ウルフは俺の胸ぐらを離してその場に尻餅をつく。

「帰れよ。もう、俺の前に現れないでくれ」

 俺は自然と涙が垂れる。もう顔の表情もぐちゃぐちゃでかっこ悪い。でも、ウルフをずっと睨みつける。

 俺はウルフを許せない。でも、俺の力もアキもウルフの仲間を多く殺している。これ以上犠牲を出しても殺された人たちは誰も喜ばない。だからもう・・・・・・・・。

「・・・・・・・・頼むから消えてくれ」

 俺は涙で前が見えなくなった。ウルフはその隙を狙って攻撃できたはずなのに攻撃しなかった。

「・・・・・・・後悔するぞ。あの時、俺を殺らなかったことに」

 ウルフは噴水近くに縛られて気絶しているアゲハを抱える。

「・・・・・・・なんだよ。・・・・・・・・アゲハの奴・・・・・・・生きてたのか」

 そうウルフが呟いているように聞こえた。ウルフは振り返って俺とアキの姿をもう一度見るとショッピングセンターから消えて行った。

俺は急に気が抜けたようにその場に倒れる。もう、立ち上がることはできない。

「教太さん!」

 アキが心配そうに駆け寄ってくる。そして、俺の体を起して俺の頭を膝の上に置く。

「大丈夫ですか?」

「・・・・・・・アキこそ」

「私のことはいいです!」

 だが、アキにはもう俺の怪我を治すだけの魔力を残していない。

「すぐに援軍が来ますから!」

「なぁ」

「なんですか!」

「美嶋・・・・・・・死んじまったのか」

 アキはハッとしてアキの死体がある方を見る。

「あいつなずっとひとりだったんだよ。昔から少し人付き合いが下手でな。令嬢というのを特徴にして人と付き合ってきたんだ。でも、今はそれがない。俺はそんな寂しそうな美嶋と再会した時にスッゲー閉塞的に見えたんだ」

 アキはただ真剣に俺の話を聞く。

「だから、思い切って声を掛けたんだ。そしたらすぐに俺を敵みたいな目に見てきてよ。全くバカだよな。そんなことしてたら誰も近寄らないのによ。それでもうれしかったんだよ。俺が一度話しかけただけで美嶋は俺の方に自分からやってくるようになって、いつの間にかいつもふたりでいた」

 俺はアキの手を握る。アキも俺の手を包むように握る。

「途中からそれは友情じゃないってことは分かってた。俺が見ないようにしていただけだ。あいつは俺のことが好きだったんだ。こんな俺のことを好きになってくれたたったひとり女の子なんだ」

「幸せですね。美嶋さんは」

 アキが美嶋の名前をつぶやいた。

「分かりました。私に任せてください。教太さんの知らない魔術のすごいところを見せてあげますよ。だから、疲れたのなら少し眠ってください」

 俺は言われるがままに瞳を閉じる。アキの膝を上は誰かに似ているような気がした。

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