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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
23/163

運命②

 いくら電話をかけても教太は出ない。ずっと、電波の届かないところまたは電源を切っているかと言いうアナウンスの繰り返し。

「たく、本当にあの子と変なことやってないわよね?」

 あたしは教太と教太が拾ってきた女の子を探しに夜の街を出た。暗闇に包まれる街中に出るのがこれが初めてじゃない。結構よく出歩いている。その時は必ず私服を着て、少し化粧をして年齢をごまかす。補導が面倒だからだ。何度も出歩いていることによりそういうことばかり無駄に身についていく。このままじゃいけないと思っている。私もそうだけど、教太もそう思っていると思う。あいつは昔はあんな奴じゃなかった。高校で再会した時、大きく変わっていた。向こうも同じように思っている。でも、あたしの場合は言わなくても理由を知っていると思う。

 それにして本当にショッピングセンターいるのかしら?

 あたしを騙してホテルに二人でいたら警察に通報してやるわよ。でも、これって嫉妬なのかな?

「いやいや」

 首を横に振る。

 別に教太にそんな気はない。でも、教太といっしょにいるとすごく楽しい。いつも絶望的で苦しい生活があいつといると明るくなって楽しい。だから、あたしは教太といっしょにいたい。

 そして、吸い寄せられようにショッピングセンターにやって来た。爆発の起きた駐車場にはkeep out書かれた黄色いテープで包囲されている。そして、青いビニールシートで焦げた車を覆っている。おそらく、これからまだいろいろ調べるのだろう。それを横目にショッピングセンターの入り口にやって来た。昼間、天窓が割れた吹き抜けから一番近い入り口だ。今も調査で立ち入り禁止になっているのか思いきやショッピングセンター全体は営業中らしく暗い周辺に対して光り輝いていた。でも、この中はどんよりと暗く重い空気なのだろう。ぜんぜんお客が来ないのは有名だ。

「さて、入りますか」

 自動ドアで中に入る。すると目の前に何か見えない壁でもあったらしくぶつかる。でも、まるで池の真ん中に石を落したみたいな波紋が見えない壁にできてあたしを引っ張るように中に入れる。あたしは最初から中に入るつもりでいたからそれに抗わなかった。

 するとさっきまでは何もおかしな所のなかったショッピングセンターの内部があちこちで火の手が上がっていて黒い煙が充満していた。

「え?」

 普通じゃなかった。外はなんともなかったのにそこらじゅうで火災報知機の甲高いベルの音が聞こえる。

「そ、そうだ。連絡しないと」

 あたしはとっさに携帯電話をと出すけど、なぜか圏外になっていた。建物から出ようとしても扉が開かない。

「なんで!」

 慌てて無理やり開けようとしてもびくともしない。携帯は相変わらず圏外。

もし、教太がこの中にいるのだとしたら・・・・・・。

 あたしは携帯をポケットのしまって大きく息を吹いて気持ちを落ち着かせる。

「よし!」

 私は動いていないエスカレーターを使って二階に上がる。教太がいそうな場所としてゲームセンターが最初に浮かんだから。普通の階段同様になっているエスカレーターを上ってすぐに場所にゲームセンターはある。でも、最初にあたしが目に入ったのはゲームセンターの向かい側の本屋が激しく炎上していた。オレンジ色の炎と黒い煙を出して燃えていた。

「・・・・・・・なんで」

 なんでこんな火災が起きているのに誰も気付かないの?

窓から炎の明かりは見えないの?こんなに灰の臭いがするのに気付かないの?

おかしかった。何もかもがこの建物全体がまるで別の世界に飛ばされてしまったみたいなそんな感じがした。

 怖くなって逃げ出したくなった。すると本屋近くのベンチの近くに人が倒れていた。青髪に革ジャンを着た外国人らしき男の人。どこかで見た記憶がある。でも、あんなところに倒れていたら危ない。他人と話すのは苦手。今の生活になってからそれはさらに極端なものになった。でも、今はそうも言っていられない。

駆け足で駆け寄る。

 この閉じ込められたこの中で唯一の人かもしれない。いっしょに行動した方がいいかもしれないと思ったのもある。

「大丈夫ですか!」

 駆け足で駆け寄る。体を揺さぶってみる。体温を感じる。まだ生きている。そのことにホッとする。でも、意識がない。近くで燃える炎にいつのまれてもおかしくない。青髪の人を引きずるように移動させる。あたしの力では背負うこともできなかったからだ。

 すると青髪の人が目を覚ました。

「よかった」

 安心した。でも、青髪の人は急につかんでいたあたしの手をはたいて自分で立ち上がる。そして、あたしの腹部を殴った。その動作は素早くでんこうせっかだった。気付いたらお腹を殴られていた。

 胃袋の中身が全部出てくるところだった。その場にうずくまる。顔をあげると目の前に青髪の人の靴底が見えた。あたしは青髪の人に蹴り飛ばされた。吹き抜けのアクリル板のフェンスに激突する。お腹を殴られた時の衝撃と背中をぶつけたせいで胃袋の中身が逆流してくる。

 呼吸が苦しい。なんで?何か悪いことした?

「魔女が敵に情けを掛けるなんてお前も落ちたな」

 青髪の人は近くに落ちていた刃物を拾う。本当はもう少し長さがあったような刃物だった。剣先が折れている。その刃物をあたしに向けてくる。

「な・・・・・なに?」

 後退りしたい。でも、後ろは壁。それを越えてもここは二階。一階に落ちることになる。

逃げたくても全身に走る痛みと恐怖で足が動かない。

「覚悟いいか!」

 刃物をあたしに向けて飛び込んでくる。あたしは何もできず青髪の人にお腹を刺される。その勢いのせいでアクリル製のフェンスが割れてあたしは一階に落ちる。なんの抵抗もなくあたしは一階の床に叩きつけられる。全身の痛みがもう分からなくなるほど傷む。腹部から流れ出る赤くて生暖かい鉄の臭いのする液体が広がる。仰向けあたしは一階を除く青髪の男と目が合う。

 青髪に男は刃物を高々と上げる。するとその矛先に炎が集まってきて火の玉が出来た。それをあたしに向かって撃ってこようとしていた。あたしはもう全身の感覚が出血のせいで麻痺していた。そのせいか立ち上がって逃げるという行動に移ることが出来た。

 でも、その足取りは不安定で右に左にふらふらと逃げる。そのおかげか青髪の人が放った火の玉の直撃を受けずに済んだ。でも、爆風で再び吹き飛ばされて床に全身を打ち付ける。

 なんであたしがこんな目に合っているの?いい子にしてなかったから?学校に真面目に行ってなかったから?なんでなんでよ?

「・・・・・・助けて。誰か・・・・・・・」

 周りでは炎が立ち込める。このままだとこの火の中に巻き込まれる。でも、もう体いうことを利かない。体がだんだん冷たくなるのが分かる。周りでは炎のせいで高温なのにあたしの体感は冷たくなる。

「教太。・・・・・・・・・教太」

 最後の力を使って教太の名前をつぶやく。こうなるのなら気持ちを伝えておけばよかった。タイミングはいくらでもあったのに。あいつも全く気付かない。そもそも、あいつはなんでも受け入れて溶け込み過ぎなのよ。ついていけなかったのよ。あんな知らない女といっしょに夜の街を出歩くなんて。でも、それであたしは・・・・・・・。

「美嶋?」

 声が聞こえた。それはあたしの良く知る教太の声だった。

「・・・・・・・教太」

 あたしは最後の力を振り絞って立ち上がる。もう、気力だけで動いていた。あたしを動かすのはすべて教太の力だった。火の向こう側にぼんやりと見える二つの影。血が滴り垂れている状態の中あたしは歩く。

 そして、そこには教太がいた。全身傷だらけだった。あの女に手を借りて立っていた。嫉妬もしたかったけどうれしかった。教太に会えて。

「教・・・・・・太。助けて」

 あたしは教太に手を伸ばす。すると何かがあたしの後ろに落ちてきた。そして、何か威圧感を感じた。

「逃げろ!美嶋!」

 教太の叫び声を聞いてあたしは振り返る。後ろにはさっきの青髪の人が立っていた。刃物にはなぜか炎が灯っていた。青髪の男の目は殺気に満ちた狩人の目をしていた。あたしは麻痺していた恐怖の感覚が戻る。

「・・・・・・・・助けて」

 涙があふれ出た。もう、あたし死ぬんだ。

 そう思った瞬間、青髪の人は炎の刃物を振り下ろす。それから全身が焼かれるように熱い感覚がした後の記憶はない。暗く何もない部屋にあたしは閉じ込められた。

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