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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
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非日常⑨

「逃げなかったの?」

 砂埃が晴れてアゲハが飛んでやって来た。少し焦っていたがようだが俺が逃げていないことに驚いていた。そうれもそうだ。戦力の差と相性の悪さが完全に見せつけられてしまったのに逃げないのはおかしいと思うだろう。この死ぬか生きるかのぎりぎりの状況の中でこんなに冷静にいられるのは普通じゃない。おそらく、心の中に住んでいる奴のせいだろう。気持ち悪いが今は感謝すべきだ。おかげで逃げないで済んでいる。

「魔女の姿が見当たらないわね」

 きょろきょろとアキを探す。

「まぁ、いっか。どうせ虫の息だったし」

 よかった。少し胸をなでおろす。さて、ここからだ。ここからは俺とアゲハの一対一の戦いだ。

「来いよ」

 もう、怖くない。

「その自信はどこからわいたのか知らないけどいい度胸じゃない」

 アゲハが横に腕を振ると水の銃弾が無数に表れた。

 そうもうやることは決まっている。

 俺は180度方向を変えて俺持てる脚力を全力に生かして走る(逃げる)。

「・・・・・・・は?」

 あんな水の銃弾は防げない。だから、全力で走る(逃げる)。

「がっかりさせるんじゃないわよ!」

 水の銃弾が飛んでくる。俺は横に飛び込んで交わす。

「逃がさない!」

 水の塊を俺に撃ちこんでくる。水の槍なら!

 俺は両手で受け止める。消し去ることが出来ずに後ろに飛ばされる。治癒魔術で回復する。手の甲に書いてあった陣が薄くなってきた。この治癒魔術も長くはもたない。

 だからこそ、早めに準備をしないといけない。これだけだと足りない。

 俺は再び走る。近くにあった止まったエスカレータで下の階に下りる。

「待ちなさい!」

 水の銃弾が襲いかかる。俺はエスカレータの最後の5段くらいから飛び降りる。そして、空中で体をひねって銃弾が飛んでくる方向に両手をかざす。靄の中に入った銃弾は消えるが入らなかった銃弾の一部が俺の足に当たる。何か砕ける音がした。

「ああああああああああああ!」

 足の骨がいった。右足が紫色に大きく腫れあがる。治癒魔術で少しずつ腫れが引いていく。だが、さっきみたいに走ることが出来そうになくなった。

「終わったわね」

 アゲハは水の槍で攻撃してくる。俺は両手で受け止めて消そうとするが弾き飛ばされる。治癒魔術で全身の痛みが少し抜けるが足の痛みは一向にひかない。それでも俺は立ち上がる。痛みをこらえて走る。

「なかなかしぶといわね」

 水の槍で攻撃してくる。俺はそれを両手で受け止めるが完全に消し去ることが出来ず、後ろに弾き飛ばされる。その度に立ち上がる。全身に走る痛みと最も痛みが強い足をかばいながら俺は走る。

「いい加減にあきらめなさいよ」

 アゲハの声にも覇気が薄れてきた。水の槍を受け止めてははじかれて立ち上がる。それの繰り返しだった。

 そして、ついに手の甲にあった陣が消えた。治癒魔術の効力が切れた。次の攻撃を受けたらもう立ち上がれない。というかもう気力だけで俺は動いている。

「つまらないわね」

 水の槍が飛んでくる両手で受け止めるが消し去ることが出来ずに弾き飛ばされてショッピングセンター中央の天窓のある吹き抜けの噴水の中に飛ばされた。

「まったく急にバカになったみたいね。さっきは私の槍を防ぎだしたと思ったら同じことの繰り返し。あんたってバカなの?せっかく力を持っているのにそれを全く活用していないわね。ランクが低いとか言い訳にならないわよ」

 アゲハは噴水上空までやって来た。これで条件は整った。俺は水の中から出る。そして、二段の構造になっている噴水の二段目によじ登る。右足の痛みがひどくてかっこよくは登れなかった。

「あんたバカ?的になる気?」

「その通り!」

 たぶん、アゲハは最強のバカだと思っているだろう。ああ、大いにバカにしてもらって構わない。だって俺はバカだから。

「あんたも魔女と同様に過去の償い死になさい」

 アゲハはさらに大きな水の塊を集め出した。きっと、今まで一番強力な水のやるがやってくる。その前に。

「なぁ、アゲハ」

「何?遺言?別に聞いてあげなくもないわよ」

 そう、言いたいことは一つ。

「俺はアキの存在が罪じゃないと思う」

「何言っているの?魔女も過去にどれほどのことをしてきたかあんたは知らないだけよ」

「確かに知らない。でも、アキはそんな過去と必死に戦ってる。どんなことをしても償えないことくらいアキが一番分かっている。だけど、彼女は必死に今を生きている。今度は過去にいてよかったと言われるような存在なりたくて命を削ったりして必死に抵抗している。過去の汚名と必死に戦ってる。そんなアキをバカ呼ばわりしたり、過去のことをいつまでも言い続けることは俺が許さない!」

 両拳に力が入る。同じように靄が発生する。

「必死に生きる相手をただ踏みつぶすような奴を俺は許さない!」

「踏み潰して何が悪いのよ!過去にやったことを償うのが人よ!」

「いつまでも過去に縛られるな!アキにも俺にあんたにも未来があるだろ!今を全力で生きる!それを今分からせてやるよ!」

 両手に力を入れて力を発動する。その瞬間、体が重たくなってきた。頭がくらくらしてきた。右足の痛みもマヒして来たみたいで痛みを感じなくなってきた。

「魔力が切れかかってきたみたいね」

 ・・・・・・・・魔力が切れる。

「人には限られた魔力しか持たないのよ。それを数値化したのがランクよ。あなたの力は強力な分、消費する魔力も大きいのよ」

 アキと同じ状況になっている。そのことははっきり分かる。呼吸がつらい。でも、これが最後だ。これが終われば、きっと元に戻る。

「・・・・・・来いよ。遠慮はいらない」

「・・・・・・そう。最初から遠慮する気はないけど」

 アゲハの水の槍を今の状態の俺では防げない。でも、ここを耐えれば勝算はある。神の法則に等しいこの力の効力が俺の予想通りなら次の一撃に耐えるんだ。アゲハは攻撃するために限界まで上昇している。おそらく、今までの攻撃と違って強力すぎる上に自分も被害にあってしまうからだろう。好都合だ!

 消し去る!今までは両手で押さえてきた。その両手の力を右腕のみに集中すればいい。今まで並列で押さえてきたのなら一時的に大きな力を得る直列なら消し去ることが出来る。根拠はない。でも、行ける気がした。たぶん、ゴミクズのせいだろう。

『行け。国分教太』

「食らいなさい!水の槍!アクア・スピアー!」

「すべてを消し去り、すべてを破壊する。神の法則を解いたとき俺に力をくれ!」

 俺は左手で右手首を掴む。すると右腕からさらに大きな陣が発生した。中心には六芒星が描かれていた。そして、黒い靄は俺の右腕をすっぽりと覆い尽くす。そして、俺の身長くらいあるようなまるで重装兵が持っていたような頑丈ですべてを貫くような円錐状の槍。すべてを破壊する槍。言うなれば、

「無敵の槍!」

 アゲハが撃ちこんだ巨大な水の槍と俺の黒い靄で出来た槍が激突する。

 勝つんだ!この力を誰にも利用されないためにも!俺のためにも!

「アキのためにも!」

 俺は無敵の槍を突き上げる。

「何!」

 俺の無敵の槍が水の槍を消し去っていく。槍の形をしていても効力は同じのようだ。靄の中に入った水は消されていく。アゲハの作った水の槍は無残にもひびが入ったかのように二つに割れ無残にも崩れて消されていった。俺が無敵の槍を大きく横に振ると水が粒子状になり俺の周りでキラキラと光る。俺はアゲハの攻撃を完全に防いだ。

 驚きを隠せないアゲハはその場で開いた口がふさがらないようだ。

 勝負はまだ終わっていない。

「今だ!アキ!」

 俺は叫ぶと残った力を振り絞って噴水の水の中に飛び込む。

 アキは吹き抜けの二階の柱の裏に隠れている。そして、俺の掛け声とともにアキはあるものをアゲハに向かって投げ込む。手のひらサイズよりも一回りも小さい長方形の物体。それはコンビニでオカマからぱくったライターだ。火のついたライターがアゲハの方に投げ込まれた。

「行けーーーー!!!」

 するとライターから光が発生すると大きな轟音と共にあたりを吹き飛ばす爆発が起きた。吹き抜けの天窓が爆発の影響で吹き飛び、夜空に粒子のように舞う。噴水の中に飛び込んだ俺にも爆発の衝撃に襲われる。そして、そこから意識が暗闇の中にのまれていった。

 あの爆発でアゲハは無事ではないはずだ。それに天窓が割れるのを見た。結界が破壊されたことを意味する。それは術者であるアゲハを倒したことだ。俺は達成感と安心感の中溺れていく。

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