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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
19/163

非日常⑧

「ウルフがやられたみたいね」

「死んではないぞ」

「そう、なら安心したわ」

 アゲハは円状の吹き抜けに沿って俺たちの方に近づいてくる。

「どうする?」

「ウルフはとりあえずこのままにしてアゲハをどうにかしましましょう」

「どうやって?」

「先ほども説明しましたように、アゲハ機動力のある遠距離タイプの魔術を使ってきます。逆に近距離の攻撃魔術を使ってきません」

 つまり、完全に接近して攻撃を仕掛ける他ないということか。

「それに教太さんの使える教術は触れたものを破壊する力です」

「そうなの?」

 消すのではなく破壊するのか?

 俺は消えたようにしか見えなかった。

「しかし、ランクが通常の半分くらいしかないみたいです」

「根拠は?」

「ウルフの刀は完全に破壊しきっていないところです。通常ならさっきの銃みたくに壊せるはずです」

 そんなにすごいのか。

 そんな実感はなかった。ただ、必死だったから。

「何こそこそやってるの?」

 アゲハが回り込んで俺たちの正面にやって来た。

 距離を詰めれば勝てる相手だと言った。アキの観察能力と推察能力は俺でもよく分かるほど高い。きっと、言われたとおりにすれば勝てるはずだ。

 もう一度・・・・・・・・。

「もう一度・・・・・・・・」

 両手を力強く握り閉めて望む。もう一度、俺に力を貸してくれ。これが最後でもいい。今を生きる俺とアキのために。

 するとさっきと同じように青く光る陣が浮かび上がると黒い靄のようなものが出てきた。靄の境目では黒い灰のようなものがちらちらとしている。これがなんなのかは今は考えない。

「すごいじゃない」

 アゲハ余裕そうに拍手をする。

 いくら美人さんでも手加減はしない!

 俺は思い切り地面を蹴ってアゲハの懐に突っ込む。叫びながら、右拳をアゲハに向ける。だが、突如俺の目の前に水の塊が現れた。

「拘束魔術!水の檻!教太さん!止まって!」

 出来るわけないだろ!

 俺は減速することなくその水の塊に突っ込んでしまった。プールの中に飛び込んだかのように水の中に入り込んで身動きが取れなくなった。もがき暴れた。だが、両手付近の靄から水が蒸発したかのように消えて中に空気が出来た。その中では呼吸をすることもできた。最終的には水の塊はシャボン玉のようにはじけて消えてしまった。

 この力は水すらも消すことが出来るのか?でも、ただ消すだけじゃないみたいだ。

「さすがね。私の拘束魔術抜け出すなんて。と言っても100%力を伝承しているみたいじゃないわね」

「どういうことだ?」

「その力を使えば、水の中に突っ込んでいった時点で水を消し去ることもできたはずよ。一瞬で」

 一瞬で。それはこの力を使ていた奴よりも消し去る能力が低いということか。アキの言うランクがはるかに劣るということか。

「でも、教術は魔術と違って術者の意思で強くも弱くもなるわ。だから、最初から本気で行かせてもらうわ」

 アゲハは胸の中からカードと十字架を取り出した。

 ってどんなところから取り出してやがる!

 アゲハは手のひらの上でカードを打ち付けようとした。

「させない!」

 アキが火の玉をアゲハに向かって撃ちこんだ。アゲハはそれを避けることなく直撃した。爆発音と共に黒い煙と爆風が上がった。

「待てよ。何躊躇なく火の玉撃ち込んでんだよ!」

 それだとまだ魔女のままだぞ!

「ただの悪あがきに過ぎないですよ」

「・・・・・・どういうことだ?」

「魔術には大きく分けて属性魔術と無属性魔術のふたつに分類できます。結界系や治癒魔術は無属性、ウルフの使った炎や私の使った雷は属性魔術です。属性魔術にはそれぞれ相性いいものと悪いものがあります。アゲハの使う属性魔術は・・・・・・」

 爆炎が晴れていくと人影が見えた。アゲハはあの攻撃の中生きていた。しかも、普通のアゲハではなかった。背中には透き通るような青色の水。それがまるで蝶の羽のように堂々としていた。アゲハの使う属性魔術は言われなくて分かる。

「アゲハの使う属性魔術は水です」

 アゲハの手の甲に大きな陣が描かれていた。

「危なかったわ。さすが、魔女ね。その躊躇のない攻撃は惚れ惚れするわ」

 アゲハはアキの放った火の玉を直撃たように見えない。ケロッとしていた。

「火は水に弱いのよ。つまり、今の魔女はなった攻撃は無駄だったということよ。でも、見る限り遠距離はそれしかないみたいね。火属性が使えるということは雷属性も使えるということね。でも、最初に雷を使ってこなかったってことは雷の遠距離魔術は使えないみたいね」

 水は火に強く、雷に弱いということか。でも、アキは雷も魔術も使える。それは俺がこの目で見ている。だけど、なぜそれを使わない。知識と判断力の長けているアキならできたはずだ。

「すみません、教太さん。今の私は遠距離の雷魔術が使えないんです」

 やっぱりそうですか・・・・・・。

「しかも、雷の遠距離魔術がないとなるとかなり厄介な状況です」

 確かにそうかもしれない。アゲハの背中から生える水の羽がその強さを語らずとも伝わってくる。なんかやばい予感がする。

 アゲハは手のひらを俺たちの方に向けた。すると水でできた羽や周囲から水がアゲハの手のひらの前に集まって来た。その量はさっき俺がすっぽり入ってしまった水の塊とほぼ同等の大きさだ。

「教太さん!逃げて!」

 アキに手を引かれて走る。

「逃がさないよ!」

 アゲハの手の前に集まった水の塊がまるで槍のように勢いよく向かってきた。逃げるが渦を帯びて槍のようになった水が曲がって俺たちを追いかけてくる。

このままだとアキも危ない。消し去ることが出来るか?やるんだ!俺ならできる!

 アキの手を振り払う。アキはそのせいで転んでしまった。そうなると俺がこの水の槍をどうにかするしかない。両手に力を込める。コツは完全につかんだようだ。黒い靄が両手に発生する。そして、俺は両手で水の槍を受け止める。勢いよく飛び込んできた水の槍は靄の中に入ってくるといくつかに裂けて軌道を変えて周辺の壁に当たる。水の勢いによってコンクリートの壁の表面にくぼみができる。そして、俺は水の槍を完全に防ぐことが出来た。

「すごいじゃない」

 アゲハは少し驚いた。もしかするとこのままいけるじゃないか?

「じゃあ、次は本気で行くわ」

「え?」

 アゲハはさっきと同じように水の塊を集める。大きさもさっきと同じだ。それならまた俺の力で防げると思った。

 撃ち出された水の槍はさっきよりも鋭く速かった。同じように両手で防ごうとする。靄に入ると水の一部が消えて裂けたが、水の勢いを殺すことが出来ない。消しきれなかった水の槍が俺の腹部を直撃する。力のおかげで水の槍をそらすことが出来たが数メートル後方に飛ばされる。

「教太さん!」

 転がるように床に激突して全身に痛みが走る。特に水の槍を直撃した腹部からの痛みが俺の戦意を削ぐ。呼吸がしづらい。苦しい。しばらく立てなかった。だが、体の痛みが徐々に引いていく。まだ、アキの治癒魔術が生きているようだったが、いつまでもつか分からない。

「大丈夫ですか?」

「・・・・・・なんとか」

 アキに肩を借りて立ち上がる。

「この程度なの?おもしろくないわね」

 蝶のようなアゲハがゆっくりと近付いてくる。

「ウルフもこんな雑魚にやられるなんて腕も落としたものね」

 水の塊を再びためて撃ちこんできた。俺はアキから離れて前に出て水の槍を受け止めるも一瞬だけしか持ちこたえることが出来ずに後方に同じように吹き飛ばされる。その度に治癒魔術が俺の体を癒す。

「無駄よ。今のあんたに私は倒せない」

 水の羽を従えたアゲハは余裕の表情だ。俺はただ見上げるしかない。

「教太さん」

 アキが耳打ちで話してきた。

「もう一度、アゲハの攻撃に耐えてくれませんか?」

「え?」

「さっきの攻撃中アゲハの防御は手薄です。私が飛び込んで雷魔術で攻撃します」

 アキは水魔術の弱点である、雷魔術が出来る。だが、それはかなり接近しないと使えない。しかし、向こうは遠距離の魔術を中心に使ってくる。俺の力も接近しないと意味がない。掛けてみるしかないようだ。

「・・・・・・・分かった」

 俺は立ち上がる。

 覚悟はある。あとは望めばいいだけだ。あの水の槍を消せ!そして、隙を作れ!強く望めばそれが力になる!俺はそう信じる!

「なかなかしぶといわね」

 集中しろ。すべての思考を集中して次の攻撃を完全に防げばいい。治癒魔術もいつまでもつか分からない。次で決めればいい!

「来いよ」

 挑発する。アキは俺の背後に隠れて杖でカードをひそかに打ち付ける。

「守り切れるかしら?」

 水の塊を貯めて撃ちこんでくる。分かっている。あの水の塊を完全に破壊するのはほぼ不可能だ。だが、もう一度アゲハに隙を作るだけでいい。だから、耐えてくれよ。俺の体。

「死になさい」

 水の槍が俺に迫る。やるしかない。

『ぶっ壊せ』

「ぶっ壊しやる!」

 水の槍を両手で受け止める。勢いに負けてずりずりと後ろに押されていく。だが、さっきまで違う点があった。

「あら?」

 押されてるが俺は耐えていた。水の消し続ける俺の力がアゲハの水の槍に勝った。

「仕方ないわね」

 するとアゲハ相手の手のひらの前にふたつ目の水の塊を作り出した。

 マジかよ。ひとつを防ぐのにこんなに大変なのに二つ目が来たら防ぐことが出来ない。治癒魔術も次はおそらくない。アキは?

 後ろを気にするとそこにはアキの姿はなかった。すでにアキはアゲハに向かって攻撃を仕掛けようとしていた。それは魔術やこういう戦闘の未経験者の俺でも分かった。アゲハが第二派を準備している中、突っ込んでいくには無謀だ。その水の塊から撃たれる槍の目標が俺からアキに変われば、今のアキにあれを防ぐ手段はない。

「待て!アキ!」

 俺が止めるように叫ぶがもう遅かった。アキはアゲハに向かって杖を振り上げていた。アゲハはアキの存在に気付くと冷静に俺の向けていた二つ目の水の塊をアキに向けた。アキはそれを避けることもできない距離まで詰めていた。

「はぁぁぁ!」

 杖を振り下げるが水の塊に阻まれる。雷が流れた水の塊は大きな雷音と稲妻が起こると白い水蒸気があたりに立ち込めた。その水蒸気が上がると俺が受け止めていた水が弱まって最終的にはホースの水の勢いくらいにまで弱くなった。

「もしかして、倒した?」

 水蒸気が晴れていくとアキは立っていた。肩を上下に揺らして手を膝の上において息苦しそうだった。でも、生きていた。俺は安心と共に水蒸気の陰から蝶のような羽のシルエットが見えて緊張感が走った。

 アゲハは健在だった。

 アゲハはアキを見下して水の塊を至近距離で撃ちこんだ。アキは避けることなく腹部に直撃した。そして、コンクリートの柱に直撃して床に倒れ込む。柱にはひびが入りその勢いのすさまじさを表している。

「アキ!」

 アゲハは床に倒れ込んで動かないアキにゆっくりと近付く。その表情はさっきまで余裕の表情ではない。明らかに激怒している表情だった。

「よくもやってくれたわよ」

 アゲハはアキの細い腕を掴んでアキを吊りあげる。アキは抵抗しない。昼間の時と同じ状況になっている。顔色が悪く呼吸が苦しそうだ。怪我が回復しないところを見ると治癒魔術も切れてしまったようだ。

「魔力の使い過ぎね。今までの戦闘と今までの状況を見ると本当に以前の魔女じゃないみたいね」

 魔力の使いすぎ。そうか、昼間の時もウルフとアゲハから逃げるために魔力を限界まで使っていたということか。それに今回は俺のためにアキは全力でぎりぎりの戦いをしていたということか。なんであの時、止めてあげなかったんだ。アゲハの懐に突っ込むのはアキではなくて俺のはずだ。俺はまだ魔力もある。気力もある。結局逃げていただけじゃないのか?死ぬのが怖くて・・・・・・・・。俺の意思と反して体が勝手にそうしていたのか?

「さて、国分教太君の魔力を奪う前に魔女の命を奪うとするわね」

 アゲハは掴んでいたアキの腕を離す。アキは抵抗なく床に倒れる。するとアキの周りに円を描くように水が走る。アキの真下に青い陣が浮かぶ。そして、アキを中心に水が集まって来た。どんどん集まって来た水はアキを覆い、アゲハが俺を最初に閉じ込めた水の俺が完成した。水の塊の中に閉じ込められたアキは弱々しくもがき苦しみだした。

「魔女は存在自体が罪。生きてきた時間が罪。すべてが罪。そして、魔女の過去全体が罪。殺されてきた仲間の分まで苦しんで死になさい」

「アキが・・・・・・・・・」

 死ぬ。このままだとアキが死ぬ。水の中で呼吸のできないアキはただ暴れるだけしかない。口鼻から吐き出される泡の量がどんどん減っていく。暴れ方も少しずつ弱くなっていく。人が目の前で死んでいく。嫌だ。それだけは嫌だ。

「そこから離れろ!」

 無我夢中にアゲハに向かって拳を向ける。水の槍が背後から襲う。俺はなんの抵抗もなく背中に直撃した。だが、俺は倒れることなくその場に踏ん張りさらに加速する。

「ああああ!」

 アゲハは再び水の槍で攻撃を仕掛ける。俺の拳が水の槍に直撃する。だが、俺は吹き飛ばされることなく水の槍を裂きながら進む。拳を振り下ろすと水の槍を完全に消し去った。俺はバランスを崩しながらも空いた拳をアゲハに向けて殴る。アゲハは何か危険を察知したのか大きく後ろに飛んで下がった。俺はその場に倒れ込んだが、すぐに立ち上がってアキを閉じ込めている水の塊に両手を突っ込む。靄に触れた水が消されていって水の塊の中に空気が出来る。そして、シャボン玉のようにはじけて消えた。

 アキはしばらくむせて苦しそうに呼吸をしていたが、しばらくすると呼吸が安定してきた。俺のそうだった。水を消し去った時に妙に呼吸が楽になった。どういうことだ?

「よそ見は禁物よ!」

 アゲハの声に俺は振り返る。水の槍が俺を襲いかかる。俺はそれを両手で受け止める。さっきは水の槍を消し去ることが出来た。さっきは拳で受け止める動作の他に拳を振り下げる動作が加わった。つまり、何かしらのアクションを起こせば消せる。

 俺は受け止めた水の槍を二つするように腕を大きく左右に引き離す。すると水の槍が二つに分かれてそれぞれ壁に穴をあけた。

 アゲハの表情が変わる。余裕そうな表情が消える。

「なめていたみたいね。この短時間で自分の力がどれほどの物か理解している」

 アゲハはそういっているが俺にはまだ分からない。この力は本当に触れたものを消す物なのだろうか?アキは破壊すると言っていた。だが、そんな水なんて物体を持たないものを俺はどうやって破壊している?不可解な点が多い。

「あんたみたいな一般人が誰も知らないその力について理解でもしたのかしら?」

 していない。ゴミクズがすべてを知っている。だが、あいつはヒントしか教えてくれなかった。そう、あいつはこの力は消す力じゃないと言っていた。俺が見えないだけだと言っていた。それはどういう意味だ?アキの破壊する。ゴミクズの見えていないだけ。考えろ。そうすれば・・・・・・・・。

「さて、そろそろ本気を出していこうかしら」

 そう言うとアゲハの背中に生えた水の羽が揺らいで風を起こす。するとアゲハが空中に浮かんだ。このショッピングセンターは天井が高い。その限界までアゲハは浮かんだ。いや、あれは浮かんだのではなく飛んだというべきだ。

「せっかくだから私のとっておきを見せてあげる」

 アゲハは腕を多く横に振ると背中の羽から野球ボール並みの大きさの水の塊がたくさん出てきた。アゲハが手をあげると水の塊はそれぞれ槍に変わった。

「不味い!」

 俺でもやばいと思った。アキを抱えて走る。

「逃げても無駄よ!」

 アゲハが手を振り下げると無数の水の槍が俺たちを襲う。俺はとっさに飛び込んで伏せた。アキを守るために抱えた状態でだ。まだ、治癒魔術が生きていることを信じて。運は俺を味方していたのか無数の水の槍は俺たちの上空を通過して壁や柱に当たる。しかし、その水の槍の威力を思い知ることになる。水の槍が当たったところは穴が空き。蜂の巣状態になっていた。しかも、大きい方とは違ってどれも貫通していた。

「マジかよ」

 ただ、驚くだけだった。まだ、こんな隠し玉を持っていたなんて。

「水の銃弾です」

 アキが話し出した。呼吸は落ち着いている方だ。

「槍を小さくすることで攻撃力が増して、さらに小さくすることでスピード上がり、数を増やすことが出来る強力な物です」

「もうしゃべるな」

 小さくするとこその威力が増すようだが、さっきのみたいに追尾はできないようだ。だけど、さっきみたいに受け止めるには数も多すぎるし、四方からくる水の銃弾をさばききれる気がしない。アキの言うようにアゲハは接近されるのを極端に嫌うようだ。俺が懐まで近づくと迷わず引いていた。だけど、今のアゲハは飛んでいる。近づくことが出来ない。だからと言って俺たちにはアゲハに打ち勝つ攻撃力の高い遠距離の攻撃方法がない。

「どうすれば・・・・・・・・」

 勝てないのか?

 いや、必ずどこかに勝てる方法があるはずだ。俺の力はチートなんだろ。何か方法があるはずだ。

『貴様のすべての知識を使え』

 また、ゴミクズか。

『それは魔術じゃ考え付かないようなことだ』

 魔術じゃ考え付かないこと?

 よく思い出せ。俺の力のことだ。靄の周りの灰のような黒い物体。消し去ることのできる力。アキは破壊と言った。水を消し去った時の呼吸が楽なったところ。水の檻をシャボン玉のように消し去ったこと。・・・・・・・シャボン玉みたいにってどういうことだ?

「ほらほら逃げないと!」

 アゲハの周りには水の弾丸が漂っていた。腕を振り下ろせば一斉に飛んでくる。

 俺はとっさに力が発動した状態で壁に触れる。すると壁が簡単に崩れた。崩れた壁はアゲハにも襲いかかる。アゲハは攻撃を中止して引く。壁が崩れた影響で砂埃が舞う。

 もしかしたら、俺のいる世界では常識かもしれないことが、魔術の世界では神に等しい法則になっているのだとしたらあのゴミクズの言っていた「見えないだけ」とはこういうことかもしれない。もし、この考えが正しいならアゲハを一撃倒せるかもしれない。だが、違ったらそれは死を意味する。

 ・・・・・・迷っている場合じゃない!

「アキ!」

「・・・・・・なんですか?」

 よし、まだ意識がある。

「物理結界は魔術以外の攻撃を完全に防ぐことが出来るんだな?」

 アキは弱々しく頷いた。

「まだ、アキの物理結界は発動したままか?」

 再び頷く。

 よし、今はそれだけでいい。もう、今のアキには魔術を使う気力と体力がないことくらいは俺でも分かっている。でも、使ってほしい魔術がひとつある。頼めるか。

 アキの表情を見るが呼吸するだけでいっぱいいっぱいのようだ。ダメだ。頼めない。何か方法は・・・・・・・・。

 砂埃が晴れてきた。アキを抱えて少し移動する。いつの間にか中央の噴水のある天窓のある吹き抜けまで追いやられていた。

 方法を考えながら歩いていると壊れた壁の一部に足をつまずけて転びかけた。

「危ねー」

 するとポケットからあるものが落ちた。それは俺の考えて方法のひとつだった。それを見た瞬間、俺たちにはまだ運が味方していると思った。

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