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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
18/163

非日常⑦

 力があるのならそれを最大限に生かす。才能があるのならそれを最大限に生かす。俺にそんな力や才能があるならやっていると思う。だが、今まで無に等しかった俺にはそんなことが出来なかった。しかし、今俺にはそれがある。気に入らないことがあるとしたらこれが他人のものであるということくらいだ。しかも、ゴミクズのものだったらしい。屈辱だ。

 でも、今の状況でそんなことを言っている場合じゃない。

「よお。出てくると思ったぜ」

 ソファーでくつろぐウルフに俺は近付く。マジで足が震えていた。アキは教術の使い方を知らない。知っていそうなゴミクズも大したことは教えてくれなかった。もう、自分を信じるしかないようだ。

「なぁ、ウルフ」

「気易く呼ぶな」

 ソファーから立ち上がったウルフの右手には銃、左手には日本刀。どちらも魔術によって強力な火魔術が使える強力なものだ。銃弾は俺の力で防いだことがあるが、斬撃は防げるのだろうか?

 いやなことばかりが頭の中でグルグルと流れる。いざ、気を引き締めてここに立つと足が震えて動かない。

「お前にひとつ確認したい」

「なんだ?死ぬ前に訊いてやるよ」

「・・・・・・・・お、俺はお前に教術を見せたことがあるか?」

 ウルフと俺の目線が合う。オオカミのような狩人の目つきで全身に穴が開きそうだ。怖くて逃げだしたくなる、だが、その場にとどまっているのはゴミクズの余裕の精神が心に直接ひびているのと、アキを守らなければならない使命感だ。

「見た。どうやら魔女に大体のことは訊いてるみたいだな」

 さっきからアキのことをウルフは魔女と呼ぶ。どういうことだろうか?女の魔術師は珍しいのだろうか?でも、アゲハも魔術師らしい。

「俺はお前に転生した魔力の持ち主と一度だけ見てる。その圧倒的力に足がすくんだよ。迫りくる敵を涼しい顔してバッタバッタと殺していく」

「え?」

 殺す?この力で人を?

「どうした?驚いた顔して?まさか、俺たちの世界での出来事は聞いていないのか?」

 確かに俺はアキたちの来た異世界についても知りたい。だが、それ以上に自分に宿った教術について知りたかった。だから、そのことについて全く考えもしなかった。

「1年前まで俺たちの世界では戦争してたんだよ。それも世界規模でな」

 戦争。

 ゲームやテレビの向こう側で俺の知らない世界の出来事。

「お前の力を持っていた奴はたったひとりで大軍隊を3つも壊滅させた。というよりも戦争が起こる前から誰にもかなわない最強の教術師だと魔術使う奴ならガキでも知ってた」

 アキから聞いていた。チート並みの強さだとは聞いていた。でも、この力は・・・・・・。

「その力は人を殺す最強にして最悪の力だと俺は思う。だから、大人しく渡してもらおうか。その危険な力をこの世界から葬るために」

 敵ながら納得してしまう。ウルフとアゲハはこの世界を混乱に導くこの力を抹消することを使命に動いている。だとしたらアキはなんだ?

 あいつはこいつらからこの力を守るとしか言っていない。守る目的はなんだ?まさか、アキはこの力を使って何かとんでもないことを考えていないよな?

 俺の中で迷いが発生する。決心してここに出てきたのに俺って本当になんだよ!

「ああ、そうだ。ひとつ言い忘れてた」

 ウルフは銃を自分の後ろにある本屋に向かって撃った。そこにはアキがいた結界によって銃弾は軌道を変えて天井に被弾して爆破した。アキはその拍子に吹き飛ばされる。

「アキ!」

 爆炎が本に燃え移り火災が発生する。火災報知機がショッピングセンター中に鳴り響く。

「魔女が今、使ってる物理結界は魔術以外の攻撃からは守ってくれるが魔術に対しては効力を持たない。俺の銃から撃ち出す弾は通常の実弾だから結界にはじかれるが被弾して爆炎するのは魔術だ。よって、爆風はあの結界で防げない」

 アキの全身に青く光る。おそらく治癒魔術だろう。光が収まるとアキは立ち上がる。

「まったくそんな幼稚な作戦をよく思いつくもんだ」

 ウルフは銃を下す。俺とアキの作戦は俺がウルフの気を引きつけてアキが透明魔術で背後に近づいて不意打ちをするというものだ。だが、ウルフはまるでオオカミのように鼻でもいいのか見えないアキをピンポイントで狙った。

「そうそう、お前に言うことがあるんだった」

 アキがカードを床に置き杖でカードを打ち付けると足元に陣が浮かび、杖全体が青い稲妻が走る。雷の魔術の魔術だろう。アキはそれをウルフに向けて構える。

「あそこにいる魔女もお前の力を持っていた奴以上の人殺しだぜ」

「・・・・・・・・・・・・え?」

 どういうことだ?

「俺はこいつに仲間を殺されている。アゲハもそうだ」

 アキが人殺し?ウソだろ?

「こいつは使う魔術のレパートリーが豊富で状況に応じて的確な魔術を使い敵を倒していく。圧倒的魔力じゃないが誰も敵わなかった。故に魔女と呼ばれて恐れられている。そんなことも知らないでこいつといっしょにいたのか?」

 ウソだろ?ウソだと言ってくれよ、アキ。

 なんで目を合わせてくれないんだよ。

「ウルフの言っていることは事実です。私はたくさんの人を殺しました。だから、魔女です」

 その瞬間、アキがすごく真っ黒で重い存在に見えた。

 俺は白で無だ。どんな色でも受け入れてその色に染まることのできる万能な色を俺はしている。ウルフを色で例えるなら赤だ。どんなことでも意思を曲げない情熱の精神が心の色になるだろう。美嶋は黄色。そして、アキは黒ではないだろうか?

 どんな色も受け入れないそして何にも染まらない邪悪な黒。アキは黒かもしれない。

「教太さん!」

 アキに呼ばれて意識が再びウルフと向き合う戦場に。

 雷を帯びた杖を構えて気を緩めないアキ。

「ウルフの口車に乗らないでください」

「口車も何も俺は事実を述べているだけだが?何か間違いでもあるのなら訂正してみろよ!魔女さんよ!」

 アキは何も言わない。

 確かにウルフの言う通りかもしれない。アキは少ない情報で多くの情報を手に入れていた。そして、ウルフが使ってくる魔術の種類に比べてアキは多種多彩な魔術を使う。納得いきたくないのに納得してしまう。アキの魔術に対する知識はすごい。魔術を全く分からない俺でも分かる。発動の仕方、種類、歴史。いろんなことを俺はアキに教わった。

 そこでふっと疑問が浮かぶ。ウルフは圧倒的じゃないが、誰にも敵わないと言っていた。だが、アキはアゲハには絶対に勝てない。ウルフも勝てるかどうか怪しいと言っていた。矛盾している。

「なぁ、本当にアキは強いのか?」

「魔女か?ああ、強い。今は本気を出してないだけだ。一体を何を企んでやがる?」

 おかしい。この発言や見た目からして自信過剰のウルフがあっさり強いと認めた。なら、なぜアキはウルフから逃げている。魔女と恐れられているアキがなぜウルフとぎりぎりの戦いをしている。なぜ、あそこまでぼろぼろになるまで逃げ続けていたんだ?正面からやれば、勝てる相手じゃないのか?

「私は弱いですよ、教太さん」

 表情が見えない。

「私ある二人の魔術師を助けようとしました。でも、助けることが出来たのはひとりだけでした。もうひとりの人は泣いて泣いて泣き続けました。決してその死を私のせいにしませんでした。私が謝ってもその人が帰ってきません。でも、その人はその死んでしまった人が大好きで仕方がない人でした。魔女と呼ばれて言われるがままにたくさんの人を殺めてきました」

「・・・・・・・・・アキ」

「だから、私はその日に悪い魔女を止めました。私はその死んでしまった人を生き返らせました」

 すると急にウルフの表情が変わった。

「生命転生術だな」

「なんだそれ?」

「禁術だ。と言っても自分に対するメリットがあまりにも少なすぎるから誰も使わないけどな」

 禁術。響きだけではいいものに聞こえない。

「なるほどそういうことか」

「どういうことだ?」

「今まで魔女が俺たちから逃げ続けてたのはそう意味だったのか。・・・・・・・フフフ。・・・・・・ハハハ!」

 ウルフが高々と声をあげて笑う。

 なんで笑っている。何がそんなにおもしろい。

「まったく魔女も馬鹿になったものだな!」

 涙目になって笑う。

「どういうことだよ?」

「教えてやるよ。生命転生術は死人に術者の寿命を半分与えて生き返らせることが出来る魔術だ。でも、副作用で自分の魔力もその死人に半分流れて失う。つまり、今の魔女は全盛期の半分しか魔力がないということになる」

 それはつまり自分を犠牲にして人を生き返らせる魔術。

「かなり、高レベルな魔術だ。当時のお前なら使えたかもな。そうか。最近、魔女が前線を退いたのはそういうことなのか。全くバカだな。そいつはそんなに強者の魔術師だったのか?でも、お前の技術力を犠牲にしてまで人を生き返らせるとかバカじゃないのか?人助けとはアホかよ。本当にお前は魔女なのかよ」

 ウルフがアキを散々言いつける。それは間違いでメリットは何もない。本当に気は確かかという内容に俺は聞こえた。そうだ。もし、その魔術を使っていなければ、俺はこんな状況に巻き込まれずに済んだ。アキに力があれば。

「力がすべてじゃないことを私は知りました」

 言われっぱなしだったアキが反論した。

「そのふたりは決して強くありませんでした。でも、強い絆で戦場を生き残っていました。今まで力がすべての私にたくさんのことを知りました。そのふたりは自分たちの力を人を助けるために使っていました。私と真逆でした。でも、ふたりはそのことを誇りに思っていました。私もそう思います。だから、人を助けることにバカ、アホ呼ばわりするなら、私は戦います」

 アキが重く黒く見えた。その色が晴れて行っているような気がした。

「あの日、私は何も後悔していません」

 アキは杖を構え叫びながらウルフに向かって突っ込んでくる。ウルフの日本刀が轟音をあげて炎が灯る。アキは雷が走る杖をウルフに向かって振り下ろす。ウルフはそれを軽く振りのけるようにはじく。そして、懐ががら空きになったアキの腹部を蹴り飛ばす。アキは本屋に吹き飛ばされる。ドサドサと本が落下する音が聞こえる。ウルフは追い打ちをかけるようにアキの飛ばされた本屋に向かって銃弾を数発撃つ。着弾と共に火が上がる。本屋は完全に火の海になった。

「何が人助けだ」

 唾を出すウルフ。

 俺は思わずウルフに向かって飛び掛かってしまった。体が勝手に動いた。洗脳でもされているのではないかと怖くなった。でも、言いたいことが頭の中を流れた。

「人助けはいいことじゃないのか!」

 俺はウルフに馬乗りして右拳を振り上げる。

 俺はウルフの顔面を殴ろうとするが軽く避けられて床を思いっきり殴り重く地味な痛みが走る。ウルフは素早く俺の顔面を殴りよろけた俺の腹を蹴り、俺は大きく蹴り飛ばされた。受け身の仕方も知らず、腰を床に強打してしばらく立ち上がれそうにもなかった。胃袋から何か逆流してきそうだった。不良じみたことをしているが学校に真面目に行かないことを覗いて俺は普通の学生だ。ケンカもあまりしたことがない。だから、立ち回り等がまったく分からない。

「雑魚中の雑魚だな。そんな雑魚に俺たちの事情が分かってたまるか」

 ウルフは俺に向かって銃で乱射する。だが、結界にはじかれ近くのエレベータの扉を直撃する。大きな噴煙を上げて爆発した。

「物理結界かよ。用意がいいな。だが」

 ウルフは結界を気にせずに銃を撃ち続ける。その度にはじかれて周囲が爆炎をあげて爆発していく。気付くと周辺は火の海になっていた。そして、ついに結界がガラスのように割れ砕けた。

「物理結界も無限じゃない。こうやって永遠に攻撃していれば、破壊される。覚えておけよ。雑魚」

 ウルフは銃を撃ち切ったのか弾を交換していた。その作業を見る限り普通の銃だった。

「この銃は全体が陣を打ち付ける十字架と同じ素材でできていてな、銃弾ひとつひとつに陣が描かれていてこれを魔力を流しながら撃つと火属性魔術を帯びた銃弾が撃つことが出来るんだぜ。魔女はそれを逆手にとって物理結界で身を守ってやがった」

 そうか。それで撃つ弾が全部爆炎をあげて爆発をしたのか。

「さて、ケンカ慣れしてないみたいだから、立ち上がることもできないだろ?」

 そうでもなかった。腰の痛みも腹部の痛みを引いていた。手の甲にある小さな陣。アキがつけてくれた治癒魔術だ。これが正常に発動しているということはアキはまだ無事なのか?あの火の海の中でまだ生きているのか?だとしたら・・・・・・。

「昼間、貴様は力をうまく伝承したように見えた。だが、ここまで来て使わないということは気のせいだということだな」

 俺は立ち上がる。いくら治癒魔術で回復したと言え痛みは完全には抜けていなかった。よろよろとゆっくり立ち上がる。

「そうだな。一般人であるお前にひとついい話をしよう。俺はできないが、アゲハは魔力の転生術が出来る。お前の中にある力をとる魔術だ」

 それってこの運命をこの力を放棄するというものだ。

「それで貴様に転生した魔術を大人しくこっちに渡してくれるのなら命だけは見逃してやるよ。どうだ?いい話じゃないか?そんな厄介なものから解放されるんだぜ。それにその魔術はこっちの世界にはなんの影響もない」

 ウルフの言うことは俺にとっては条件はいい。でも、こういう場面ではどうせ俺も殺される。フラグというものだ。

 それにウルフはこの力を抹消するために動いていると言っていた。それは本当にそうか?人を助けるようなことをバカにするような俺たちに銃を向けることに容赦のないウルフは本当に信用できるのか?

『できるわけないだろ』

 そう通りだ。力は正しく使われるべきだ。銃の腕があるのなら人を殺さないような立ち回りをしろ。剣を使える奴は人を殺さない術を覚えろ。そして、この力は人を殺さない助ける力にすればいい。俺がする。アキを守ってそのことを証明する。だから、

「お前の要件は一っっっっ切受け入れねーよ。バーカ」

 アキやゴミクズの言っていた覚悟ってこういうことか?

 とんでもない力だ。いろんな奴が狙ってくる。人殺しの力だ。それをすべて薙ぎ払う覚悟ということか。

「俺はただアキを助けるためにこの力を受け入れた。とんでもない運命も受け入れた。俺はお前みたいに後先考えない突き進むようなバカじゃないのでね」

 さっきをアキをバカにしていたので今度は俺が大いにバカにしてやった。もう、逃げない。俺は目の前の物を信じて生きていく。アキがどんな重く暗い過去を持っていようが関係ない。俺は過去を詮索することは好きじゃない。あいつも俺も今を生きている。

「やめだ。やっぱりお前は殺す」

 銃を俺に向けて構える。結界はさっき破壊されてもう俺を守ってくれるものはない。治癒魔術も限界があると言っていた。着弾した瞬間爆発するような銃弾が当たればひとたまりもない。やるならここしかない。

 発動するんだ!あの力を!俺の望みをかなえてくれ!ウルフを倒す!殺すんじゃない!倒すんだ!

「俺の覚悟をなめるな!」

 俺は銃を構えるウルフに向かって突っ込んでいく。銃を撃ってくる。関係ない。拳を構える。右拳で銃弾を殴りにかかる。

『なかなかいい覚悟だ』

 また、声が聞こえた。

 その瞬間、俺の両手首と肘のちょうど間くらいに青い光で書かれた円が出現した。円の中には五芒星が描かれている。そして、俺のそれぞれの両腕から何か黒い靄のようなものが覆った。そう、あの時と同じだった。

 靄の中に入った銃弾は表面からぼろぼろと崩れて消えた。

「この力は!」

 ウルフは俺の伝承した力が発動したことに気付いたようだった。

『暴れろ。俺でなくお前の意思で』

 たぶん、ゴミクズだろう。分かったよ。もう、邪魔するなよ。俺にはもう恐怖も何もない。だから、ここからは俺が全部やる!

 銃弾を消した右拳はウルフの銃に向かう。まずは武器を銃弾同様に消し去ってやる!壊してやる!

「ああああ!」

 ウルフは再び撃ってくる。靄の中に入ってぼろぼろと崩れたが消し去る前に俺の手の甲に被弾して血が出てきた。だけど、

「気にしてられるか!」

 俺の拳がウルフの銃まで届いた。銀色に輝く銃は靄の中に一部が入るとボロボロと崩れて行った。そんなぼろぼろになった銃に俺の拳が入るとまるで豆腐みたいに簡単に壊れた。ウルフは自分の手を守るかのように引く。

 俺の拳はウルフの顔面に向かう。だが、ウルフはそれを回転するように軽くかわした。そして、その回転の勢いを使って刀で斬りかかって来た。俺は左手でその刀の攻撃を防ごうとした。しかし、左指すべてに痛みが走る。だが、キンッと金属音が鳴り響くと宙に刀の刃の一部がくるくると飛んでいた。ウルフの刀の攻撃を防ぐために変な態勢になってしまった俺はその場に尻餅をついて倒れる。顔をあげるとウルフが折れて半分くらいになった刀を俺に向ける。

「動くな」

 ウルフの刀には炎は灯っていない。

「もしかして、本気じゃなかった?」

「まーな。少しなめてた。悪かったな」

 すると目の前で刀に炎が灯る。ウルフの怒りがそのまま炎に乗り移ったかのように荒々しく激しく燃える。ウルフは怒りを抑えているような表情だった。俺が壊した銃と刀はお気に入りだったのか?

「貴様なんか雑魚がこんなスゲー力を伝承するとか尊敬するぞ。だからこそ、死んでもらう。俺の気に入りの武器を壊したのも死んで償えよ」

 ウルフは刀を高く振り上げる。

「お前がバカでよかった」

「バカはどっちだよ」

 ウルフの振り下げる刀が止まった。

「はぁ?」

「俺をよく見ろよ」

「・・・・・・・・・・ブサイク」

「そういうことじゃねーよ」

 何死に際に俺のルックスについて語ってんだよ!バカか!

「アキに訊いたんだけど、結界とかの魔術を解除するには結界の耐久値を減らすのともうひとつ方法があるんだよ。知ってるだろ?」

「常識だ」

 その瞬間、ドスッという鈍い音がウルフの背後から聞こえた。ウルフの動きが鈍くなった。ゆっくりと後ろを振り返るウルフ。

「魔術を解く方法。それは術者を倒せばいい。だが、ウルフは気付かなかったのか?アキが吹き飛ばされて倒した気分でいたときに、俺に物理結界と治癒魔術がまだ発動していただろ。それはつまりアキがまだ生きていたということだ」

 ウルフは振り返ると雷を帯びた杖でアキがウルフの背中を突いていた。

「俺の力を目の当たりにして動揺して透明魔術で近づくアキに気付かなかった。バカはどっちだ?」

「ち・・・・・く・・・・・・しょ」

 ウルフはその場に倒れ込んだ。

 そして、アキも足から力が抜けたように崩れる。杖でバランスをとる。俺も尻餅をついた状態で動けなかった。

「・・・・・・・ハハ」

 倒してしまった。最初は勝てる気がしなかった相手を倒してしまった。全くあり得ないぞ。これは現実か?

「教太さんは・・・・・・・」

「あ?」

「教太さんはいつから私が生きていると気付いていたんですか?」

 昼間の時ほどではないが同じ顔色が悪い。大丈夫だろうか?

「治癒魔術で体が軽くなった。そして、アキの暖かさを感じた。それのことを気にしてこんなにしてくれるやつが俺を見捨てたり人殺しもしないと思った。信じて正解だった」

 俺は立ち上がり、アキの手を引いてアキも立ち上がる。

「ウルフは死んだのか?」

「いえ、私の雷魔術は威力が低いので気絶しただけです。とりあえず、どこかに縛っておきましょう。まだ、終わってないので」

 そうだ。このウルフはまだ一部に過ぎない。まだ、こいつよりも強い魔術師が残っている。

「さすが魔女さんね」

 声に反応して俺とアキは振り返る。

 吹き抜けの反対側にアゲハがいた。見た目はタイプだが、その雰囲気は嫌な予感しかしなかった。

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