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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
17/163

非日常⑥

「これが魔術と教術のお話です」

「それってつまり俺はアキが使っているような陣が必要ないのか?」

「はい」

「じゃあ、昼間の俺を中心に起きたあの陣はなんだ?」

「転生魔術が発動してカードの中にあった力が教太さんに移動したときに発生した陣です。教太さんの力の発動とは関係ありません」

 そうなのか。てっきりあれで俺にも魔術が使えるのかと思ったよ。

「ひとつだけ例外を教えておきます。人の魔力は簡単に転生させることが出来ると言いましたよね」

「ああ。だけど、俺のこの力だけはなかなか伝承しなかったんだろ」

「はい。教術と魔術では扱い方が違うので」

 人は十字架を通してじゃないと魔力をうまく陣に送ることが出来ないらしい。教術はその根本的なところが違うようだ。

「話を戻します。魔力を別の人に転生するとその人の魔力を使うことが出来ます。それはその魔力を伝承した人の中には二種類の魔力が体内にあることになります」

 そう言われるとなんだか気味が悪い。他人が自分の中に入ってきているみたいだ。だが、俺の場合はすでにゴミクズが心の中に勝手に快適に住んでいる。

「つまり、その人は全くタイプの違う魔術を使えるということです」

「どういう意味だ」

「もし、教太さんの中に通常の魔術が使える魔力があるとすれば、教太さんは教術と魔術両方使える可能性があるということです」

 さっきアキは教術を使う者は魔術を使うことが出来ないと言っていた。それってチートじゃね?

「なので教太さんが魔術を使えるかどうか試してみます」

「どうやって?派手なことやるとここにいることが速攻でばれるぞ」

「さっき私が見せた回復魔術のレベルを少し上げた治癒魔術です。私の魔力を宿した陣が消えない限り怪我を直し続ける魔術です。どちらにしても戦力的に向こうの方が上なのでやっておいて損はないです」

 アキはバックの中からカードと十字架を取り出して俺に渡してきた。やり方はアキのを見ているから分かる。

「コツとかあるのか?」

「・・・・・・そうですね。自分の元気を十字架に向かって流し込む感じで」

 なるほど、元気を少し分けるということか。たくさん集めれば、玉が出来たりするあれは魔術だったりするのだろう。さて、どうでもいいことはさておいて、一息おいてカードを手のひらに載せて十字架を打ち付ける。

 しばらく待ったが何も起こらなかった。

「俺ってセンスないのか?」

「教術を使える人は魔術を使える人の魔力を伝承しても使えた試しは数件しかありません。できなくても不思議じゃないです。それに・・・・・・」

「それに?」

「この世界では魔石の影響が極端に少ないのが原因かもしれません」

「その魔力の発見に至った石のことか?」

「はい。魔石の発見によって人の潜在能力を引き出す魔術が完成しました。当時は使える人と使えないとはっきり分かれたそうです。使える人はイギリスとイタリアに集中していました。おそらく、魔石による影響が魔力を引き出す能力の格差を生んだのだと思います」

「待て。イギリスは分かる。だが、そこにイタリアが出てくるのが訳が分からないぞ」

「話によれば、教術は古代ローマの頃からあったらしいです。イタリアのそれもローマ市内の人々は少なからず、魔力と関わっていたのが原因だと思います」

 複雑な話だ。

「つまり、この世界にいる俺は魔石の影響がまったくって言っていいほどなくて、体内の魔力が隠れたまま出てきていないということか?」

「おそらく」

 まだ、俺には力が隠されているということか。俺だけじゃない。美嶋にも不良のオカマにも熱血教師の野澤にも母さんや父さん、その辺に転がっているホームレスのおっさんにも秘めたる力の可能性があるということだ。なんだかわくわくして仕方がない。

「で、肝心の教術の使い方は?」

「知りません」

 おおおい!

「私は魔術しか使えないので教術がどうやれば発動するのか知りません」

 まぁ、俺が魔術をうまく使えないのと同じだよな。

 しかし、力の使い方をゴミクズは望めばいいと言っていた。つまり、俺が思え ば使えるということか。

 力よ!発動しろ!

 ・・・・・・・・・・・・・・・反応なし。

 だんだん不安になって来た。

 するとアキが俺の手の甲にカードを当てて十字架を打ち付ける。さっきの治癒魔術だろう。

 手の甲に小さな青い円が刺青みたいに浮き上がる。中心には三角が描かれている。そういえば、アキやウルフが使う魔術によって円の中心に描かれているものが違う。

「これで多少の怪我なら自然に治ります」

「おお。すごいな。それ」

「ただし、この陣の魔力が尽きれば治癒機能が失うので大きな怪我だけはしないでくださいね」

 つまり、この手の甲の陣が消えないように注意していればいいだろう。

「さて、これからどうする?」

 ウルフは相変わらず、吹き抜け付近をプラプラと歩き回っている。この吹き抜け周辺にはゲーセンの他に本屋と雑貨屋がある。ウルフはそのどこかの店に隠れているのだと思っているのだろう。

「教太さん」

「なんだ?」

「もし、自分の力を信じてあの戦場に戻れる覚悟あるのなら耳を貸してください。簡単ですが作戦を考えました」

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