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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
覚悟の日
13/163

非日常④

「よかったんですか?」

「いいんだよ。いつもこんな感じだから」

 ちなみに今日の昼間のゲーセンでもほぼすべてあいつの金で遊んでいた。あいつの家は金持ちでその家のひとりっこのボンボンらしい。金を奪っても大丈夫だろう。たぶん。

 ちなみにあいつから金を巻き上げた額は美嶋の方が3倍くらい多い。だから、大丈夫だろう。

 無我夢中に走っていたら、高校近くまで来てしまった。ショッピングセンターがどの位置にあるか分かるくらい明かりで夜空の星を掻き消している。あのショッピングセンターが出来る前まではこのあたりは星の観測地点としてはかなり適していた。ショッピングセンターが出来てから住宅地の建設が始まり、夜でもそこそこ明るい街になった。

「夜なのに明るいですね」

「そうだな」

 アキは物珍しそうに見ている。始めて見たような感じがするのは気のせいだろうか?

「そういえば、アキはどこから来たんだ?」

「私ですか?」

 お前意外に誰がいるんだよ。暗闇の蛾のように自然とショッピングセンターの方に足が動く。

「そうですね。簡単に言うと教太さんの住む世界とは別の世界からいています」

「もっと簡単に頼む」

「私異世界人です」

「・・・・・・・マジ?」

「マジです」

 本当なのだろうか?

 いや、そもそも俺の日常にボンボン魔術使うような奴はいないし、その存在を聞いたことがない。テレビで出てくる超能力者も必ず仕掛けがある。でも、彼女が俺の前で見せた傷を治すあれを見てしまったら異世界人であることも容易に説明できてしまう。

「その異世界は魔術が使える奴ばかりか?」

「はい。一部で使えない人もいますが、大方皆さん使えますよ。ちなみにウルフたちも教太さんから見れば異世界人ですよ」

 まぁ、そうだろう。今更驚くことでもない。

「わぁ~。大きいですね」

 夜のショッピングセンター。この時間帯には来たことがない。いつも昼間か夕方のどちらかしか来たことがない。それぞれの窓からいろんな色の明かりが漏れて神秘的だ。それにしても気味が悪いくらい車の量が少ない。営業中なのだろうが、客がほとんどいないのだろう。

「行ってみてもいいですか?」

 子供みたいにはしゃいでいる。

「別にかまわない」

「やった」

 するとアキは小走りでショッピングセンターの入り口に向かう。俺もゆっくりとその後を追う。するとポケットで何かが震えている。携帯だけど。

「美嶋?」

 着信画面にはそう出ていた。電話に出ると美嶋が叫ぶ。

「あんたいつ戻ってくるのよ!」

 ああ、耳が痛い。

「そのうち戻るってメールしただろ」

「そのうちっていつよ!」

「あ~」

 アキが完全にはしゃいでるからしばらく無理そうだな。

「しばらく時間かかりそう」

「・・・・・・・・・もしかして、さっきの子といっしょに変なことしてないでしょうね?」

「するわけないだろ」

「・・・・・・・・いっしょにいるわね」

 いや、なんで分かった?

「今どこいるの?ラブホだったこの世からDNAが消えるまで殴り続けるわよ」

 いや、さりげなく怖いこと言ってるけど、無茶じゃね?

「大丈夫です。高校近くのショッピングセンターです」

「今すぐ行く」

 そういうと通話が切れた。

 なんか怒っているような気がする。

「教太さ~ん!」

 アキが呼んでいる。

「今行くよ」

 走りはしない。のんびり歩いて向かう。

 でも、確かこのショッピングセンターは三つあるうちの天窓のひとつがアキによってぶち割れたよな?原因を探るために立ち入り禁止とかになっていないか?それに近くの駐車場がウルフのせいで爆発していてこのあたり一帯が緊張感に包まれていてもおかしくない。何だろうな。この妙な静けさは?

「おお、このガラスのドアは勝手に開くんですね。どういう仕組み何でしょう?」

 中の店舗の数よりもそこから興味を抱くのかよ。

「アキの来た異世界には自動ドアがないのか?」

「そうですね。でも、似てるところもありますよ。一番の大きな違いはこの世界では魔力というエネルギーを使っていないということですね」

「こっちだと仮想の力だからな」

「それで逆に私の世界にないのは化石燃料です」

「化石燃料?石油とか石炭とか天然ガスとかか?」

「はい。こちらの世界ではそう言ったエネルギーがあるので魔力が必要ないみたいですね」

「じゃあ、車とかもない」

「ないですね」

「プラスチックも?」

「ないですね。でも、魔力で作る樹脂ならありますよ」

 そうなると暮らしそのものが違うようだな。俺たちは石油がなければ生活できないに等しい。俺の来ている服も携帯も目の前のショッピングセンターもそれを照らす明かりもすべて石油からできていると言ってもいい。少しアキの世界に興味が出た。

「ひとつ同じことがあるとしたら電気ですかね」

「電気?」

「こんなに明るくはないですけど、魔力を使って発電しています。年中電力不足ですけど、家族のだんらんを照らす程度の明かりです。私はそれだけでいいと思いますよ」

 明るくて見えないってか?

 確かに明るすぎる。夜なら夜らしく暗くしていればいい。そうすれば、夜空に浮かぶ満天の見ることもできるのにな。

「人が見当たらないですね」

「いつものことだ」

 中に入るとすぐに専門店街が横に並ぶ。一度も利用したことないが。

「噴水がありますよ」

 アキが子供みたいにはしゃぎながら噴水がある方に走る。ちょうど中心の入り口から入ったらしく目の前には噴水がある。このショッピングセンターには三つのおおきな天窓がある。通路は全体は吹き抜けになっている。その真ん中にある天窓の一階には豪華な噴水がある。ただの維持費の無駄遣いにしか俺には見えない。

「すごいですね。建物の中にあるなんてさすがです」

「配管とかの技術はそっちの世界にないのか?」

「ありますよ」

「いったい何がなくて何があるんだよ」

 アキは水面に映る自分を見つめながら言う。

「聞いた話ですけど、この世界と私のいた世界は確か途中まで同じ歴史を辿っていたらしいですよ」

「・・・・・・・は?」

「確かこっちでは魔術革命の代わりに別の革命が起きたんですよね。何だっけな~」

 噴水近くのベンチに座って答えを待つ。周囲を見渡す。

 それにしてもまったく人がいない。無人のショッピングセンターは怖い。本当なら人で賑わっているはずなのに。ここの経営者もそれを望んでいたに違いない。

 すると急にアキが慌ただしく周囲を見る。

「どうした?」

「・・・・・・・・・・不味い!走りますよ!」

 アキが俺の手をとって元来た出口に走る。突然だったのでつまずきそうになったが何とか態勢を立て直して走る。

「おい!急にどうした!」

 アキには聞こえていないみたいだ。無我夢中で全力で走る。俺もそれにつられて夢中になって走る。

「は!スーーーートップ!」

「え?」

 アキはかかとで急ブレーキをかける。これまた突然だったので止まれず、自動ドアに激突する。ガラスを突き破るんじゃないか言わんばかりの勢いだったがガラスは割れなかった。よかった。

 「つーか、何で開かないんだ?」

 こんな自動ドアの間近にいるのに開こうとしない。というか俺が激突したのに傷一つない。おかしい。

「やられましたね」

 アキは持っていた杖を構えて振り返る。俺も尻餅をついた状態で振り向くとさっきまで俺が座っていたベンチに見覚えのある人物が座っていた。青髪に革ジャン。

「マジかよ」

 ウルフだ。魔術師のウルフだ。

 全身に鳥肌が立つ。緊張感が一気に高まる。

「あなたがこんな繊細で高位の魔術を使えるとは驚きです」

 戦闘態勢のアキ。俺も立ち上がる。

「俺にできるかって。繊細なサポート魔術は全部アゲハ任せだ。俺はどちらかと言えば、強行派だ。細かこととか嫌いだ。だから、俺の使う魔術も大胆で迫力のある方がいい!」

 ウルフがベンチが立ち上がる。右には銀色の拳銃。左には日本刀。その日本刀を振ると刃が爆発するかのように燃え始めた。

「な、何だ!」

「魔術です。爆斬というものです。強力な攻撃型の火属性魔術です」

 確かに強そうだ。

「国分教太であってたみたいだな」

「な、なんで俺の名前を?」

 声が裏返った。理由は考えることもない。恐怖だ。俺はあいつの脅威を一度目にしている。あの銃から撃たれる銃弾は爆炎をあげて爆発する。おそらくあの刀と同じ火属性魔術とかだろう。さっきは必死だったから考える間もなかった。だが、今はある。だから、怖い。

「これ」

 ウルフが手帳を取り出した。普通に俺の生徒手帳だ。

「これ便利だな。写真も貼ってあって名前も住所も書かれてやがる。家に行ったけど、いなかったからこうしてアゲハに頼んでこうしておびき寄せたんだよ」

 そういうとウルフは返すよと言って生徒手帳を投げた。慌ててキャッチする。爆発するかもしれないとキャッチしてから思ったが、何も起きなかったのでよかった。

「つーか、おびき寄せたって何?」

「人寄せの魔術です。特定の人物を特定の場所に誘って閉じ込める魔術です。術者は相手の顔と名前が分かっていないと使えない魔術です」

 俺は何であの時生徒手帳を落としてしまったんだろう。俺のバカ。

「そして、この建物には人避けの魔術もかかっていますね」

「そうだ。ここで俺がどれだけ暴れても外にはばれない」

 つまりあれか?俺たちは袋の鼠ってことか?

「それって不味くない?」

「すごく不味いですね」

 だが、アキは冷静だ。その冷静を俺にも分けてほしい。

「アゲハはまだ術が調整してるから来る前に俺だけで片づけてやるよ。それで報酬は独り占めだ!」

 ウルフは銀色の銃を構える。すると銃口を中心にあの青く光る線で魔法陣が出現した。円の中心には四角形が描かれている。俺の時とアキの時とは違う。

「逃げないと!」

 だけど、足が動かない。石みたいに固まっている。動けよ!早く動けよ!

 死の恐怖が俺を襲う。

 するとアキがウルフの攻撃から盾になるかのように目の目に立つ。

「主よ。我の魔力を食い、我を守りたまえ」

 アキはバックからカードを取り出して床に叩き置き、杖をぐるぐると回してカードに向かって杖を打ち付けた。すると杖を中心にして魔方陣が出現。今度は円の中心は三角形が描かれている。

 ウルフの銃から銃弾が撃たれる。だが、それはアキの数十センチ前で何かあたり軌道を変えて天井に当たり爆炎をあげて爆発した。俺はその場に尻餅をつく。

「っち。またかよ」

 見るとアキを中心に半径1メートルほどの薄黒い透明のドームが出現していた。

「物理結界です。物理的攻撃から守ってくれる魔術です」

 アキはまたカードを取り出してさっきと同じようにカードを打ち付けると同じような魔法陣が出現して次の瞬間、爆発するかのように黒い煙が上がった。

「な、なんだ!」

 黒い煙のせいで視界が遮られる。

「逃げますよ!」

 アキは俺の手を掴んで走る。銃を撃つ音が聞こえたが結界に当たって軌道がそれて壁に当たって爆発する。アキと俺は煙で視界が遮られている中、走り続ける。

「この煙は何だよ!」

「ただの煙幕です!」

 忍者かよ!

 しばらく走ると煙幕から抜ける。振り向くと煙幕が吹き抜けを伝って天井まで上がっていた。でも、少しずつ薄くなっていく。魔術だから制限時間でもあるのだろう。俺たちは手近な専門店の店舗に入って身を隠す。

「ってこの店」

 女性用下着専門店。男の目には優しい。なんだか落ち着く。

「こんなところで落ち着かないでください!」

 杖で頭を叩かれる。

 物陰から様子を窺う。

「くそ!どこに行きやがった!」

 煙幕から解放されたウルフは必死になって俺たちを探す。だが、運がいいことに反対方向に探しに行った。

「・・・・・・よかった」

 ホッとして壁に身をゆだねる。目の間に女性用の下着。普段、こんな店に入る機会なんて全くない。少し堪能するか?

「堪能しないでください」

 再び杖で頭を叩かれる。

「それとまだ安心するのは早いですよ。閉じ込められたこの状況なので見つかるのも時間の問題です。今の私ではウルフならぎりぎり倒せるかもしれません」

「なら、倒せばいいじゃん」

「ウルフひとりだった無理しても行きますよ。厄介なのはアゲハです」

「アゲハ」

 あの大人の女性か。そういえば、まだあの人が魔術使っているところを見たことがない。でも、ここにおびき寄せられたのも閉じ込められたのもウルフがあれだけ暴れても外にばれないのもすべてアゲハの魔術によるものらしい。

「はっきり言います。今の私がアゲハと一対一をやっても100%負けます」

「そこまで確定してるのかよ」

「アゲハの使う攻撃魔術は遠距離型で機動力もあります。今の私が使える魔術では彼女は倒せません。それにランクも彼女が上です」

「ランク?」

「これを説明しているとすごく長くなりますが、簡単に言えばその人の魔術による戦闘力にランクがほぼ比例しています。私とウルフのランクはD。アゲハはCです」

 魔術の世界にはゲームみたいに数字で強さが分かるのかよ。便利なのでそれ以上突っ込まないでおこう。

「魔方陣にもレベルがあるんですよ。説明するとすごく長くなるのでまた後で説明しますね。それより今はウルフとアゲハを効率よく撃退する方法を考えないといけません」

 確かにそうだな。

「おら!どこだ!こら!」

 どこの不良だよ。ばれないようにこっそり覗くとウルフはさっきの噴水のある吹き抜けのところにいた。そお、遠くに行っていないと考えているのだろう。無作為に探すよりも粘り強く待つつもりなのだろう。だが、自分で強硬派と言っていた人物だ。面倒だと言ってここら周辺を吹き飛ばされたら困る。

「見つかるのも時間の問題です」

「アゲハが見当たらないのはなんでだ?」

「おそらく、この建物に張っている結界が不完全なのでしょうね。私が援軍を呼ばないようにするための結界を張っていると思います。魔術によって時間がかかるものもありますからね」

「なるほど」

 よく事情は分からないが、このままではいけないという簡単なことだけは分かった。

「それでどうする?」

「今考えてます」

 いつ、あの猛獣が暴れ出すか分からないぞ。

 アキは壁に背を完全に預けて考える。何というかすごく冷静だな。

 俺もまだ冷静な方なのか?

 オカマだったら狂ってるだろうな。こんな恐怖の中耐えられなくて走り出しているだろうな。

 美嶋だったら恐怖のあまり俺にぴったりくっついて動かなくなるだろうな。

 それにしても何で俺はこんな冷静なんだ?こんな死と隣り合わせの状況になってもこんな冷静でいられるのだろうか?

『俺のおかげだな』

 俺は思わず立ち上がってしまった。

「ど、どうしたんですか?」

 突然、立ち上がったのでアキも驚いていた。

「ああ、いや。なんでもない」

 大人しく座る。

 誰だ?声が聞こえた。

「今、男の声が聞こえなかったか?」

 アキは首をかしげながら答えた。

「・・・・・ウルフですか?」

「・・・・・・いや」

 アキは不思議そうに俺の顔を見ている。自分で何を言っているのか訳が分からなくなって恥ずかしくなり、直視できなくて俺は視線を外す。そうだよ。さっきアキがここは俺とアキとウルフとアゲハしかいない。だから、ウルフ以外の声が聞こえたらおかしいだろ。

 耳でも腐ってたのか?最近、耳掃除してないし。空耳だったってことにしておこう。

『何勝手に結論付けてんだ?』

 また、聞こえた。今度は驚かずに立ち上がることはなかった。二回目でこれはリアルで俺の耳に入ってくる。というかこの声どこかで聞いた記憶がある。

『いい加減に気付けよ』

 そう言われた途端、目の前が真っ白になった。目の前の女性用の下着が白くなり壁も天井も床も白くなり、アキまで白くなり何もなくなってしまった。

「な、なんだ!」

 混乱が俺を襲う。さっきまで冷静だった俺はどこか地平線の彼方に飛ばされたかのように俺はパニックになった。周辺には何もない。ただ、白い無の空間が広がり続ける。その光景には見覚えがあった。

「よお。また会ったな」

 目の前にゴミクズがいた。

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