日常⑦
「あ。美嶋からメールだ」
携帯を開くと美嶋からメールを受信していた。そういえば、黙って家を出た。たぶん、心配しているだろう。内容は今どこにいるかというメールだった。今はさっき弁当を買いに来たコンビニにゴミを捨てに来た。そのうち家に戻ろうと思っていたのでそうメールで返信しようとした時だった。
「あれ?教太じゃね?」
「ん?オカマか」
「オカマ?」
「オカマじゃねーよ!」
制服姿のオカマがいた。結局家に帰っていないようだ。
何か家が嫌いらしい。それで学校に行くのも面倒だと言っている。じゃあ、死ねよと俺の率直な意見。なのに素直に聞かない。
するとオカマはアキに目をつけた。
視線が怖かったのかアキは俺の背に隠れた。
「美嶋?」
「何言ってんだ?」
「いや、一瞬美嶋に見えたんだって。でも、黒髪だから違うか」
おかしなこと言っているが俺も最初は美嶋に見えたことは確かだ。今は髪をまとめてポニーテールしている。これを下して茶髪にしたら正直見分けがつかない。おかしいくらい似ている。
「それで教太。その女は何だ?彼女?美嶋がいながらなんて最低な奴だ」
「美嶋がいながらってどういう意味だ?」
「いや、別に」
口笛も吹けないのにふりをしてごまかした。そして、懐からタバコとライターを取り出した。
「お前、まだ吸ってるのかよ」
「教太も吸うか?」
「やだよ。体を自分から破壊するようなバカな真似は死んでもやる気はない」
「お前世界中の喫煙者を敵に回さなかったか?」
お前は日本中のPTAを敵に回したぞ。
するとアキがオカマが咥えたタバコと手に持っていたライターを回収した。
「あのちょっと」
「あなたまだ未成年ですよね」
「そうだな」
「いや、なんで教太が答えてんだ?」
「体によくないですよ」
「黙れ!俺は自分の体を壊すのが趣味なドMなんだ!と言っている」
「だから、勝手に言うな!」
「とにかく、没収です」
「返せよ!」
睨み合うふたり。両者負けていない。というかこの状況を第三者から見ればオカマがアキにちょっかい掛けているようにしか見えない。
ここは俺が救いの手を加えるしかない。
「ちょっと貸して」
アキからタバコとライターを回収。
「あ!教太さん」
「ナイスだ!教太!」
オカマが喜んでいる。お前のためにやったわけじゃない。
「没収するだけじゃぬるい。こうしないと」
俺は煙草の箱にライターで火をつけた。
「ああ!俺のタバコ!」
未成年者の喫煙はよくない。というか法律違反だろ。
「じゃあ、残ったライターも没収で。ついでにタバコを二度と買えないように財布も没収で」
「ちょっと待て!財布だけはやめてくれ!」
「なんでですか?」
「美嶋そっくりさんは何を不思議そうに言っているんだ!」
「おまわりさんだ」
「何!」
「逃げるぞ、アキ」
俺はアキの手を引いて走る。
「おまわりさんなんかいないじゃねーかって!教太!俺の財布返しやがれ!」
全力で追われるが住宅密集地である子この辺一帯は美嶋の家に行く際に把握しているので振り切りるのは簡単だった。
こうして俺はライターと財布(2000円くらい)を手に入れた。




