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誰も知らない神の法則  作者: 駿河留守
青色の炎
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記憶⑤

「えー。皆、聞いていると思うが昨日。ついに我が学校にも例の中学生狩りの被害者が出てしまった。大会を5日後と控えている。くれぐれも無事に帰ってくれ。なるべく集団で帰ることを心がけてくれ。では解散!」


『お疲れっした!』


 そういつもの掛け声で顧問にあいさつをして本日の部活が終了した。1年生は片づけに追われてそれ以外の学年はそれぞれの帰路に急ぐ。顧問に言われたように集団帰ろうという動きが活発になっている。

「国分」

「なんですか?キャプテン」

「今日の自主練どうする?」

「そうですね」

 大会が近くなっている。俺も試合に出るメンバーの候補に挙がっている。3年生にとっては最後の大会となる。俺みたいな下級生のせいで3年生の夏を終わらせるわけにもいかない。その考えをキャプテンに伝えて練習終わりに自主練を行っている。でも、昨日のこともある。

「中学生狩りにあったら大会で勝つも元も子もないので今日は」

「大会が近いからこそ練習だ」

「でも」

「大丈夫だ。中学生狩りに襲われる心配はない。このバスケ部キャプテンが保証してやる」

「そういう人が襲われやすいんですよ」

 そう冗談を混ぜながら俺たちは笑う。笑い事ではないのに。

 キャプテンたちは知らないかもしれない。襲われたのは2年生だということ以外は知らないはずだ。その襲われたのが俺の親友であることもそうだ。

「練習しましょうか」

「その意気だ!」

 1年生に頼みゴールをひとつだけを残してもらってキャプテンと二人っきりの自主練習だ。この自主練習に参加したのは大会から自分の基礎力をあげるというのも目的だ。だが、理由は他にもある。なるべく遅くまで残りそして中学生狩りに出会うのが目的だ。俺の野望。中学生狩りを殴る。自分の身体能力を信じて俺は中学生狩りと対峙する。

 自主練は日が沈むまで行われた。

「さて、今日はこのあたりでいいだろう」

「はい。ありがとうございます」

「日に日に上達している。このままいけば我が部の初の市大会突破も夢ではない」

 そうキャプテンが意気込みを語るが市大会の後は地区大会、その後が県大会だ。これを見ても分かるようにうちの部は市内でも最弱なのだ。えらく低い目標なのだ。

「じゃあ、片づけますね」

「いや、このくらいは自分でやる」

「でも、片づけは下級生がやるものでは」

「たまには上級生もこうした雑務をやり下級生がいることで我がレギュラー陣がどれだけ支えられているのかこの身で体感するのも大切だと思っている」

 この人はすごい人だ。バスケも部内で一番うまい。それだけではない。周りが恐ろしいほどに見えている。大会前の緊迫した状況下の中でこの人だけは冷静だ。チームの要であるのにもかかわらず他の部員の指導、管理も同時に行っている。顧問がバスケ初心者で何もわからない中、キャプテンに支えられてこの部は創部し始めて市大会3位という好成績を残した。あと一歩のところで地区大会への切符を逃したが行ける気がした。この人ならやってしまうと思った。まぁ、低い目標であることは目をつぶる。

「じゃあ、お疲れ様です」

「おう!お疲れ!」

 俺は部室兼控室に入って制服に着替える。その懐にはさみを仕込ませる。バックも普段なら置き勉ばかりしていて軽いバックなのだが、今日は重い。中学生狩りに出会った時に武器になるかもしれないという対策だ。水道で汗を流すついでに気合を入れる。すべては尾崎の復讐と香波のために。

「行くぞ」

 俺は部室から出る。体育館にはまだ明かりが灯っている。キャプテンがまだいるのかもしれない。本当にあの人は中学生狩りにあわないだろうか心配になる。あの人がいなくなった時点でこの部は終わる。市大会突破どころか1回戦で消える。

 いや、俺が捕まえればそれですべてが終わる。

 気を引き締めて昇降口がある。教室棟に向かうために渡り廊下に向かう。するとその先に生徒がいた。女子生徒だ。校舎の中は暗く誰だかよく見えない。近寄るとそれは知り合いであることが分かった。

「あれ?香波?」

「きょ、キョウ君!」

 香波は俺の姿を見ると非常に慌てた。

 朝以来まともに姿を見る。

「こんな時間まで何やってるんだよ」

「い、いや・・・・・・その」

 目を合わせず何も言わない。ここで俺は香波に聞きたいことがあったと思い出す。言い出す前に香波が口を割る。

「キョウ君は今まで部活を?」

「あ、ああ。キャプテンと自主練。さっき終わったところで今帰り」

「そ、そうなんだ」

 目を合わせようとしてくれない。何か俺を避けているような感じがした。いつもとは違う香波の反応だ。

「香波は何してるんだ?」

「え・・・・・・えっと、彼氏待ち」

「そ、そうか」

 なるほどそれで俺にこの場から早く立ち去ってほしいというわけか。でも、こんな時間まで学校に残っているのは俺かキャプテンくらいだぞ。もしかして、香波の彼氏って。

「キョウ君!」

 香波が突然俺の名前を叫ぶ。その時俺の背後に何かが迫っていた。

 その時の俺は完全に油断していた。今までの中学生狩りはすべて学校の外で起こっていた。学校中なら大丈夫だろうと香波の前なら大丈夫だろうと油断していた。だが、情報によれば襲っているのは中学生でこの中学にその犯人がいてもおかしくない。今冷静に考えれば俺はバカだった。

 振り返ると俺は顔面を突然殴られた。何が起きたのか分からなかった。その場に倒れると頭を踏みつけられる。身動きが取れなくなる。体育の柔道の時間で習ったことを思いだす。固め技で体全体よりも首の動きを封じれば相手は体を自由に動かすことはできない。それを心がけろと先生は言っていた。その首の動きを完全に封じ込まれた。

「ダメだろ。香波。他の男の子と楽しそうにしてたら。国分のことをキョウ君とか親しげに呼んじゃって」

 その声には覚えがあった。

「な、なんであなたがこんなことを!」

「なんでって香波の彼氏だからだよ。彼女をたぶらかすような男から守って何が悪い」

 ここではまだ予想にすぎない。でも、ほぼ確信していた。

「あなたが例の中学生狩りなんですか!キャプテン!」

 あの人は言っていた。襲われる心配はないと。それもそのはずだ。なぜならそれをいた人が・・・・・・。

「そうだね。国分もよく知っているバスケ部キャプテンが中学生狩りの犯人だ」

 その途端、この人に対する尊敬がすべて恨みに変わった。

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