日常⑤
美嶋の家の周辺には何もない。住宅地しかない。10分歩けば、コンビニがあるくらいだ。誰もが知っている全国展開しているコンビニだ。昔は7時から11時までしかやっていなかったらしい。店の名前もその名残が残っている。そのコンビニの弁当はこっているすごくうまい。だから、コンビニの弁当は基本的に同じ店にしている。
二人でコンビニに向かう際に会話はなかった。少女は下していた髪を元のポニーテールに戻していた。暗闇が支配する道は街頭の明かりを頼りに進む。10分くらい歩いて国道に出るとすぐにコンビニがある。
「明るいです」
ここで初めてその子が口を開いた。住宅地の道と違って国道は広く明るい。車も多く走っている。大型のトラックが通り過ぎると勢いよく風が吹く。その子はまるで始めて見るかのように勢いよく通り過ぎる車を見つめていた。
何か不思議な感じがする。見た目は普通の少女なのだが、何かが違う。
「おい、行くぞ」
「は、はい」
声を掛けると俺の後をテクテクとついてくる。杖を大切そうに抱えて。
コンビニは交差点の角にある。駐車場は広く。大型のトラックも止められるくらいの広さがあるが今はトラックどころか車も一台も止まっていなかった。駐車場を横切ってコンビニに入る。自動ドアにその子は少し驚く。意味が分からない。
「・・・・・・いっぱいありますね」
不思議そうに店内を見渡す。
「それはコンビニだからな」
俺は弁当のある方に直行。その子もついてくる。きょろきょろしながらついてくる。何か怪しい。
「さて、何かひとつ好きなの選らんでいいぞ」
「え?いいんですか?」
「ああ」
さっきから聞こえてないふりしてたけど、ずっとお腹が鳴っていた。どれだけ食べてないのだろう。もしかして、ダイエットでもしていたのか。でも、その割には・・・・・・。
「これおいしそうですね。でも、こっちも捨てがたい。あ、これもおいしそう」
絶対違うな。高カロリーなもの選んでいる。
「ひとつだけだぞ」
俺はから揚げ弁当を選ぶ。無難でおいしいからだ。
「それもおいしそうですね」
その子はたらこスパゲッティをすでに持っていた。
「いや、ひとつだけだぞ」
「ほしいです・・・・・・」
きれいな瞳で俺の方を見る。キラキラした瞳で俺の方を見る。
「はぁ~。分かったよ」
「やった!ありがとうございます」
その笑顔を見たいがためにお金を無駄に払うのか。ははは、俺ってバカだな。
お金あったよな?




