すみれ咲く遠い町に
当たり一面に広がる緑。
一面に咲く雑草や花があるが名前は知らない。
一歩前に歩けば
そこは断崖絶壁の崖。
さすがにそれじゃ危ないので腰ぐらいの高さのガードレールのような白いさくがある。
だが、それでも小さい子供がハイハイしたら落ちそうな空間、隙間があった。
舗装された平面だがそこには
目にっぱいに広がる
町の景色
人々が小さくアリのように見える。
町は色とりどりの景色で素直に綺麗だなと思った。
町を見渡すと学校に行くための白色の面に緑の線が入っているバスが来ていた。
「おぉーバスがオレを呼んでいる」
風が吹いてくる。
風が気持ちいい。
ふわふわで柔らかい風が素肌に当たる。
寒くも暑くもない調度いい小春日和だ。
「よしっ、そろそろ部活に行くか」
ベンチから腰を上げて
両手を重ね合わせ、ひっくり返す。それを頭の真上に上げて目一杯に伸びをする。
誰もいないので、人の目を気にせずにやれる。
もうすぐ、バスが来るのでバス停のある場所にいく階段を下りる。
階段は神社によくある石段でごつごつした足場だ。
手摺りはない。
この階段は一直線になっておりバス停の金属板が調度見えるぐらい位置になっており物凄く急な坂の階段になっている。
そのため、何も物がなく絶景の景色が見れるこんな場所でもあまり人は来ようとはしない。
それだけ、この坂は上るのにも下るのにもきつい階段だ。
こんなきつい階段を好きで上がっている
変わり者はオレぐらいじゃないのだろうか?
――――階段を下りると、一人の少女がいた。
いつもは朝のバスで会うが今日は珍しく昼の時間帯で会う。
たぶん、お互いに顔は知ってるけど名前などは知らない。
「あの・・・ニシノさん・・・ですか?」
声が聞こえた。
オレと違う同性同名の人だろうと思ったが周りにはオレ達二人しかいない。
もしかしてと少女の方を見てみる。
「よく、朝のバスでお会いしますよね」
彼女はオレの目を見て喋っていた。視線は低く
目がくりっと大きくきれいな顔立ちをしている。
見た感じとても大人びた容姿をしている。
それより、誰だろうか。
「ああ、そうですね」
とりあえず話を合わせる事にした。
少女が敬語を使っていたので敬語で返す。
「どこの学校で行ってるんですか?」
「〇〇中学ですけど、どうして?」
えっ?、と聞き返したまま少女は言葉を失っていた。
「・・・高校生だとばかり思っていた」
相手の顔から赤くなっていて笑顔が浮かんでいた。
その笑顔を見ると
なぜか緊張がなくなって少女の事を知りたくなった。
―――――――しばらく、沈黙が流れた。その沈黙は重苦しく気まずい沈黙だった。
沈黙を無くしたかったのでこちらから話かけてみる。
「あなたは高校生なんですか?」
少女は慌てて、こちらを見た。えっ?と聞き返したのでまた同じ事を言う。
その様子も何か可愛いげさがあって素直にドキッとした。
「いや、高校はまだ来年。あなたは?」
「オレも」
少女は、ははっと笑い顔を俯き、また赤らめた。
その笑い顔は何とも言えない可愛さでさらに赤くなっているからより一層、可愛く見えた。
「そう、私達同級生だったんだね」
改めてこちらの顔を見る顔はやはり可愛いとしていいようがなかった。
「おかしいな。オレ達敬語なんか使って」
しばらく、ふたりは見つめ合いホント、ホントて言いながら笑っていた。
少し沈黙が流れたがそれは、重苦しい沈黙ではなくなっていた。
―――――しばらくして、沈黙を破るかのようにバスが来た。
バスに乗りイスに座ろうとしたが少女がオレの肩を叩いてきた。
「ねえ、一緒に座らない?」
ドキッとした。心臓バクバク鳴っているかのような感じだった。
もちろん、普通なら断るのだがイスは偶然ひとつしか余ってなく仕方ないような嬉しいような気分で座った。
オレが座ると少女も隣に座って来た。
イスは狭く、二人座るとどうしても密着して少女の香りがした。その香りはすみれのような香りがした。
「なんか、すみれの臭いがする」
「えっ、分かる?」
少女の目はこちらを向いて自分の服の袖を嗅ぎだした。
「香水でもしてるの?」
少女は手を振りながら違う違うと言う。
「今日すみれの花を摘んでいたの」
「何で?」
そう聞くと彼女はどことなく儚く崩れそうな顔をした。
「友達にね、遠くに転校した人がいるの。それでね、その子にすみれの花を送ったの。私と同じすみれの花が好きなんだって」
「そうなんだ」
何ですみれの花を?って聞きたかったけど少女の暗い俯いた顔を見ると聞きたくなくなった。
違う話題に持っていこうと話を変えてみる。
「オレもすみれ好きだよ」
だが、そう言うと少女はいきなり顔を真っ赤にして俯むいた。そわそわとし始めた。
「花、すみれの花だよね?」
「うん、そうだけど・・・」
少女の質問にはよく意味が分からなかった。
でも、なぜか気まずい雰囲気になり沈黙が流れた。
窓に写る動く景色を見る。どの景色も殺風景で見飽きた景色ばかりだった。
そこには、すみれの花が所々に咲いていた。
そういえば、この町の特産がすみれだったなと噛み締めながら思った。
――――バスのスピーカーが〔次ー〇〇前〜〇〇前〜〕と鼻声の声が響いた。
「じゃあ、オレここで降りるから・・・」
少女はイスから立って通させてくれる。
「うん・・・じゃあね」
オレが行こうとすると少女は肩を叩いてきた。
「・・・あの、明日、今日と同じ時間にまた会えない?」
「うん、いいよ。明日も昼から部活だしね」
少し面倒臭いと思ったが少女にまた会えると思うとつい答えてしまった。
――――今日も、またあの少女に会う。そういえば、まだ名前も知らないんだな。知っているといえばすみれが好きだと言う事。
バス停に行くと少女がいた。でも、なぜか暗い顔をしていて元気がなかった。
「気分、悪い?」
「いや、大丈夫」
少女はそう言ってたけど、やはりそれでも気になってしまう。
「上行かない?」
「上?階段上るの?」
「うん、町を羨望出来るいい場所なんだ」
少しでも少女の気分を楽にしたいと思い登ってみる。
――――やはり登っている最中、誰でも思ってしまう事を少女は言う。
「ねえー、まだ?」
「うん、まだ」
「きついー」
少女の顔には汗がびっしょりできつそうだった。
「おんぶしてやろうか?」
冗談で言ったつもりだったが予想外の返事が来た。
「うん、おぶってって」
少女はそう言ってオレの背中に器用に乗った。
「うわっ!」
「頑張ってぇ〜」
・・・正直、重たかった。がそんな事を言えるはずもなく仕方なく頂上まで目指す。
いまさら、冗談なんて言えないよな。
背中越しに伝わる温もりで汗がびっしょりになっていく。
「ねえ、ニシノ?名前、何てついてるの?」
少女の声が背中越しから聞こえてくる。
「隆稀だけど」
「ふーん、普通だね」
「普通が1番さ」
ふと疑問に思った。
そういえば、何で西野って名前知ってるんだ?聞いてみると案外なことだった。
「うーん、バスの中でニシノって呼ぶ人がいたから知った」
「ふーん」
まあ、確かにオレの友達が無闇にニシノ!って叫び散らしてるから知られても当たり前か。
「ストーカーみたいだねとか思わないの?」
「別に」
考え方を変えたらそんな事を思うだろうが少女が言うまではそんな考えまでは至らなかった。
むしろ、それより・・・。
「なあ、おまえの名前は?」
「そうだねー。頂上に着いたら教えてあげる」
「何だ、そりゃ?」
「いいから、いいから速く登ろう?」
少女はせかすように言う。
――――少女をおんぶしてやっと頂上に着く頃には汗が至る所びっしょりで息切れをしていた。
「きつぅー」
「ご苦労様」
少女はそう言うとやっとオレから離れてくれた。
すると、体がとても軽く感じた。背中に何ともいえない爽快感があった。
「すごいねーすみれが当たり一面にある」
少女はしゃがみ込んですみれのつぼみを見てる。
町を羨望出来る場所より緑一面にあるまだ、つぼみの花、すみれの方に興味をもったいかれてしまった。
こちらとしては、何か期待をしていた少女の顔を驚かせたがったが予想外の所で驚ろいて少しがっかりした。
「知ってる?私、転校するんだー」
少女は背中をむけて言う
「えっ何で?」
「私の親が転勤で仕方なく連れていかれるの。詳しい事はよく分からないけど」
少女はまるでさらわれるかのような言い方で言う。
立ち上がり
振り向いて少女は何か思いつめたかのような表情でこちらを見た。
しばらく見つめ合い口を開く。
まるで告白するかのような雰囲気だった。
「ねえ、すみれが好きだって言ってたよね。もう一回言ってみてよ」
はっ?
少女は突然言う。
「何で?」
「いいから、言ってみてよ」
よく分からないが言ってみる。
「・・・すみれが好きだ」
「はい、私も一目見た日からずっと好きでした。付き合ってください」
「へっ?」
何が何だか分からなかった。冗談なのか本当なのか。
少女は真剣な眼差しで決して冗談っていう感じはしなかった。
まだ、見つめ合うがそれでも意味がよく伝わってこなかった。
「私の名前桜井すみれって言うんだよ」
少女はにっこり笑う。
気ずけばその顔は赤く染まっており可愛いく見えた。
10秒ぐらいの沈黙が流れてやっと言葉の意味が分かった。
すみれが名前だったんだ。
「あ、ああ。なるほど」
「やっと、分かった意味?」
すみれは呆れたように言う。
「ああ」
「えっと、それじゃあ・・・返事は?」
すみれは期待と不安をのせて聞いてくる。
断れたらどうしようって感じが伝わってくる。
でも、オレの返事はもう決まっていた。
「オレも気ずいたらすみれが好きになっていた。だから、付き合って下さい」
「ふふっありがとう。でも、私、明日から会えなくなるんだよ?」
「それでも、いい手紙でも電話でもすればいいさ」
すみれの目からは雫が落ちかけていた。
それを、手でそっと取り除いて見つめ合って抱き合った。
――――
「私、ここで咲くすみれの花を見たかったな」
「押し花にでもして送ってやるよ」
「うん」
――――それから、すみれは転校をした。その後、電話番号など教えて貰って電話を毎日した。
住所は初めて聞いたような見知らぬ遠い町で
すみれは言っていた。
「この町にも、すみれが咲くんだって」
オレは約束通りに、すみれの花を押し花をした手紙をすみれが咲く遠い町に送った。
ここまで読んでくれた人ありがとうございます。ついでに、評価などをしていただけると嬉しいです。この短編小説は作者が夢で見た世界に少し手を加えた物です。ありきたりかな?と思いますがそれでも楽しく読んでくれたら作者は嬉しいです。