螺旋
螺旋のように、頭の中をぐるぐると、自分への自信と、明日への希望が満ちてゆくこの感覚を、俺はもう既に知っていた。今俺は全能の人間にでもなったように、何でもうまくやれる気がする。この感覚は、今までも何回もあった。その時の俺は決まって、すごく充実感に満ちて、俺がこの世界の、主人公にでもなったような心地で、世界の中心には俺がいて、俺を中心に世界が回っているような気がするのだ。これは強がりでも、はったりでも何でもない。かと言って、自分を過大評価し過ぎている自覚もない。今の俺の俺自身への高評価は、さもそれが当たり前の事実かのように、すんなりと受け入れられてしまう。つい最近まで、自分のことを殺したいくらいに憎んで、憎んで、狂ったように自分への攻撃を続けていた俺の姿が、まるで嘘みたいだ。俺は変だ。だけどどうせ変なら、とことん変であればあるほど、面白い、と、自分を正当化する余裕があって、どこまでも自分が変になっても、周囲に受け入れてもらえるという根拠のない確信があって、意図的に思考を停止するのを、肯定することができる。螺旋。めぐり巡って今、良い周期に来た。ゆっくりと、丁寧に巻いていた糸が、台無しになるように、ぐるぐるとほどけていくような感覚が、とても気持ち良い。ほどけていく糸がこすれて、退廃的な音色を奏でている。それはどんな一流のオーケストラが奏でる音色よりも、俺にとっては、美しく聴こえた。
rara ra ra rara.
オペラ歌手の伸びやかな歌声と共に、美しきバレリーナが軽快なステップを踏んで、ダンスをしている。それを客席で1人、鑑賞している俺の表情は、黒く塗り潰されていて、分からなかった。怪異を目にしている感覚だった。俺の筈なのに、俺は俺が分からない。だけどそれは怖くなくて、寧ろ嬉しかった。俺が俺では無くなっていって、遠い存在になっていって、俺の手を離れていくのが、俺にとっては、限りなく嬉しいんだと思った。鳥が雛から成長して、白く美しい翼を羽ばたかせて飛んでいくのを見守る瞬間のように、その舞台を見ている俺ではない俺を、見ている俺の感情はとても安らかで、このまま眠りたい気分だった。
。るいてしをスンダ、でん踏をプッテスな快軽がナーレリバきし美、に共と声歌なかやび伸の手歌ラペオ
ああ、また、螺旋が逆回転を始めた。
.arar ar ar arar
ぐるぐると、回ル、回ル。
それに比例して、
あの美しい舞台はぐにゃぐにゃと歪んで、
消えていって、
俺はまた、訳が分からなくなって、
だけどもう、それすらも、
受け入れてしまいたいような心地がしてーー
ぐにゃるぴーーーーーーーーー@#/&
目が、覚めた。
目が覚めるとそこはいつもの、
家賃3万9500円の、アパートの一室だった。
俺は明日も、信じられないほど楽しく生きていく。
これからもずっと、そのつもりだ。




