ナシュの両親のハーブ粉
というわけで、アーカーも回収してアーレシュア王国国境の町ディニーラに一番近い元廃村に戻る。
アルカとしてもここの村が窓口になるのは立地的に「ちょうどいい」と言っていた。
「で、畑の様子はどうなの?」
「みて! みて! なおったの!」
「種も蒔いたんだよ! 一ヶ月くらいで採取できるようになるんだ!」
主に大はしゃぎのナシュに手を引かれ、森の中の畑に連れて行かれる。
アルカが浄化してくれたおかげで、畑はしっかりと浄化され、四角く盛り上がった土からは芽が出ていた。
成長が早い。
土地の魔力の影響だろうか?
「もう芽が出ているの?」
「そうだよ! ママとパパが残してくれたやつ、あげる! 新しいの、ナシュがつくるから」
「え? あ、ありがとう?」
家の中に駆け込み、秒で戻ってきたナシュ。
バランスが悪そうな走り方なのに、畑の中をあっという間に私たちの方に戻ってきた。
手渡されたのは粉末状にされたハーブ。
「本当にいいの? 大事なものなんじゃ」
「うん! マイキーとはなしてきめてたの。畑がほんとにジョーカされて、また畑にタネを植えて、芽が出たら……パパとママが育てた分はおねえちゃんにあげる! おねえちゃんのごはんおいしいから」
「ん? ……そ、そう。料理に使うハーブなのかしら?」
「料理にも使えるよ」
後ろからマイキーがつけ加えてくれた。
ナシュは話が飛び飛びでちょっとわかりづらい。
が、このくらいの年齢の子は自分が話したいことしか話さないからこんなものだろう。
マイキーがある程度ナシュの話を補正してくれているから助かる。
「鑑定してみてもいいかしら?」
「いいよ」
なぜか許可をくれたのはマイキー。
まあ、マイキーがいいというのなら[鑑定]させてもらおう。
貴重なもので、門外不出とかなのだとしたら申し訳ないないと思ったが……魔族国では意外とポピュラーなものなのかも?
「[鑑定]」
声に出して、魔法陣を小瓶に入った乾燥粉末ハーブにかぶせる。
ええと……【ボブ・エリーのハーブ粉】……魔力を増幅させるボブ・エリーを乾燥させて粉末にしたもの。オススメの効能は料理に使用すること。
――らしい。
[鑑定]の魔法は知識の量に比例する。
まったくの未知のものは、鑑定対象がなににもっとも使用されているかが表示されるそうだ。
つまりこのボブ・エリーのハーブ粉は料理に使われるものなのね。
「ねえ、マイキー。このハーブ粉が使われる料理のレシピとかはある? 料理に使えるのはわかったのだけれど、適量がわからないわ」
「えー。おれの母さんはスプーン一杯とかで使ってたよ」
「どんなものに使っていた?」
「いろんなもの! パンに目玉焼き載せて、そこに一振りとか。スープに一振りとか。肉を焼いたら、塩胡椒とハーブ粉とか」
「色々なものに合うのね」
「うん!」
刻んだパセリみたいな扱いなのかな?
とりあえず使ってみようか。
「それじゃあ、せつかくだからこのハーブ粉を使って夕飯を作ってみましょうか。アルカとも約束したしね」
「「「やったーーーー」」」
小さな子に混じってアルカも両手をあげてバンザイ。
まあ、私も久しぶりに好き放題料理を作れそうで楽しみだけれど――。
ってことで、3分クッキングのBGMを脳内で流しながら夕飯作り。
今回は味の違いと魔力残留の差を確認するべくボブ・エリーのハーブ粉を使ったものと使っていないものの二種類をご用意しました。
まずは王道の魔物肉のステーキ!
使用したのはボアのロース。
アルカリクエストのコマ肉ハンバーグステーキ。
ボアひき肉を使ったグラタン。
ポテトサラダとマカロニサラダ。
レタスのサラダにチョレギドレッシングとマヨネーズを添えて。
ニンジンのスープとタマネギのスープ。
「「「おお……」」」
「すごーい!」
「おやさいがいっぱい! みたことない、白いやつ!」
「それはマヨネーズ。野菜をつけて食べるとびっくりするくらい美味しいわよ」
「やさいきらいー」
「あら、パパさんとママさんのハーブ粉を混ぜてみたのよ。食べてあげて」
「……たべる」
ナシュは素直ね。
頭を撫でながらハーブ粉を使ったマヨネーズをナシュの前に差し出すと、レタスをフォークで差し込み、つけて口に入れる。
「………………お、おいしいいいいい!」
「え」
「マイキーも食べてみなさい」
「う、うん。………………美味しい……!」
どうやらマイキーも野菜が嫌いらしい。
ちらり、とアーカーとエルワーズを見ると、二人とも複雑そうな顔をしながら遅々とフォークでサラダへ向ける。
メインディッシュのお肉系はサラダを食べてからよ。
「うん、美味しい! こっちのハーブ粉を使ったやつの方が、香りもいいし味わい深くなっている気がする」
「確かに[鑑定]してみると魔力含有量が桁違いだわ。このハーブ粉には調理によって抜けてしまう魔力を留める効能があるみたい。これは人間の国々には革命かもしれないわね」




