File No.5 その人選はいかがなもので? ヤバイ人が召喚されたようだ
たぶん超常的な何か(ヒトじゃないんだろうなー)侘助が何か思いつきます
一方『綺羅』はいつもの大騒ぎ、サンジもいるよ
そこへ6人目のヘンな人がやってきます
侘助は、地上の仮住まいに戻ってきていた。
武蔵野市の某所にある、木造築60年に届こうかというアパートの2階である。
ここにずっといたということにしている。
誰も訪ねてはこないし、来たところで不自然さを認識できはしない。
西陽のあたる畳の上で煎茶を飲みながら、先日の新橋降臨を反芻していた。
(思いがけず、楽しかったのー)
(が、かすみくんといい沙絵さんといい、並ではないの)
偶然会ったのがあの二人、しかも同日とはできすぎてはいないか。
(わしが因子となって引き寄せたのか、いや、あやつらにわしが呼ばれたか……)
そういうことがわかってしまうのはそう楽しいことではない。
しかも完全にわかるわけではなくあまり制御もできないのがまた。
(始末の悪い仕様じゃの……とりあえず沙絵さんや嬢ちゃんにはまた会うとして)
色も恋も縁のない身ではあるが、強く美しい魂は好ましい。
また会いにいきたいが、先日のトラブルが思ったより気にかかる。
侘助はどうしても目立つし、その仕様上、ウソごまかしがほとんど言えない。
いさかいに巻き込まれやすいのは仕方がないとして、沙絵たちに迷惑をかけたくない。
(いまから外見を変えるより……従者を呼ぶか、連れ立って行動すれば認識が分散されるか)
これはいい考えだと決めて、「従者」を呼ぶことにした。
「ひとたび生を得てー、滅せぬ者のあるべきか」
香純はカウンターの前に乗り出して両腕を振り上げている。
「ならば生きよ! いまこの時を! 飲め」
「ロックな敦盛だねー」
「美少女はトクだよね、かすみちゃん無双だもん」
「いうても成人済み」
「パチモンだけど」
掲示板状態の常連たちは声をひそめているが、言いたい放題である。
「誰がパチモンだー! キンカン頭めが」
新橋のバー『綺羅』、今夜の香純「魔王」は絶好調である。
いつもいつもそうしているわけではない。
客たちが持ち込んでくる昔の歌謡曲やロック、ジャズを神妙に聴いていることもある。
客たちの組み合わせ、音楽との取り合わせ。
見当で買ってきた酒が思いがけずうまかった、そんなことでスイッチが入る。
カウンターの端ではサンジが駄菓子をかじりながらテキーラのソーダ割を飲んでいる。
彼が週末ごとにこの店の扉を叩くようになって4回目か、5回目か。
そろそろ数えるのも意味がなくなってきたと思う。
最初は香純のことを落ち着いた子じゃないかと感じていたから、魔王ぶりに初めて接した時は驚いた。
そのうち、愉快でたまらなくなってきた。
(カオスでマニアックで楽しいなんて、そう宣伝はしててもほんとにそうだなんて、激レアだ)
店のファンになったのか、香純の破れかぶれな魅力に参ってしまったのか。
「きみが笑ってくれるなら、オレはカマにでもなる」
香純が突然歌い出すことのある替え歌である。
サンジは深く共感しそうになった。
もう一歩だぞサンジ。
(だけどあなたには、人を愛する能力なんてないのよ、か)
恨み節のエコーが長く尾を引いている。
苦労話などしたくもないが、サンジの人生もいろいろあった。
こんな形の安息があったのなら、もうこれでいいのではなかろうか。
「あのー……お取込み中でしたか」
明梨が出勤してきた。今日は遅れると申告ずみだ。
「アカリちゃん! なんもないよー、きょうもヨロシク!」
明梨の背後から二人の男が続いていた。
「そこでお会いして『綺羅』はどこかとおっしゃるのでお連れしました」
侘助とその従者、「イチ」。
「おじいちゃん! 来てくれたんだね」
「お嬢ちゃん、その節はありがとうな」
後ろにひかえていたイチはこれといって特徴のない中年男の姿である。
なぜか彼は、サンジの姿を捕捉したようだ。
「こんなところであんたに会おうとは……サンジさん、ご無沙汰だね」
「げっ」
「行き着いた先が男の娘!? そんなヤツだと思ってたよ」
どういう修羅場なのか。
明梨「コワイですー、わたしはモブのままがいいのにー」
香純「あきらめろ」




