エージェント 3
最初にも書いた通り、この話は10年以上前に書いたものなので現在の世界情勢とは乖離があります。
出来るだけ違和感が出ないように加筆、修正はしているもののストーリー上どうしようもない設定はそのままにしてあります。
物騒な事を言い出したオリバーが肩をすくめた瞬間、少し先に止まっていた大きな黒塗りのワンボックスが動き出し中から4人の男が飛び出してきてあっという間に俺を車内に連れ込んだ。
そのまま流れるような一連の動作でオリバーも車に乗り込み、白昼堂々いたいけな高校生が誰の目にも触れることなく拉致されてしまった。
俺は二人のいかついおっさんに銃を突きつけられている姿勢でシートに座らされる。
車が動き出すと同時に目隠しと猿轡をされた。
猿轡をされるのはもちろん初めてだけど、なんかこれ、頑張ったら声出るんじゃね?
そんな事を考える余裕が俺にはあった。
実際の所、俺はそんなにあせっていなかったんだ。
あまりの事態の変化に吃驚していないといえば嘘になるが、いざとなれば変身すれば良いだけの話だし。
降りかかる火の粉を払うためなら、変身してもきっと神崎さんも許してくれるだろう。
多分。
俺を拉致った車は何度か右左折を繰り返し、30分ほど走ったところでようやく止まった。
車から下ろされ目隠しだけ外される。
連れて来られたのはがらんとした体育館のような場所だった。
たぶん何処かの倉庫の中だろうと思う。
ちょうど真ん中に置かれたパイプ椅子に俺は座らされ、猿轡をはずされた。
「さて、此処なら少々騒いでも問題ないぞ。率直に聞こう。お前どうやって衛星を破壊した?」
オリバー以外の奴らは皆、俺に銃口を向けてやがる。
まあ得体の知れない手段で衛星を破壊した謎の高校生な訳だから、警戒するのは当然か。
とは言え正直に答えてやる義理なんてねえ。
「輪ゴムって知ってる?」
「ワゴム?」
オリバーが怪訝そうな表情を浮かべる。
「ゴムで出来たわっか」
「ラバーバンドのことか?」
「んー多分それだ。そいつを思いっきり引っ張って撃つんだよ。ジャパニーズ製の輪ゴムは高性能だから衛星くらい訳もないぜ」
一瞬、目を丸くしたオリバーの顔が笑顔に変わった。
「……ふふふふふ」
おおう、なんかすげえ迫力ある笑い方だ。
だが俺も負けん。
「ふふふふふ」
笑い返したがどうにも迫力では勝てないな。
「ははははははー」
キーを上げやがった!
その程度で勝ったと思うな!
「ははははははー」
「オーケー。ハイスクールボーイ。面倒は此処までだ」
あれ? 怒ってる?
まあ普通に考えれば怒るわな。
調子に乗ってからかいすぎたかもしれん。
「おい。アレを」
オリバーの言葉に反応して銃を構えていた一人が胸ポケットから眼鏡ケースのようなものを取り出してオリバーに渡した。
オリバーがケースを開くと中には注射器が入っていた。
「これは最近開発された自白剤でな、効果は素晴らしいが副作用で大概死ぬ。色々あって使いどころが難しい薬なんだが今回の様な件にはうってつけなのだよ」
そう言いながらオリバーが注射器を少し押し込む。
すると針の先からぴゅっと蛍光イエローの液体が飛び出した。
その色おかしいだろ!? どう考えても体内に入れていい色じゃねえ!
喋る前に死にそうだわ!
ゆっくりと注射器を構えたオリバーが近づいてくる。
さすがに限界。
俺は意を決した。
「変身!」
オリバーの足が止まり、銃を構える連中に緊張が走る。
「? 何だ? 喋る気になったか? だがもういいぞ。あとはこの薬にまかせろ」
…………えーっと、変身しません。
「ちょーーーーと待ったーーーーー! 変身! 変身ですよ!? 待ちに待ったへ、ん、し、ん。……あれ? どーしたのかな? もしもーし!」
「おいおい、薬を打つ前から錯乱するとは随分気が早いな」
オリバーが俺の手を掴んで注射器を近づけてくるぅー
え? どういうこと?
俺の人生こんな所で終わるの!?
その時、ぱんっという乾いた音と共に、オリバーの手の中で注射器が砕け散った。
「!」
オリバーを含め全員が銃を構え、倉庫の入り口に狙いを定める。
そこには黒い厚手の皮のコートを着込んだ男が立っていた。
「情報を独り占めとはさすが世界の保安官様はやる事がせこいな」
おお! なんかかっこいい登場シーンだ。
もしかして俺を助けに来た正義の味方なのか?




