エージェント 2
性悪AIも約束は守るみたいで、その後は気のせいかちょっと落ち込んでいる来栖以外は特に問題なく下校時間がやってきた。
「裕樹君、今日部活休みでしょ? 一緒にかえろっ」
「ああ」
くるみと教室を出ようとすると、
「あーらーかーわー、やっぱりお前らー」
おおう、なんかどす黒いオーラが見えるぞ、ダークサイドに落ちたか来栖。
「だから違うって。家が向かいだからどうやっても一緒に帰ることになるんだよ」
「だったら俺のナンパに付き合ってくれよー」
どうせあの子かわいいとか言うだけで声かけられねーくせに。
それに電池が届くまではなるべく人目に付かないように生きなければ。
「わりい。しばらく家の用事で早く帰えらなきゃならないんだ。また今度な」
絶対だぞーと名残惜しそうにしている来栖を置いて俺はくるみと家路についた。
「ゆっくん、誰か家の前にいるよ?」
くるみは俺の事をゆっくんと呼ぶ。
さすがに学校では恥ずかしいから名前で呼ばせているが。
「んー見覚えない奴だな。親父の知り合いかな?」
「そっかー、じゃまた明日ね」
「おう」
くるみと分かれて俺は家の前に立っている人に近づいた。
身長はかなりある。
軽く180は超えているだろうか。
それに身長だけじゃなくスーツの上からでもガチムチの筋肉質だとはっきり分かるすげえ体つき。
スーツの色は深めの青、さらに同じ色の帽子をかぶっている。
「うちに何か用ですか?」
「!」
無駄にでかいスーツ男が振り返った。
やばい!
帽子で分からなかったが、このでかい男の髪の毛は金髪、しかも目の色はブルー。
つまり外国の方ではありませんか!
「えーと、はう、はう あーゆー?」
ちなみに俺には外国語を話す機能は付いていない。
「君が荒川裕樹君だね?」
おお!
俺、外人の言ってる事が分かるぞ!
日本語に変換されて聞こえるなんてまさか俺にこんな隠された才能があったなんて……
「もう一度尋ねるぞ。君が荒川裕樹君だね?」
最初から日本語でした…………
「はいそうです。英語なんて話せない荒川裕樹です」
「私はCIA極東支部所属エージェント、オリバー・ストーンだ」
「しーあいえー?」
「合衆国の情報機関だ。名前くらいは聞いた事があるだろう?」
「そりゃまあ。そのCIAが俺に何の用ですか?」
「昨日の日本時間19時16分、我が国の公には公表されていない衛星が何者かの攻撃によって消滅した。この件に関してなにか身に覚えはないかね?」
身に覚えというか、犯人俺じゃん。
やっべー、衛星っていくら位するんだろう?
とりあえず俺の貯金じゃ絶対に弁償できないのは確実だ。
ならば俺の取るべき手段はただ一つ。
「エイセイ? なんのことやらさっぱり分かりまへんわ」
なぜかエセ関西弁になってしまった。
「そうか。ちなみにだが我々は別に衛星を破壊した犯人を捜しているわけではないのだよ」
「俺には全く関係ない話だなー、あ、でも、あくまで参考程度に聞くんですけど、じゃ何を調べてるんです?」
「攻撃方法だ」
よりによってそこかよ。
まあ当然といえば当然か。
「現状、我々の知る限り静止衛星軌道上の物体を突然破壊できる兵器は存在しない。可能性としてならいくつか仮説が立つが、全て現在の技術レベルでは実現不可能だ」
そりゃ200年後の技術だからなー
「安全保障上、これは合衆国にとって極めて重要な問題だ。例えば日本政府に圧力を加えて、とある高校生の人権を無視する許可を出させるほどに」
そう言ったオリバーの目に力が入る。
獲物を狩る猛禽の目だ。
まちがいねぇ、どういう理由かは全く分からないけど、こいつは俺が衛星を破壊した事を知っている。
「へ、へぇ、物騒な話ですね」
「物騒になるかならないかはまだ分からんよ。時に荒川君。私になにか話したい事はないかね?」
んーまずい。
この玩具がアメリカの手に渡ればきっとろくな事には使わないだろうなー
間違いなく神崎さんにはぶちギレられるだろう。
というわけで俺は何も知らないしがない高校生作戦続行。
「いやー俺みたいな平凡な高校生にはなんの事かさっぱりですよ」
オリバーがさも残念そうに肩をすくめた。
「ならば仕方ないな。此処から先は物騒な手段で行いこう」




