耳
駅のまえのバス停で
十人のひとがバスを待っている
ひとりをのぞきスマホをみている
孤独な海の底を
覗きみるような顔で
さざなみがうちよせるかなしみのように
九人の足もとをゆっくりと浸してゆく
夏だけがまだ
ゆっくりと残っていた
ひとりは
バスがいつかはやって来る方向をみている
しあわせを待つような生き生きとした瞳で
人生ってそのひとみたいに
ちいさな波紋になれるといいな
み逃しつづけたやさしい風の音が
ようやくみることができるころ
際限なくつづいていた
閉ざされた生きる意味の秘密なんてのも
ファイトを持てば知ることができるのさ
それまであじわったこともない
黄金の午後の愛の結晶がふり注ぐなら
ゆりかえす悲しみの心の裂傷も
その傷口も激痛も孤独の占拠率100%も
奇跡が起こるみたいに癒してくれる
かもしれないね
スマホを持たないと
心がスースーする心細さも
ビル街をとぶ夏の虫みたいにすこし浮いてる
『浮くことは
さみしいことじゃない』
煉獄の愛の言葉を
そっと
そっと
君の耳の中に舌を入れるように
そっとそっとそっと
『浮くことは
さみしいことじゃない』
この言葉を君の耳の奥まで突き刺すさ




