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第43話 ヤンデレ幼なじみは財宝に興味を示さない


ダンジョンにてアレクと同じく先行して進んでいたのはやはりフェンだった。




解除されているトラップを目印に進んで行ったのが功を奏した。索敵スキルと認識阻害魔法を最大限に発揮しながら進んで行き、フェンを見つける事が出来た。





彼は強力な魔物が控えているであろう部屋の前で立ち止まっていた。先に進もうにも、一人で魔物に対処出来る自信が無かったのだろう、暫く考えた後、フェンは振り返る。振り返っま彼の目がアレクの居る空間を捉え、戸惑った様に揺れる。









それを見た瞬間、アレクは反射的に走り出した。





自身の力を魔法で強化して、フェンを思いっきり吹き飛ばす。意外な程あっさりと飛んだ彼の身体は扉を突き破って中へ。






そこからは、殆ど勝手に身体が動いた。





中にいるタコ型の魔物を視認すると、アレクは部屋の扉を閉める。鞄から鎖を取り出し、扉に巻き付ける。ついでに氷魔法で扉を凍らせ、更に強固に固めた。





フェンを閉じ込める事に成功したアレクはふぅと息を吐く。




フェンのステータスは暗殺や撹乱向きのものであり、一対一の戦い___それも真っ向勝負___には向いていない。彼一人では絶対にあの魔物には勝てないだろう。





とはいえ、アレクとてフェンがあのタコ型の魔物に無惨に殺されると思っていた訳ではない。そうなればラッキーだが、恐らく機動力を活かしてどうにか部屋から逃げ出すか、隠蔽スキルを使って他の冒険者が来るまで身を潜めるかするだろうと考えていた。




どちらにせよ、暫くフェンが動けなくなれば良い。その間は何も警戒せずにダンジョン攻略に集中出来る。




欲を言えば暫く冒険者活動が出来ない位大きな怪我でもしてくれれば良い。その程度の期待だった。





だから、フェンが部屋の仕掛けにより海中へと放り出され溺れかけたなどとは露知らず、アレクは悠々自適とダンジョン攻略に戻った。






来た道を戻り、先程通らなかった道へ。運良く地下へと続く隠し扉を見つけたアレクはそのまま階段を降りる。




そうして先へ進む事に成功したアレクは、厄介そうなトラップだけ解除しつつ、なるべく魔物との戦闘は避けて奥へと進む。






巨大な石像を模した魔物を倒し、沢山の宝が眠るダンジョンの奥へと辿り着いた。キラキラと輝く宝の山。普通の冒険者なら歓喜の声を上げる場面だが、アレクは無感動だった。





アレクはギルド側が用意した緊急連絡用の魔道具を取り出す。通信が出来る魔道具は貴重な品であるが、今回は前代未聞の海底ダンジョンである為、シーガイドのギルドが頑張って用意した。




他の町のギルドに頭を下げて回って借り受け、ダンジョン攻略参加者が所有していれば高値で買い取り、材料を掻き集めて職人に依頼して新しく作って貰う、などなど。涙ぐましい努力を重ねて、どうにか集める事が出来た通信の魔道具。

流石に全員分は用意出来なかったものの、各パーティに1つずつ渡しても少し余る位には用意出来た。




その余りの一つをこっそり頂いていたアレクは、それを使ってギルドへと連絡を取る。






『____はい、こちらシーガイドのギルドです。何かありましたか?』

『ダンジョンの奥、財宝のある場所へと辿り着いた』

『え!?』






ダンジョンの奥へと辿り着いた旨を報告したアレクは、驚くギルド職員を無視して、事前に記しておいた地図を見ながら、ダンジョンの進み方やトラップの有無を報告する。職員が慌ててペンを走らせる音が微かに聞こえる。






『___はい、はい。分かりました。この道順を他の冒険者に共有します。財宝回収班も直ぐに向かわせます。




事前にお話した通り、最初に奥へと辿り着いたパーティにはお好きな宝や魔道具を持ち出す権利が与えられます』

『別に要らないから全部好きにして』






短く答え、アレクは通信を切る。後は他の冒険者が魔物を倒しつつ、財宝を外へ持ち出してくれるだろう。







貴重な宝や魔道具さえ持ち出せれば、もうダンジョンに用はない。大抵の場合は残った魔物ごと破壊されるか、古代遺物として国の管理の下丁重に保管されるかの2択だ。




保管される場合はこの後も魔物の一掃や全トラップの解除など面倒な仕事が控えているが、このダンジョンは海底にある以上管理が難しい。財宝が回収され次第、ダンジョンの破壊が決まっている。



つまり、財宝さえ持ち出してしまえば後は周りに被害が出ないよう結界を張った上で、高火力の魔法を打つなり何なりして中の魔物ごと破壊するだけ。それでも取りこぼした魔物は控えていた冒険者達が始末する。




海の中という特殊な環境下であれど、ここに集められたのはそれでも戦えると判断された冒険者達なので、ダンジョンの破壊も問題なく終わるだろう。





そしてダンジョンが破壊されれば、中にいる魔物は居なくなる。勿論、一度に大量の魔物が死ぬ事でどうしても周囲に悪影響が及んでしまうが、だからといってダンジョンを放っておけばまた魔物が住み着きかねない。海中であれば影響も少ないだろう。






____後は任せても大丈夫でしょ。





厄介そうなトラップは解除したし、そもそもここに集められたのは実力者ばかり。道順さえ分かれば難なくここまで辿り着けるだろう。後は財宝を持ち出して、ダンジョンを破壊して終わり。そこまでアレクが手を貸す必要は無い。






アレクはこの場に誰か一人でも冒険者が辿り着いたのを見届けて、ダンジョンを出ようと決めた。本当は今すぐに出て行ったって良いが、それはそれで後々ロナルドにバレたら面倒だ。確実に説教が飛んでくるし、あまり彼の機嫌を損ねて協力関係を打ち切られるのも避けたい。






アレクは部屋の隅に座り込む。なるべく戦闘は避けたとはいえ、一人でダンジョン内を進んでいたのだ。流石に疲労が溜まっている。








魔道具に惹かれてやって来る魔物もいる以上、この部屋だって安全地帯とはいえない。しかしここに来るまでに付近の魔物は片付けてあるし、何よりこういう宝物庫として一番重要な部屋には魔物除けが施されてる。年月を考えると効果は薄れているとはいえ、まだ多少は機能している。



加えて、そろそろ魔物討伐を主体としたパーティもダンジョン突入している頃だろう。彼らが魔物を倒して回っているし、いきなり強力な魔物がやって来る、なんて事は無いだろう。





警戒はしつつも、アレクは少しだけ肩の力を抜く。








_______あぁ、早くルミナに会いたいな。







普通であれば目が眩む様なお宝の山を前にしても、アレクの心はルミナにだけ向けられる。そっと目を閉じ、愛しい人の顔を思い浮かべる。





他の冒険者を待っている間、ここで少し休んで、ダンジョンから出たら直ぐにルミナの隣へ戻ろう。


  


疲労を考えればシーガイドに一泊するなりして身体を休める方が良いが、今は一分一秒でも早くルミナに会いたかった。




通信の魔道具をはじめとした必要物資の確保に時間を要したのか、予想以上にダンジョン攻略開始まで時間がかかった為、アレクは限界だった。それこそ疲労感よりも寂しさが勝る程には。






あと、もう少しの辛抱……。





何度もそう自分に言い聞かせ、アレクは財宝の隅でその身を休ませた。


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