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第40話 ヒロインと隠しキャラクター





「それじゃ、また機会があればよろしく頼む」

「はい。お世話になりました」




打ち上げも終わり、臨時のパーティメンバーに別れを告げる。多分もう会うことは無いけど。大分長い時間一緒にいたせいで認識阻害の効果が薄れてしまったので、彼らの中の私に関する記憶は暫く残るだろうから、これ以上は関わりたくない。





リーダー達が居なくなり、この場は私とキースさんの2人。彼に話を聞くなら今がチャンスだ。




私は覚悟を決めて、キースさんに声を掛ける。





「___あの、」

「うん?」




キースさんは穏やかな笑みで振り返る。私は躊躇いがちにフードに手を伸ばし、ゆっくりと外した。キースさんの目に僅かに動揺が走る。





「貴方に、お話があります」

「___分かった。場所、変えた方が良いかな?」





頷き、私はフードを被り直してキースさんを先導する。彼とも大分一緒に居たので認識阻害の効果は薄れている。私の後を付いてくる位は出来るだろう。








暫く歩いてやって来たのは、カイン王子たちが来た時に使った隠れ家。いざという時の為に自力でたどり着けるよう道を覚えていて良かった。意味もなく何度も往復したかいがあるってもんよ。




中に入り、キースさんに座るよう促す。木製の椅子に腰を掛けた彼の正面に私も座る。






「まず、貴方が話していた“アレク”について確認したいです。今から私が知る“アレク”の特徴を述べるので、貴方の知る“アレク”の特徴と合ってたら『はい』、違っていたら『いいえ』で答えて下さい」

「了解」





私はアレクの姿を思い浮かべ、彼に関する情報を述べていく。髪色、髪型、目の色、性格、出身地、得意な魔法、適正の高い魔法属性……などなど。





性格は多少私とキースさんの間で相違があったものの、それ以外は概ね一致した。性格の相違については…まぁ相手との関係性によって態度が変わるなんてよくある事なので、その程度の違いだろう。



アレクはこの世界では珍しい黒髪だ。その髪色という一番の特徴が一致しているのだから、私の幼なじみ=キースさんの弟子(一週間限定)という認識で良いでしょ。





「ありがとうございます。




キースさんの知る“アレク”は、恐らく私の幼なじみです」

「そうなんだ。世間は狭いね」





軽い口調でキースさんは言う。その顔に驚きはない。ここに来るまでの間で状況を整理し、私の事や話の内容について推測を立てていたんだろう。




私は机の下でキュッと両手を握る。バクバクと煩く脈打つ心臓を感じながら、しかし恐怖も震えも表に出さずに、キースさんに___攻略対象に、自分の名を告げた。





「改めまして___私の本当の名前はルミナと言います。今、巷で話題の“聖女”です」

「………」





キースさんは無言だった。ジッと私を見据える。今、彼の目には何が、誰が映っているのだろう。





じんわりと背中に汗が滲む。口の中がカラカラに渇く。ぎゅっと握りしめた手は、力を入れ過ぎて赤くなっている。






「___そうか」





どれくらいの時間が経っただろう。物凄く長く感じたれけれど、実際は1分程度だったかもしれない。キースさんはようやく口を開いた。






____キースさんの目は、慈愛に満ちていた。それは決して狂気を孕んだものではなくて、誰かの宝物を見るような、そんな目だった。






「彼は、大切なモノを失わずに済んだんだね。……ボクと違って」





キースさんの口元が僅かに動いたけど、紡がれた言葉が私の耳に届く事はなかった。






「ほんの僅かな時間だったとしても、教えられる事は極わずかだったとしても、アレクはボクの弟子だ。



可愛い弟子が大事にしている宝物なら、ボクも守るとも」





「だから安心して欲しい」とキースさんは微笑んだ。途端に力が抜ける。ひとまず私を捕獲する気はないようで安心した。






「ありがとうございます、キースさん。




早速ですが、一つお願いがあります」

「何かな?」

「____私に稽古をつけて下さい」




テーブルに手をついて、私は頭を下げる。





「…それは、魔法の稽古、という事でいいのかな?ボクは剣術や体術の類は不得手だし」

「はい」





顔は上げずに答える。キースさんは何も答えなかった。沈黙が続く。







暫くした後、キースさんが降参とでも言うような声色で声を発した。





「___本気みたいだね。



分かった。ボクで教えられる範囲なら教えてあげるから、顔を上げて」

「…!」





バッと顔を上げると、キースさんは困ったように笑っていた。





「そんなに真剣に頼まれては断れないよ。




ただし、稽古中はボクの言う事をちゃんと聞くこと、無理に詰め込みすぎないこと。良いね?」

「……はい!よろしくお願いします!!」

「こちらこそ。ほんの僅かな時間だけどよろしくね」





差し出されたキースさんの手を、私はしっかり握り返した。





よし、これで修行も捗る。あとはキースさんのヤンデレスイッチを押さないように心掛けなければ。



ま、ゲームだとキースさんのルートは、いかにも“聖女”っぽい選択肢___例えば、『私の力が世のためになるなら』とか『世界が平和になるなら』といった献身的な発言___を選んでいって進めていくので、そういう発言を控えれば大丈夫でしょ。そもそも、こうして逃げ出している時点で献身的からは遠く離れてるし。




あとはアレクの存在もチラつかせておけば安心かもしれない。キースさんはアレクのチートっぷりを知ってるし、アレクの事も大切に思っていそうだから、横恋慕はしなさそう。





気を抜かないようにしつつ、しっかり学ばせてもらおう。


・・・・・








喜ぶ新たな弟子を見つめながら、キースは微笑ましい気持ち半分、憂鬱な気持ち半分というなんとも複雑な心中を抱えていた。






キースはアレクの、幼なじみに対する強烈な思いを知っている。故にこそ、その存在は深く自身の心に刻まれた。




____ちょっと引くくらいに重いその“愛”を傍で感じていた故に。





「……アレクに知られたら、ボク問答無用で殺されないかな………」





そうならない様にどうにかルミナに宥めて貰えないかな、と1人怯えるキースだった。



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