表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/41

第38話 隠しキャラクターとの魔物討伐



結論から言おう。見事にフラグを回収しました。




リリカと再会後、また一泊野宿してからグライスに戻るとこの町では見慣れないエルフが冒険者ギルドに居た。キースさんである。





周囲の人の話では、私達より少し前にここに着いたばかりらしいが、そうとは思えない馴染みっぷりで他の冒険者と談笑している。





依頼の報告をリリカに任せ、私は認識阻害を発動させたままこっそりキースさんの話を盗み聞きする。



さっさと部屋に戻った方がリスクは無いけど、キースさんがどういうスタンスでいるのかは知りたかった。聖女を探しているのか、いないのか。





「へぇ、じゃあアンタは久々に外に出てきたのか」

「あぁ。少し休んでいただけなのに、いつの間にか長い時が経っていたから驚いたよ」

「エルフの感覚での“少し”は俺らにとっちゃ何十年、何百年だしなぁ…」





ポヤポヤと笑うキースさんに、ガタイの良い冒険者が呆れたようにため息をつく。面倒見の良いその人は「それなら色々と教えてやるよ」とキースさんに今の治世について話し始めた。





「アンタが外に出てた頃は知らんが、今の世の中は比較的平和だ。周辺の国との関係も良好、資源も安定している。特に王都辺りはそりゃあもう栄えているぜ」

「へぇ…。ボクの頃は魔物の大量発生や飢饉に悩まされたりしてたけど、今は戦いも少ないんだね」





「………平和なら、“彼女”も少しは報われるかな」




キースさんはポツリとそう零した。




“彼女”とは紛れもなく、かつての聖女___彼が愛した女性の事だろう。慈しむようなその目は、空よりもっと遠い所へ向けられている。




キースさんは一瞬だけ冥福を祈るかの様に目を伏せると、直ぐに切り替えて冒険者に話を促す。




感傷に浸るキースさんに戸惑っていた冒険者も、特に深く突っ込むことなく話を戻した。







キースさんは聞き上手で、話をしていたガタイの良い冒険者の他にも色んな人が彼に話し掛けていた。あっという間にキースさんを囲むように輪が出来る。



私はバレないように輪から少し離れた所で話を聞き続けた。報告を終えた既にリリカには仕事に戻っている。







話を聞く限り、キースさんは今の世の中を知る為に旅をしているようで、今の所“聖女”について関心を示している様子はない。




こうやって冒険者ギルドに立ち寄っているのなら〈聖女失踪〉について知らないはずないし、それを知った上で聖女には無関心を貫いているのかな…。キースさんの性格的にはまぁ有り得る話ではある。







キースさんはルートに入らない限り、優しくて紳士的な人だ。人の良い所を見付けるのが得意で、息をするように人を褒める。




一方で、他人と深い関係になるのを拒んでいる。特に他種族___人間とは。彼は全員に平等に優しくする事で、特定の人と深い仲になるのを避けている節がある。




人間と深い仲になるのを避けるのは寿命の違い故だ。かつての聖女以外にも、彼は多くの友人を、大切な人を、見送った。その辛さを知っているからこそ、彼は踏み込むのを避けるのだ。



見送るのが嫌なら関わらなければ良いだけの話だけど、残念ながらキースさんはそれが出来ない位には人が好きだった。だから、誰にでも優しく平等に接する事である意味一線を引く。そうして人と関わる。それがキースさんの出した“上手な人との関わり方”だった。





………まぁ、だからこそその一線を飛び越えて“深い仲”になった人に対する執着心がヤバいんですが。




ともかく、キースさんは人と一線を引いて関わるタイプなので、“聖女(ヒロイン)”に対しても最初はそこまで興味も執着も持っていない。

ただかつての聖女(彼が愛した人)を守れなかった罪悪感から傍にいったに過ぎず、そこにあるのはかつての聖女への想いだけで、今の聖女(ヒロイン)に向ける特別な感情は一切ない。




それを踏まえて考えると、キースさんは聖女が逃げ出したなら『それならそれで良い』とあっさり諦めそうではある。国の為、とかそういう事にも興味無い人だし。





____隠しキャラクターとはいえ攻略対象だから警戒したけど、考えれば考えるほどキースさんが逃げた聖女に執着する理由はない。“聖女探し”もしていない様だし、そこまで心配しなくても大丈夫かな。




とはいえ万が一にも関わって“深い仲”になってしまえばヤンデレルート待ったナシなので、なるべく近付かないように心掛けるけど。


ま、こちらから近付こうとしなければ大丈夫でしょ。町の人たちが旅人にペラペラと私の事を話すとは思えないし。



仮に何かしらの理由で関わる事になっても、“深い仲”にならなければ大丈夫。選択肢を外し続ければルートには進まない。





うん、カイン王子たちよりは全然やりやすい相手だな。そこまで過敏になる事もなかった。





ひと心地ついた所で、私は盗み聞きを止め部屋へと戻った。さて、明日も修行頑張るぞーなんて気合いを入れながら。


・・・・・


………どうしてこうもフラグを回収するのだろうか。




横を歩くキースさんをチラリと盗み見て、私はため息を飲み込んだ。








今日もクエスト攻略頑張るぞーと、朝の支度を終え気合いを入れていると、申し訳なさそうなリリカに「今日は一緒に行けない」と言われた。



そこまでは良い。リリカはギルド職員なので他の仕事もある以上、私にばかり付き合っていられない。だから「気にしないで」と笑顔で答えたのだが……。






何故かリリカの代わりにキースさんとクエスト攻略に赴く事になってしまった。





何故代わりがキースさんなのか。それはひとえに彼の人当たりの良さ故としか言えない。なんとキースさんは昨日一日であっという間にギルドの人気者になっていた。物凄いコミュ力である。





リリカが無理なら私は1人でクエストに赴くつもりだったのだが、ロナルドさんたちに「何かあったらいけないから」と1人での行動を止められてしまった。いつの間にかロナルドさんたちがアレク並の過保護になっている。




しかし私としては今の内になるべく経験を積んでおきたい。クエストに行きたい私VS止めたいロナルドさんたちが繰り広げられた結果、〈1人じゃないなら良い〉という事で同行者を付ける事になった。




その同行者として選ばれたパーティーによりにもよってキースさんが居たのだ。選出されたパーティー自体は信頼の置けるところなのだが、臨時の魔法使いとしてキースさんがパーティーに同席していた。




来たばかりの旅人であるキースさんが居る事に最初は難色を示していたロナルドさんだが、リリカから一度助けて貰った事があると聞くと「それならまぁ一回位大丈夫か」と受け入れてしまった。結果、私はキースさんが居るパーティーに加わってクエストに臨む事に……。





キースさんを含めパーティーメンバーは私の正体を知らない。勿論本名も知らず、“ハナコ”として認識している。深く印象に残らない様に気を配っているし、認識阻害マントも身に付けているので正体がバレる心配はそれ程ないんだけど……やっぱり攻略対象が居るとそれだけで緊張する。




なるべく離れていたい所だけど、今の私はステータス的にキースさんと同じメイジ枠が適任の為、2人で後方支援を任されてしまった。これも世界の修正力…?






パーティーのバランスを考えても嫌とは言えない。仕方なくキースさんと後方支援に徹する事にする。必要以上に会話しなければ大丈夫大丈夫。









認識阻害マントのお陰か戦闘時以外は特にパーティーメンバーから話し掛けられる事もなく、つつがなくクエストは進んだ。




クエスト内容は魔物の群れの討伐というシンプルなもの。道中、クエスト対象以外の魔物でフォーメーションの確認などを済ませ、いよいよ魔物の住処へ辿り着く。






「よし、まずはオレが斥候を務める」





パーティーのリーダーがそう言って住処に近付く。隠密系のスキルに長けた彼は素早く、かつ静かに魔物の様子を伺う。





「丁度昼寝中らしい。今なら不意打ち出来そうだ」




リーダーの報告を踏まえパーティーメンバーで話し合った結果、遠距離からの不意打ちを仕掛ける作戦に決まった。攻撃担当は私とキースさんである。





「ええっと…ハナコさんだったよね?ボクがキミに合わせるから、好きに攻撃してくれていいよ」




ついこの間会ったばかりだけど、認識阻害マントのお陰で私の事はキースさんの記憶に残っていないらしい。私は特にその事を蒸し返さず、ただ無言で頷いた。





クエスト攻略を続けて手に入れたお金で買った杖を掲げ、魔法陣を展開させる。使うのは風魔法にしよう。光魔法が一番相性が良いとはいえ、万が一にも聖女とバレたくないし、他人の前での光魔法の使用はなるべく控えている。




アレクに手ほどきを受けた風魔法は今の私にとって光魔法の次に上手く扱える魔法だ。エルフであるキースさんも風魔法が得意だったし、合わせやすいはず。





緑色の魔法陣が展開され、それを見たキースさんが同じ様に緑の魔法陣を展開させる。





「「…行け」」




私とキースさんの声が重なる。それと同時に、竜巻と風刃が魔物の住処へと放たれた。それらは魔物を蹂躙し、忽ち消え去る。それを確認した他のパーティーメンバーが武器を構え突撃する。





私とキースさんは、生き残った魔物と斬り合う彼らを魔法で援護する。仲間に当たらないようにコントロールに細心に注意を払って…。




今までは私の攻撃なんて屁でもないアレクや、その身に宿した魔道具の関係で魔法耐性が高いリリカと一緒だったので、あまり魔法のコントロールを意識してこなかったけど……これが結構難しい。

ここまでの戦闘でも何回か当たりそうになってしまい、その度にキースさんが魔法障壁を展開して防いでくれた。世話になりっぱなしでキースさんは勿論、このパーティーの人たちにも頭が上がらない。





幸いにも今回は上手くコントロール出来たお陰でキースさんのお世話になる事も、パーティーメンバーに怪我を負わせてしまう事もなく、戦闘は終了した。素材を採取するパーティーメンバーからそっと目を背け、一息つく。





取り敢えずこれでクエストは完了。後は報告して終了だし…何とかなって良かった。






「お疲れ様。良い魔法だったよ」

「ッ!」




魔物を解体ショーから目を背けながら佇む私に、キースさんが声を掛けてくる。思わず肩を揺らす私を見て、キースさんが申し訳なさそうに眉を下げる。




「驚かせてしまったみたいだ。ごめんね?」

「…いえ」





答えながらフードを深く被り直す。行動を共にしている時間が長ければ長い程認識阻害の効果は薄れる。私の正体がバレるまでは至らないにしても、そろそろ黙っていても気付かれてしまう位には効果が落ちてしまっている。






「お待たせ。解体終わったよー」

「欲しい素材はあるか?無ければ全て売ろうと思ってるんだが…」

「ボクは特に無いよ」





キースさんが答えると、パーティーメンバーの目が私に向く。私は首を横に振って要らない事を示す。





「それじゃ、素材を売った金は後で依頼料と一緒に山分けするって事で…ギルドに帰るぞ」




リーダーがそう言って、採取した素材を手早く仕舞って、一行はグライスに向けて出発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ