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第35話 ヤンデレ幼なじみは相対する

⚠︎欠損シーンなど、一部少しグロテスクな表現があります。念の為R15タグ等付け足しておきます。


グライスを出立してから数時間後。




アレクはシーガイドに到着した。グライスを立つ前はまだ低かった太陽は、今は真上に位置している。


今の所ロナルド達から連絡は無い。『カイン達が追い掛けて来たのなら連絡は不要』と伝えていたので、恐らくロナルドの読み通り追跡の魔道具に込められた“痕跡(魔力)”はアレクのものであったのだろう。




アレクは認識阻害で姿を隠しつつ、カイン達が追い付いて来るのを今か今かと待ち続ける。






屋根の上から町の入口を見張ること更に数時間。日も傾き始めた頃、漸く目当ての集団がやって来た。




アレクは索敵スキルを最大限に発動させて、カインの手元を凝視する。確かに方位磁針の様なものを見ながら、周囲の人間に指示を出している。





____さて、どうしようかな。




やる事は決まっているが、その為にはカインをどこか人気の無い所へ誘導しなければならない。場所の目星はついているが、どうやってそこまで誘導しようか。




追跡の魔道具を使って追い掛けて来てくれれば一番手っ取り早いが、しかし込められた痕跡が魔力となると、如何に国宝級の魔道具とはいえそこまで精度は高くないだろう。上手いこと目当ての場所に導いてくれるか不安が残る。






___いっその事、堂々と行ってみようか。




アレクは認識阻害マントを脱ぎ、普通のマントへ着替える。フードを被り、屋根から降りる。





カイン達がシーガイドでも“2人組の冒険者”を探し回っている事を確認し、アレクは普通の冒険者のフリをしながら町を歩く。カインの近くで、特に隠れる事もせず、適当な露店で買い物をしているフリをする。





手にしていた品物を戻し、ふと顔を上げる。カインと目が合う。彼はアレクの所まで来ると「少し良いかな」と声を掛けてきた。





「突然すまない。私達は今人を探しているんだけれど___」





「___探しているのは“2人組の冒険者”かな?カイン王子」




カインの話を遮って、アレクが言う。カインの笑顔が強ばる。後ろに控えていたヴァンと2人の騎士が警戒を顕にする。




「____君は……」

「僕の事が___いや、“2人組の冒険者”の事が知りたければ付いてくるといい」




アレクはそう言って歩き出す。カインは少し考える素振りを見せた後、大人しくアレクの後に続く。






「……大丈夫なんですか。罠でしょ、どう考えても」

「しかしやっと掴んだ手掛かりだ。みすみす逃すのは惜しい」




後ろでコソコソとそんな事を話しているのを聞きながら、アレクは無言で進んでいく。






どうやらカインとヴァンは歩いているアレクの後ろからコッソリ攻撃を仕掛けようと画策しているみたいだった。背中に殺気を感じる。しかし警戒を緩めないアレクに中々手が出せない。




結局カイン達は何も出来ぬまま、アレクの案内に従って町外れにある洞窟へやって来た。




「この奥で話そうか」




アレクがそう言うものの、警戒するカイン達は頷かない。





「……態々奥に向かう理由は?ここでは話せない内容なのかな」

「来たくないなら別に構わないよ。



10分だけ待つ。10分経っても来なかったら僕は帰るから」





そう言ってアレクはさっさと洞窟に入る。洞窟に入る直前、ヴァンが斬り掛かろうとして来たが、それよりも早くアレクは洞窟へ入った。そしてダッシュで奥へと進んでいく。







町外れにあるこの洞窟は自然に出来たものではなく、人工的に作られたものらしかった。狭い通路を暫く進めば、途端に開けた空間に出る。朽ち果てた祭壇の様なものが置いてある事から、以前は何かの儀式に使われていた場所だったのだろうと窺える。




アレクは瓦礫に腰を掛け、カイン達を待つ。言う通りに来てくれれば話が早いが、もし帰ってしまったらそれはそれで別の方法をとるだけだ。

自分の手で始末をつけたいからこうして真正面から行っているだけで、そこに拘らなければ毒を盛るとか、騎士の誰かを操るだとか、催眠を使って錯乱させるだとか、方法はいくらでもある。





___まぁ、その方法をとる必要は無さそうだけど。




そろそろ10分経とうかという時、カツカツと洞窟に靴音が響く。通路へ続く入口に誰かの影が。






___瞬間、影が物凄いスピードで接近してくる。




ガァァン、と大きな音が響き渡る。アレクを視認するなり飛び出して来たヴァンの攻撃を、アレクが防御魔法で防いだのだ。




かなり強固に作ったはずの魔法障壁にヒビが走る。これには流石のアレクも目を丸くした。強いとは聞いていたが、ここまでとは。



とはいえ、アレクにとっては勝てない相手では無い。




まずは雑魚から片付けよう。アレクは防御魔法を展開させたまま、風魔法を放つ。風刃によって騎士2人が切り刻まれる。



名も無き騎士は呆気なくその場に倒れた。それを見たヴァンの意識が僅かに逸れる。好機と言わんばかりに、アレクは剣を抜いてヴァンに斬り掛かる。




「ッ!?」




流石と言うべきか、ヴァンはギリギリのところでアレクの攻撃を躱した。距離を取り、舌打ちを一つ。





「……王子、アイツらの治療頼みます。コイツの相手は俺がやります」

「………分かった。気を付けろ」




カインは素早く魔法で騎士の身体を確保する。アレクとしてはあの騎士2人には興味が無いので、特に妨害はしない。カインが治療にかかりっきりになってくれればそれはそれで有難い。





「全く、魔法も剣も一流とは…随分才能に溢れた御仁のようで」

「別に。努力の賜物だよ」

「そうかい」





言うや否や、ヴァンがアレクに向かって剣を振るう。横一文字に薙ぎ払われた切先を、アレクは後ろに飛び退いて躱す。間髪入れずにヴァンの剣が襲い掛かる。アレクは自身の剣でそれを受け止める。




ヴァンの攻撃は重く、受け止めた腕がビリビリと痺れた。しかし戦闘に支障が出る程ではない。アレクは攻撃を受け止めたまま、至近距離で魔法を放つ。






だが、放出された光の弾がヴァンに届く事は無かった。ヴァンに届く寸前、魔法障壁が張られ阻まれる。チラリと視線を動かせば、騎士を治療しつつヴァンのサポートに回るカインの姿が見えた。





______回復魔法と防御魔法の同時使用か。中々やるね。




魔法の同時使用は高難易度だ。それが可能だというだけで、カインがかなりの使い手である事は分かった。




だが、まだ未熟だ。この程度なら、十分に対処出来る。



回復魔法も練度が高くないのか、まだ治療には時間が掛かりそうだ。先にこちら(ヴァン)を片付けてしまおう。



アレクは剣を地面に突き立てると、それを支えに一回転。ヴァンの顎を狙って蹴り上げる。





「おおっと!」




躱されたが、想定内。剣を抜いて後退する。直ぐさま光魔法を放つ。




飛んでいった光の玉はまたもや魔法障壁に阻まれる。しかし止めずに放ち続ける。眩い閃光が洞窟内を白く染める。




眩しさから、ヴァンが目を細めた___その瞬間を見逃さず、アレクは動く。






ザシュ。肉が斬れる音がした。




「グッ…!」




ヴァンが呻く。



閃光で目眩しをして、視界が悪くなった瞬間、アレクが魔法障壁の内側へと入り込み、ヴァンを斬りつけた。

ヴァンの左腕は肘から下が消え、断面からボタボタと血が落ちる。





___本当は身体を斬る予定だったのに、躱された。



不意を突いたのにも拘わらず、超絶とも言える反応速度で躱され、片腕しか斬り落とせなかった事にアレクは驚く。





「ヴァン、腕をこちらに」




国一番の王宮騎士の腕を斬り落とされ、カインが治療に動く。名も無き騎士2人の治療もある程度は終わったようで、彼らは静かな寝息をたてていた。




カインの回復魔法では完全に腕を治す事は叶わない。しかし止血程度ならすぐ終わる。それだけでも失血死を防げるのだから、しない訳にはいかない。





___とはいえ、黙ってそれを見ている程、アレクは優しくない。





「……王子!!」




治療をしようとするカインに向かって、風魔法を放つ。咄嗟にカインを庇って前に出たヴァンが風刃に切り刻まれ、その場に倒れた。




「ヴァン!!」




カインは倒れたヴァンに直ぐさま回復魔法を掛けようとするが、そんな暇はなくアレクの魔法が飛んでくる。



防御魔法で防いで治療を続けようとするものの、その前にアレクが魔法と共に突進してくる。自分の魔法でその身が傷付くのも厭わずに。


レベルの高いアレクの魔法と、彼が放った重い一撃によってカインの魔法障壁が割れる。カインが目を見開く。その顔が絶望と恐怖に染まる前に、アレクは彼を容赦なく斬った。




袈裟斬りにされたカインはそのまま後ろへと倒れた。懐に入れていた追跡の魔道具が真っ二つになって洞窟に転がった。






「___これで、静かになったかな」




血塗れで倒れるカイン達を見て、アレクが呟く。まるで大掃除を終えた後のように達成感に満ちていた。




魔法障壁のお陰か、カインは重症ではあるものの、まだ息がある。



放っておいてもいずれ死ぬだろうけど、念の為ちゃんとトドメは刺しておこうかな。




そう思い、アレクは意識を手放しているカインに近付く。そして彼に向かって剣を突き刺そうと構えて___





瞬間、殺気を感じて退く。






「……予想以上にしぶといね」




見れば、起き上がったヴァンが剣を片腕で構えていた。左腕を失い、身体中切り刻まれておきながらなんて根性だ。




とはいえ、相手は瀕死。加えてカインによる援護もないのならアレクの敵ではない。さっさと終わらせよう、とアレクが一歩踏み出そうする。





____が、アレクが攻撃を仕掛ける前に、ヴァンが口を開く。




「お前、そのお方がこの国の第一王子だって分かってんのか?その方を殺すのは、国家反逆罪、大罪だ。



それでも殺るのか、王子を」






アレクは心底思った。下らない事を言うな、と。




王子だろうが神だろうが、自分とルミナの障害になるのなら排除するだけだ。




大罪?だからどうした。国の法律にも、世界のルールにも僕は従わない。僕が従うのはルミナだけ。僕の善悪の基準は“ルミナの為になるか、ならないか”それだけだ。





「大罪だろうが何だろうがどうでも良いよ。僕は僕と、僕の愛しい人の為に行動するだけだ。



その為なら、国だろうが相手になる」

「…………そうか」




アレクの返答を聞いて、ヴァンは目を伏せる。そして彼は剣を地面へ置く。







「___頼む。王子だけは殺さないでくれ」




ヴァンは地面に頭を擦り付け、土下座をする。




「お前が何者かは……大体予想はつくが、詮索しない。要求があるのなら、王子を殺す事以外は飲む。俺をいくら甚振っても構わん。




だから、王子だけは見逃してくれ。あの方だけはここで死なす訳にはいかない」




プライドも何もかもかなぐり捨てたヴァンの命乞い。しかしアレクの心は動かない。ここでコイツらを見逃すメリットは特に無い。まずは煩いコイツから殺そうか、と剣を構えた所で____





ふと、手首に巻かれたミサンガが目に留まる。先程までは気にならなかったルミナのミサンガがはっきりとアレクの目に映る。色鮮やかに。



途端、ルミナの顔が思い浮かぶ。あの子は今頃何してるのかな、なんて場違いな事を思い浮かべる。



殺気が消えたアレクに、ヴァンは微動だにせずとも内心驚く。先程のまでの肌をさす様な空気はどこへやら。アレクを包む空気が、柔らかいものへと変わる。





「___顔、上げなよ」




アレクの言葉に、ヴァンは恐る恐る顔を上げる。





___アレクは微笑みを浮かべていた。この血腥い洞窟内で、命乞いをされている状況には全くそぐわない、愛しいものを思い浮かべている顔。





「君の忠誠心に免じて、見逃しても良いよ」

「……本当か?」

「但し条件がある」




アレクが続ける。




「一つ、明日にでもシーガイドを去って王宮に戻ること。どっちにしても、王子があんな大怪我を負っていていたらこのまま“聖女探し”なんて続けてられないでしょ。王宮に戻って、暫く引きこもっておいて。



二つ、“聖女探し”を止める事、そしてなるべく他の人の“聖女探し”を妨害する事。いくら第一王子といっても彼の一言だけで完全に止めさせるのは無理だろうからね。情報操作したり、多少妨害してくれれば良い。



三つ、二度と僕達の前に顔を見せない事。次会ったら容赦なく殺すから。勿論、今日の事、僕の事を他言しても殺す」





「以上」と言い放って、アレクは魔法薬を一つ取り出して投げる。




「餞別だよ。治療に使える魔法薬位はあげる。



それじゃあ、僕は行くから。分かってると思うけど追い掛けて来ないでね」





踵を返して洞窟の出口へ向かう___その途中、アレクは「あぁそうだ」とヴァンを振り返る。




「もう薄々僕の正体には勘付いている様だし…折角だ、最後に名乗っておこう。




僕の名前はアレク・イヴァエール。ルミナ(聖女)は僕のものだから、死にたくなければ手を出さない事だ」





最後の一言にはありったけの殺気を込めて言い放ち、アレクは洞窟から立ち去った。










残されたヴァンはただ呆然とアレクを見送り__そしてハッとしたように、アレクが渡した魔法薬を拾い上げ、半分程自身の左腕に掛けて止血だけすると、ボロボロの身体を引き摺ってカインの元へ向かった。









それから暫くして、“聖女探し”と赴いていた第一王子率いる一団は、王子を含め重傷者を数名出して王宮へと帰還した。


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