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第27話 ヤンデレ幼なじみはダンジョン攻略を押し付けられる



「で、僕1人だけ呼び出して何の用?」

「そう睨むなよ」




ある日の事。アレクは1人だけロナルドに呼び出しを受けていた。面倒な予感がしたので本当なら行きたくなかったが、ルミナに「お世話になってるんだから」と諭されてしまえば行かない訳にはいかない。渋々ロナルドの元へやって来たアレクは、不機嫌を隠そうともせず彼に用件を尋ねる。




___折角今日はルミナがゆっくり休むって言うから、デートでもしようと思っていたのに。この呼び出しのせいで台無しだ。



しかもここに来る途中、仕事が休みらしいリリカとすれ違った。多分ルミナを遊びに誘う気だ。さっさとロナルドとの話を終わらせて戻った所で彼女はリリカと出掛けているだろう。つまりデートは出来ない。こんなのの呼び出しに応じたばかりに……貴重なルミナとのデートが………。



その時、アレクは初めてロナルドに殺意を抱いた。彼にはまだまだ世話になる予定なのでまだこの殺意を抑えられているが、そうでなければうっかり半殺し位にはしていたかもしれない。






「下らない用だったら帰るからね」

「(こりゃあ相当機嫌悪いな)」




絶対零度の視線とはまさにこの事か。ロナルドは、これ以上凍えないためにもさっさと本題に入る事にした。






「実はな、シーガイドの近くでダンジョンが発見された」

「シーガイドで?…そっか、どの辺り?」





アレクが少しだけ興味を示す。





シーガイドとは、ここグライスから馬車で5時間程移動した先にある港町である。海に面したその町は、様々な町や国からの船がやって来ていつも賑わっている。




そして、暫定ではあるが、コタローとの待ち合わせ場所になる町だ。船を持ってきて貰う以上、彼との待ち合わせ場所は港町で無ければならない。グライスから一番近いのがシーガイドなので、出来ればそこで出国してしまいたいと考えていた。




アレクとルミナ、2人の門出となるかもしれない町の近くにダンジョン。それはアレクとしても放っておけない。





「それがな……なんと、海の中らしい」

「……は?」




ロナルドの言葉に、アレクは間抜けな声を漏らす。「何言ってんだこいつ」とでも言いたげな顔をロナルドへ向ける。






ダンジョンとは、お宝が眠る建物や洞窟を指す。そしてそれらは、大抵古代の宝物庫だったものだ。だから盗人から宝を守るため、様々な仕掛けが施されている。また、時を経て無人となった宝物庫に魔物が住み着いたり、お宝に引き寄せられたりして、ダンジョン内は魔物で溢れている。




お宝には価値のあるものが多く、またダンジョン内の魔物も放っておくと繁殖を繰り返して数を増やし、周囲の町や村に被害を及ぼしたり、周囲の生態系を乱してしまうので、見つけ次第冒険者などによる攻略が推奨されている。実際、ギルドにはダンジョン攻略の依頼も多い。








ダンジョンが元を辿れば人の手で造られたものである以上、地上にしか存在しない。人間が天空や海底にどうやって宝物庫を造るというのだ。そもそも容易に人の手が届かない場所に宝物庫を造る意味とは。盗人対策にはなるかもしれないが、下手したら宝の持ち主だって宝を回収出来なくなる。




にも拘らず、今回シーガイドで発見されたダンジョンは海の底にあるという。それはアレクだって簡単に信じられない話だ。ガセネタと疑うのも無理は無い。





「海底ダンジョンなんて聞いた事ない。ただの見間違いとかじゃないの?偶々海底にダンジョンっぽく見えるオブジェや建物が沈んでいた、とか」

「いや、先行調査として入った冒険者パーティーの報告によると、罠も盛り沢山、魔物もうじゃうじゃいる立派なダンジョンだったらしい。投影の魔道具で撮影された映像もある」

「えぇー……」





まさか海底にダンジョンがあるとはね…。しかも僕達が通るかもしれない海域に。流石のアレクも予想外の出来事だ。どうしたものか。





____まぁ多分攻略する羽目になるんだろうな。




ロナルドが態々アレクを呼び出してダンジョンの話をしたという事は、アレクにダンジョン攻略を依頼するつもりなのだろう。ダンジョンというのはただでさえ何が起こるか分からない危険地帯。加えて海底ともなれば、地上のダンジョンとも勝手が違う。どう考えてもSランク向けの依頼だ。



今のアレクはルミナと同じDランクだが、実力はSランククラス。ダンジョン攻略は早さが肝心。放置しておくと周囲に被害が出る。グライスからもそう遠くないシーガイドで発見されたダンジョンであれば、その被害はグライスにも及ぶかもしれない。ロナルドとしてはさっさと攻略する為にも、アレクに協力を仰ぎたいのだろう。



面倒だが、無事出国する為でもあるし仕方ない。それにルミナと海中デートというのも中々乙だ。水の中でも呼吸が出来る様になる魔法薬を大量生産しないと。






「良いよ。ダンジョン攻略、請け負っても」

「本当か!?」




ロナルドがガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がる。その顔は驚き8割、喜び2割といった感じだ。




「助かる。シーガイドのギルドから協力要請が来てたんだが、ウチのギルドで海底ダンジョンにも太刀打ち出来そうな奴はお前くらいしか居なくてな…」

「まぁ、僕としてもシーガイドに魔物が蔓延るのは困るしね。



それで?攻略の日時は決まってるの?参加者はどれくらい?ダンジョンの様子は?どうやって海底まで移動するの?魔道具の映像も見たい」

「待て待ていきなりグイグイ来るな」





アレクは行動力の塊だ。やると決めたからには即その目的に向かって動き始める。まずは情報収集から。ダンジョン攻略において情報は大事だ。作戦を立てるのにも役立つ。






ロナルドから情報を聞き出し、魔道具で撮影された映像も見させて貰った。確かに件のダンジョンは海底に存在していた。海の中にドーンと存在する建造物は異様な光景だった。古代の人間は何を思ってこんな所にこんな手の込んだ宝物庫なんて作ったのだろう。





ソレが発見されたのは偶然だった。ある商船が荷物を海に落としてしまい途方に暮れていた所に、海獣を従えたテイマーの冒険者が現れ、海獣に命じて荷物を回収してくれた。その時、冒険者はテイムしている海獣から『海底に変な建物があった』との話を聞いた。詳しく聞いてみれば、建物内に魔物の影も見えたという。



そんな事ないと思いつつも、もしかしてダンジョンでは、と思った冒険者は念の為ギルドに報告。ギルド側も半信半疑ながら念の為調査隊を募り、派遣。調査隊の報告によりダンジョンである事が確定した、というのが発見までの経緯だ。




調査隊の報告によれば、ダンジョン内では何故だか呼吸が出来た。しかしそれでも海の中という環境、長い間発見されずに放置されていたせいで魔物が多い事などの理由から万全のチームを組んで攻略に当たる事が決まった。そしてシーガイドからそう遠くないグライスにもダンジョン攻略の協力要請が来た。




元冒険者として、ロナルドはダンジョン攻略の危険を知っている。ましてや今回は海の中という未知の状況。ダンジョン内は呼吸可能とはいえ、最低限、罠か何かで海中に放り出されてもどうにか出来る人間でないと難しい。そこで白羽の矢が立ったのがアレクである。






「今は攻略者を募っている最中だから、日時を含め、攻略について詳しい事はまだ決まってない。だがなるべく早い方が良いからな、いつでも出れる準備だけしといてくれ。



あと、今回は状況が状況なだけにSランクも招集されるだろうから、素性がバレない様に気を付けろよ。お前とそこそこ交流のある奴なら妙な事は考えんだろうが、そうじゃないヤツは手柄欲しさに密告する可能性も無いとは限らん」

「分かってるよ」





Sランクの人間は軒並み能力が高い。アレクの認識阻害を破る可能性もある。



アレクの強さを含め彼について知っている人なら、下手に刺激をして面倒な事になるのは御免なので、たとえアレクの素性がバレても見なかった事にするだろう。

だがアレクとてSランク全員と交流がある訳では無いし、逃亡中に新しくSランクが増えている可能性もある。彼らはアレクを知らないが故に、お尋ね者のアレクを密告したり、捕まえようとする事だって有り得る。十分に注意が必要だ。






「ルミナにもよく言っておくよ」

「……ん?何でそこで嬢ちゃんが出てくるんだ?」




不思議そうに首を傾げるロナルドに、アレクは至極当然とばかりに言った。




「だって僕がダンジョン攻略に行くなら当然ルミナも一緒でしょ」




「何を当たり前の事を」とでも言わんばかりに澄んだ目で言い切るアレクに、ロナルドは「あー…」と気まずそうな声を漏らす。





「………今回、嬢ちゃんは留守番な」

「は?」

「いや、いくらお前さんが一緒だからって、流石に危険だろ。“聖女の力”があるとしても、流石に今回のダンジョン攻略は嬢ちゃんには厳しいし、お前だって嬢ちゃんに付きっきりって訳にはいかんだろ。


足手まといが1人でも居るとチーム全体に迷惑がかかる。最悪、全滅だって有り得るんだ。ギルドマスターとしても嬢ちゃんの同行は許可できん」





「……………やっぱり今回の依頼は受けない。そっちで勝手にやって」

「待て待て待て!やるって言っただろお前!!」

「だってルミナが一緒じゃないならやる気出ないし」

「お前冒険者やってた頃は別に嬢ちゃんと一緒じゃなかっただろ!」

「あの頃は強くなるのが目的だったからどんな依頼も受けたけど、もう十分強いし、ルミナと一緒の依頼以外受けたくない」





明らかにアレクのテンションが下がった。ロナルドはガシガシと頭を搔く。




「(コイツどんだけ嬢ちゃんと一緒に居たいんだよ。どうすっかな…。嬢ちゃんも同行させる___のは流石になぁ…。嬢ちゃんには危険過ぎるしな)」




グルグルと頭を巡らせるロナルドに変わって、今までずっと黙って彼の側に控えていたメリアンが口を開く。




「ルミナ様が一緒の方がまずいと思いますけど」

「どういう事?」

「王宮の狙いはあくまでも聖女であるルミナ様。冒険者が集まる空間に彼女を連れて行って正体がバレる方が厄介でないですか?」

「あぁ、それはそうだね…。でも、どちらにせよ依頼を受けなければいい話だ」

「しかし、シーガイドの海域にダンジョンがあるのは貴方としても困るのでは?」

「別に。出国するのはシーガイドじゃなくても構わないし」

「あら、出国するなら早い方が良いのでしょう?シーガイドなら連絡が来たら直ぐに向かえるわ」

「それはそうだけど…」

「それに、今回の件、ルミナ様が聞いた私達に協力するように言うのではないですか?彼女は私達に大変世話になってると感じているようですし、性格的にも困ってる方を放っておけないでしょうし。ロナルド様直々の依頼で、尚且つ放っておいたらここグライスにも被害が出るかもしれないとなれば、彼女は“攻略して欲しい”と思うでしょうね」

「うっ………」





アレクが言葉に詰まる。今回の件を知ったルミナがアレクに向かって「協力してあげて」とお願いする光景が容易に浮かんだ。たとえ今断っても、ルミナがお願いするのならアレクはダンジョン攻略に赴くだろう。






「更に言えば_____お世話になってるギルドからの依頼を自分の事が原因で断ったとルミナ様が知れば、彼女はどう思うのでしょう?」

「……………分かった。やるよ。やれば良いんでしょ」





このまま断ったらメリアンは今回の事をルミナに言うだろう。そして話を聞いたルミナがどう思うか。万が一にも幻滅されたらもう生きていけない。そうでなくても、自分のせいで依頼を断ったと知れば気に病むだろう。ルミナの為にも受けるしかない。






盛大なため息を吐き、アレクは渋々ながら依頼を受けた。

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