3 探索
「下手打つと組が割れちまう。口のうまさじゃ近藤さんは勝てねぇ」
「副長なら勝てるのでは?」
「おれはその前に全く人望がねぇ、まぁそれで良いんだがこういう時に困るな」
結構ちゃんと自分の事が分かっているのがこの副長だ。新撰組の「要石」はこの人である。組織を守る為なら問答無用で粛正を行う。法度に背く者には容赦が無い。だがこの人はとても優しいのだ。優しく厳しい人なのである。矛盾しているようだがそう言う人なのだ。
ソヒトニタテトホコヲヒサグモノアリ・・・
何でも通す槍を持ち、何も通さない盾を持っているのだ。それが新撰組副長・土方歳三という人間である。
「あと平助をそれとなく見張ってくれ」
「藤堂副長助勤ですか?」
「あぁ、近藤さんのお気に入りだけどな、剣の筋がいけない」
「なるほど、そういえば北辰一刀流でしたね」
同門というのは血の繋がりより強い。確かに土方副長の懸念は当たっているかもしれない。
「それと斎藤君にもその件で色々頼んである」
「わかりました、こちらからは何もしません」
「そうしてくれ」
「では失礼します」
土方副長の部屋を出て内門を通り、北の門から出ようとした所で沖田に声をかけられた。
「土方さんの所ですか?」
「はい、世間話を少々して参りました」
「それはそれは」
「ところで沖田さんは副長に何か用ですか?」
「いえいえお忙しい土方さんの邪魔をしたら、怒られてしまいますよ。ちょっと買い物に行くところです。」
「どちらまで?」
「音羽さんの近くです」
「音羽の滝に物売りですか?初めて聞きますが?」
「ええ、斎藤さんから聞いた刀屋が、今日あたり音羽の横の釈迦堂の方に居るらしいので」
あぁ、聞いた事がある、斎藤さんは掘り出し物の刀をとどこからか買ってくるらしい。かなりの目利きと評判だ。
「それは面白そうですね」
「島田さんも行きましょう」
「ぜひご一緒させて頂きます」
即答した。沖田を見ると満足げである。
副長室を出て直ぐ沖田が待っていたと言う事は、まだ何か伝えることがあると言う事だろう。
斎藤さんあたりと合流するかも知れない。
清水寺まで沖田と一緒に歩く。
沖田は刀屋の話をしてくれた。
その刀屋は幽霊のよう顔色で、怖すぎて客が寄りつかない。毎回6本ぐらい持ってくるが、なかなか面白いものを持って来るそうだ。
沖田も池田屋の数ヶ月前に脇差を買ったそうだ。
今度は何があるか楽しみらしい。
清水寺の舞台を過ぎ音羽さんに向かう。
今日は人が少ない。
左に曲がり釈迦堂に行く。




