ワン 18
「リカちゃん! 沙彩さんもいることだし、その辺で……」
「……。お邪魔します!」
リカは蒼をどかすようにして部屋に入っていった。手に持っていた袋は蒼の胸に押し付けて。
エリは困った顔をしながら私の前に立つと頭を下げた。
「ごめんなさい。リカちゃん、今日を楽しみにしてたから……」
「いいんですよ! 気にしないで下さい!」
「さーや、ごめんね? 気にしちゃだめだよ? リカはああだけど、悪いやつじゃないんだ」
「うん、大丈夫」
私の慰めの会が行われていると、もう一人階段から姿を現した。金髪に黒のインナーの髪型にジャラジャラしたチェーンをズボンにぶら下げている男の人だった。
「カズヤ!」
「よお! 蒼……と。こちらが沙彩さんか! お綺麗ですね」
「あ、こんにちは。ありがとうございます」
握手を求められて少し迷ったが、受け入れることにした。カズヤは目を細めながら腕をぶんぶん振る。
「もう終わり!!」
繋がれた手を引き裂くように割り込んだ蒼。怒っている蒼にカズヤはおかしそうに笑った。
「ぞっこんだな、蒼!」
「分かったならもう触らないで!」
「へいへい。さーせんした」
参ったかというような両手を上げたポーズのカズヤ。それを見てクスリと笑うエリ。
「全くもう! さーやも拒否しなきゃ!!」
「蒼の友達だと思って…」
「油断は禁物だから!!」
私の袋を奪い取り、自分が持ってる袋と合わせて片手で持ち、もう片方の手で私の手を握った。そして部屋へと引っ張っていく。
「ちょっと! 蒼!!」
玄関に入ると、急いで靴を脱いだ。すでに廊下を歩いている蒼に引かれ、転びそうになりながら奥へと進んだ。
生活感がない部屋だった。キッチンなんてピカピカで汚れ一つないし、部屋にはソファとテーブルとベッドしかなかった。そこに一つ、飾られたラブリーなフォトフレーム。明らかに浮いていたそれをリカが睨みつけていた。
「うおー! これが蒼の部屋か!!」
後から入ってきたカズヤが見渡しながら呟いた。初めて招いたのかな。
「リカちゃん! ……どうかし…」
「……」
エリがリカに話しかけても写真を見続けていた。
テーブルの上にお酒やお菓子、おつまみが広げられる。それだけで蒼のテーブルはいっぱいだった。
「全員集まったことだし始めましょうか!」
カズヤがドカッとソファに座って声をかける。その隣に蒼、蒼の隣に私を座らせた。向かい側がリカとエリだった。
「リカ!」
蒼に名前を呼ばれて顔を上げる。
「写真が素敵だからって見過ぎだから」
「……いい写真だったから」
「だよね! 僕もお気に入りなんだ~」
リカは蒼には笑って見せたが、蒼がリカから目を離した途端、私に視線を合わせて睨みつけてきた。
「……」
これは大学生の集まりに割り込んだからじゃない。リカは蒼が好きなんだ。だから蒼に気に入られている私が気に入らないんだって分かった。
それはエリも分かっているようで、心配そうな顔をしながら、リカを見守っていた。
蒼ってモテるんだな。大学でモテモテなんだろうか。告白なんかされちゃったりするんだろうか。
横から肩を抱かれる。甘い香りが強くなる。
「僕の想い人のさーやです! 仲良くしてね!!」
「では……乾杯!」
カズヤが声をかけると、一斉に缶と缶を鳴らす。一口分以上胃に流すと、それぞれ食べたいものに手を出し始めた。
「さーや! みんな経済学部の学生なんだ」
「そうなんだ! 蒼が経済学部って意外!!」
「……どういう意味!? ねぇ!! さーや!!!」
「どういう意味でしょうね?」
「バカにしてるでしょ!? 僕だって本当は「蒼」」
リカが蒼の言葉を遮る。手にはおつまみがあった。
「これ美味しいよ! 食べる?」
「マジ!? ……さーや、これ美味しいんだって! 食べさせて?」
「自分で食べろよ」
「いやだ!! 食べさせて!!!」
「自分で食べられるでしょ!? 子どもじゃないんだか「蒼! あたしが食べさせてあげる」」




