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ワン 16

「申し遅れました! 私は恋人探しのまっすん。この広いショッピングモールで仲のいい恋人を探し、質問をして歩いています」

「恋人探し……仲のいい恋人……!」


 蒼は嬉しそうに口元を緩めた。恋人じゃないだろうが!


「どんな質問かと言うと、もっと仲が深まるような質問です!」

「もっと仲が深まる……!」


 うーわ……めっちゃ蒼の目がキラキラしてるよ……。この瞬間ではあの世界一の宝石すらも負ける輝かしさかもしれない。


「最後には記念撮影として一枚写真を撮ってプレゼントしてます!」

「やる! ……やります!!」

「おー彼氏さん、やる気満々ですね! 彼女さんも彼氏さんに負けずに頑張っていきましょう!!」

「だから、彼女じゃ……」

「さーや! 楽しみだね!! さーや!!!」

「……う、ん……」


 あー…輝きすぎて、やめようなんて言えない。楽しそう……! 心底楽しそう……!!


「質問は三問あります。いいですか?」

「いえーい!」

「……」

「では、一問! 彼氏さんが好きな彼女さんの下着の色は!?」

「「……え?」」

「ほらほら! 照れてないで答えて!!」


 ちらっと私を見て、耳まで赤く染めている蒼。下着の色を想像しながら見るのやめろ!!


「……赤?」

「おお! 赤ですか!! 情熱的な色を履いてらっしゃるのですね」


 おっさんもセクハラで訴えるぞ!


「ちなみに素材で好きなものがあったりするんですか?」

「……そ……素材」

「例えば! レースだとかシルクだとか、あるじゃないですか!!」

「シルクかな……」

「私と一致しましたね! 気が合いますね!!」


 誰かー…この変態野郎どもをどうにかしてくれ……。


「二問! 彼氏さんが好きな彼女さんのショーツの形は!?」

「……ショーツ……」

「フルバックやハーフバック、Tバック、Gストリングなどあります!」

「……ぐはっ……」


 鼻を抑え始めた蒼。鼻血か…! エロすぎて鼻血でも出たのか?!


「さあ! どれ!!」

「……ハーフバックで」

「おお! 全てを晒すのではなく、見えるか見えないかをギリギリで攻めるタイプですね!!」

「……っ……!」


 焼けそう! 蒼の顔が赤過ぎて燃えてる!!


「彼氏さんの好みが分かっていただけましたでしょうか? それとももう知ってらっしゃいましたか?」

「……知らないです」

「お待たせしました! 今度は彼女さんに答えていただきます!」

「……はい……」


「三問! 彼女さんの好きな彼氏さんのパンツの種類は!?」

「ボクサーパンツ」

「え」

「おおっと! ぴったりとし、短めなのが好みなんですね!!」

「……そうだったの……」

「では、質問に答えていただけたところで写真撮影に移ります!」


 まっすんさんは看板を端に置くと、ポケットの中からカメラを取り出した。説明によると撮るとすぐに写真が出てくるらしい。


「撮りますよ! くっついて!!」


 蒼の隣に立つと、蒼が肩を抱いてくる。頭もこつんと当たった。


「……近い」

「近くしてるからね」

「……」

「行きますよ! 三、二、一……」


 ジーという音と共に写真が出てきた。写真は二枚で、それぞれに渡された。


「ありがとうございました! またショッピングモールへ遊びに来てくださいね」

「「ありがとうございました!」」


 まっすんさんは、看板を持って次の恋人を探しに行った。


 私たちの手の中には写真が残った。蒼はじっくり舐めるように眺めている。

 私は不思議な感覚だった。出会ってそんなに時間が経ってない蒼との写真。自分が思ったよりも、蒼の隣にいる私の顔は楽しそうにしていたから。


 恋人と言われれば、そう見えるかもしれない。


「蒼~そろそろ帰るよ~」

「うん! ……はい、さーや!!」


 がさごそと袋を漁り、出てきたのはフォトフレーム。それと同時に渡されたのは白い長細い箱。蒼を見上げると口角を上げて笑う。


「開けてみて」


 白い箱の中にはピンクの箱が出てきて、開いてみるとさっき当てられたネックレスが留められていた。いつの間にか買っていたのか。


「似合ってたから」

「……ありがとう」

「つけてあげる!」

「え、いいよ」

「いいから!」


 私からネックレスを受け取り、蒼が私の首へと手を回す。


「……なんで正面から? 背中側からやった方が早「いいから!!」」


 抱き着かれるような体勢でネックレスを留めようとしている蒼。なかなか輪の中に通せないらしく、蒼の腕の中に納まる私。


 甘い香りがする。蒼の吐息が、耳や首筋にかかる。


「んっ……」

「……」

「……まだ?」

「もうちょっと……!」

「本当に留めようとしてる?」

「失礼だな! やってるよ」

「…………自分でやった方が「できた!!」」


 蒼の体が離れていく。首には光を纏ったネックレスがあった。


「かわいい……」

「さーやがね」

「……」

「……僕もさーやに首輪されたい」

「……」


 して、とお願いしてくる蒼を無視した。でも、確かに私って蒼からもらってばかりだなって思った。水族館ではキーホルダー、今日はネックレス。なにか蒼にプレゼントした方がいいのかな。


――ピリピリピリ


「あ、電話だ。ちょっと出てくるね」

「……うん」


 首輪が欲しいという蒼を本気にして想像をしてしまっていたところで、蒼が少し私から離れる。


「もしもし?」


 蒼にどんなものをあげればいいのかなんて考えていたから聞こえなかった。


「ああ、順調だよ。すぐ落とせそう」


 蒼がそんな会話をしているのを知る由もなかった。

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