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雨の神は名づけの巫女を恋ひ求める  作者: 遠野まさみ
贄の娘

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贄の娘(7)

泰三は普段、新菜がそこに居ることさえも認めていないようだった。衣食住は勿論別だが、例えば廊下掃除をしている新菜の傍を通りかけても、目を合わせてくれたこともない。新菜が市子に折檻を受けていても、そ知らぬふりで通り過ぎる。新菜を認識しているという点では、市子の方がはるかに新菜を認めてくれていた。


市子などから新菜をいつまで家に置いておくのかと聞かれたときだけ、父は『時が来た場合の為だ』と、新菜を冷えた目で見た。その眼に底知れぬ恐怖を抱いてきた新菜だったが、まさか生贄に出すためだったとは思わなかった。


いつも『時が来た場合』のことを考えていた。その時が来たら、新菜も鈴花と同じように巫女の娘として、なにか神様のお役に立つのだと思っていた。その希望が打ち砕かれる。


義母は兎も角、泰三が何故新菜を排するのか。母とは、天雨家が巫女たる女子をもうけようとした所以で結ばれた政略結婚だったからなのか。新菜につゆほどの愛情も持たなかったのだろうか。


(……お父さまは、この時の為に私を生かしていたのね……)


縋る術が何処にもない。暗黒の底に落ちていくような気持ちだった。


「まあ、お義姉さま! 漸く天宮家の一員として役に立つときが来たのですね。妹として、お祝い申し上げますわ。せいぜいご立派にお役目を果たしてらしてくださいましね」


鈴花が文字通り鈴を転がすような声でさえずる。今までもさしてあるとは思っていなかったが、この家に、もはや新菜の為の居場所など一片たりともないのだと確信した。新菜は泰三に向かって深くこうべを垂れる。


「……お役目、拝命いたしました……」


ふふふ、と義妹が嘲笑っていた。


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