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雨の神は名づけの巫女を恋ひ求める  作者: 遠野まさみ
終章

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終章(1)



御殿では天宮家に対する裁きが行われていた。古来より巫の血筋を巫女に出すべきとされていたところを違えた各天宮家を、天帝は次々と断罪した。当然、父・泰三と、巫の血を引かないのに舞宮に上がっていた鈴花に対する裁きもその中にあった。


「陛下! 娘の鈴花は新菜が天雨神さまの真名を書き換えるまで、確かに天雨神さまと契約し、雨を賜ってきました! 鈴花が御前に上がったことは間違いではございません!」


「陛下、わたくしからも申し上げます! 確かにわたくしは三年前まではミツハさまと契約できておりました! それが何故、今、罪に問われなければならないのですか!?」


両者とも手を後ろ手にくくられ、天帝の前に体を押さえつけられていた。


「ええい、黙れ! 創世からの理を違えただけではなく、天雨神さまにご負担を強いたその所業、天宮家に名を連ねる者として万死に値する! これ以上の弁明は聞かぬ! 二人を引っ立てよ!」


警備士によって引きずられる鈴花は、鬼の形相で怒号した。


「お義姉さまがミツハさまをたぶらかしたから全てが狂ったんだわ! お義姉さまさえ介入しなければ、私の宮巫女としての地位は盤石だったのに!」


それでも二人の叫びが届かなくなると、天帝は御殿の天井を見上げ、その先に通じる宮奥を思った。


(創世の時代より途切れていた、神の血が混じる帝がまた、この世に生まれる……。神と人を繋ぐには、やはりそれが必要だったのだ……)


神を視、神の声を聴き、世を治める帝として、宮巫女と共にこの世を安寧に導くために、天帝は生まれ来る新たな命に期待を託した――――。









一方、六角宮。


天神五柱の前に、ヤマツミとナキサワが坐している。


「ヤマツミ。天末の理を覆そうとした企みは、六角宮まで届いてます。あなたはその罪を認めるわね?」


アマサト神の言葉に、ヤマツミがぐっと黙る。口を真一文字に結び、膝の上で握っていた手をぎゅっと握りしめる。


「ヤマツミさま。どうやっても僕たちは逃げられません。認めてしまいましょうよ」


促すのはナキサワだ。懺悔を勧めるナキサワに、お前は悔しくないのか! とヤマツミが叫んだ。


「神として地の民からの信仰を集めながら、その力の源を己の身に宿せない悔しさを、お前は持たぬというのか!」


雨水の覇者になりたい、とヤマツミは言った。堤の主であるヤマツミは、その水源をヤマツミに持つナキサワに頼られるうちに、ナキサワの分も水を欲する欲が大きくなったのだろう。そういう意味では、ヤマツミの凶行の原因の半分はナキサワにある。ナキサワも反省しなければならない。


「その身の祖をよく考えなさい、ヤマツミ。そもそもあなたは人に生かされての存在。人が天を支配することは出来ないわ。つまりあなたは超えてはならない道理を覆そうとしたのよ。改めなさい」


「ふっ! 民の信心も薄い天神がいつまでも強がれるものか! いずれ時代は我らのものとなる!」


「そうはならないわ。新菜が言霊の力で祈り請いましたからね」


ミツハと契約しただけではなく、広く天末の神々へ祈りをささげた新菜のことを思い出す。一切の記憶を代償に、彼女は力を籠めて願った。であれば、祈りの相手は約束を違えられない。徐々に……、徐々に世の中が変わっていくのだ。天末の神と、平和を望む地の民の間で。


「巫の力をすべて出し切って、彼女は祈った。彼女の脳裏に残るものは何もないでしょうけれど、私たちは彼女の願いを受け継いでいかなければならないわ。……それが、言霊というものでしょう?」


言葉の力で約束を架す。神は巫の言葉を違えることは出来ない。ヤマツミもそのいのちで理解しているから、アマサトの言葉に押し黙ったまま反論できない。


「民に祈りを請うたあの子の願いは、廻り巡ってあなたの堤も潤すでしょう。あの子の祈りはあなたの為でもあるのですよ、ヤマツミ」


自分に廻ってくると言われると、もうヤマツミには何も言えなかった。ヤマツミは黙って水宮を見つめた……。



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