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雨の神は名づけの巫女を恋ひ求める  作者: 遠野まさみ
名づけの巫女

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名づけの巫女(7)



「でかした、ナキサワよ! これで万事ことが進む」


ヤマツミの許に戻ったナキサワは、しかし鱗珠をヤマツミに渡そうとしなかった。


「ヤマツミさま。これはミツハさまにお返しして、改めて鈴花と契約を結んで頂くよう、お願いしましょうよ。新菜さんがミツハさまから身を引くことを決意してるんだ、これを使わずとも、上手くやれる方法が、我々にはあるのではないですか?」


「なにを言う、ナキサワ。お前はこの三年で学ばなかったのか。常にミツハ殿を窺いながら過ごした、この三年を」


雨が安定しなくなって、堤の水も井戸の水も、常に潤沢とは言えなかった。それでも二人には地の民に水を届ける使命があった。枯れた井戸や堤は忘れられる。それは何としても避けなければならなかった。


「儂は雨水あめみずの覇者となりたい。その為には鱗珠がなければ……!」


ヤマツミがナキサワに襲い掛かり鱗珠を奪う。普段の好々爺然としたヤマツミを知っていただけに、ナキサワは油断してしまったのだ。老練たる神力を当てられて、体にドスンと衝撃を受け、倒れる。


「う……っ!」


「ナキサワ、邪魔するでないぞ! すべては人間の女子に心を奪われたミツハ殿の愚行を償う為じゃ!」


体の上から大量の水圧を感じるほどの神力の塊に圧され、動けないナキサワを置いて、ヤマツミはその場から消えた。


(ヤマツミさまを追わないと、天末あますえの主従が崩れる……。お止めしなければ……!)






御前には鈴花だけが控えていた。日はとうに御殿の真上。揃わぬ巫女に、天帝は焦れた。


「もう一人はまだか。日は天をまたいたぞ」


「天帝陛下。恐れながら、義姉は大口を今になって後悔したのですわ。天雨家の宮巫女はわたくし一人でございます」


鈴花がぬかづいて言葉を発する。天帝は疑問に眉宇を寄せた。


「しかしおぬしは天雨神さまのお声を賜れなくなったであろう」


「はい。義姉がわたくしの功績をねたんで仕組んだのですわ。そのたくらみも、本日まで。わたくしは堤の神さまからのご援助あって、天雨神さまへ声を届けることが出来るようになったのでございます」


「ほう。では早速やってみよ」


天帝の言葉に促され、鈴花は舞宮で一歩前に進み出た。手には鱗珠。両腕を大きく広げてヤマツミさま、と呟くと、宮の天井を見る。宮に降りてきたヤマツミが鈴花に憑依し、鈴花の喉を震わせた。


『我はヤマツミ。雨雲従う龍神に宣る。天末同体となり、地に雨を。堤に潤いを。井戸に水を』


すると天を黒々とした雲が覆い始めた。



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