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雨の神は名づけの巫女を恋ひ求める  作者: 遠野まさみ
名づけの巫女

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名づけの巫女(3)

家をなくして可哀想な新菜を留め置こうとするミツハは、しかし民から見限られては新菜が与えた命だって、いずれ枯れてしまう。新菜はミツハに対してもこうべを垂れた。


「お願いです。必ず……、必ず巫女として御殿に戻ってまいります。ですからミツハさま、お願いします」


頭を下げる新菜に、アマサトが口添えする。


「下界に降りたら、舞を舞いなさい。舞宮には私の宮巫女をつてに全宮巫女を集めました。しっかりとミツハの疑念を払しょくするのですよ」


「はい。絶対に」


アマサトに対しても約束したのだ。ミツハの名を思い出し、巫女になると。


アマサトは微笑んで新菜の言葉に頷いた。ミツハも最後には折れた。


「……君はもう、羽化した蝶なんだね。だが、必ず戻って来てくれ。君が傍らに居なくては、貰った命さえ色あせてしまいそうだ」


ミツハの表情からにじみ出る悔しさが、新菜の心を揺さぶる。新菜に我欲がないなんて、ミツハの見立て違いだ。だって新菜はこんなにもミツハのことを欲している。でもその気持ちは一方通行で、決して交わることのない感情だから、伏せておくことが出来るだけだ。見込みのないことは諦めるのが吉。それは今までの人生で理解している。新菜は口に笑みを作って、ミツハに応えた。


「はい。必ず」


むなしいだけの約束。安堵したミツハの様子さえ、今の新菜にはひび割れた心の傷を刺激するだけにしかならない。


それでもミツハに通じていられるようにと願いを掛けて、ミツハと一緒に織った雨の衣を身に着ける。舞宮で天神を呼ぶには不必要だが、心の寄る辺にしたかった。


アマサトに促されて水宮を出る。ミツハたちは門まで見送ってくれた。


辛い。母のことを罵倒されたときでも、こんな辛さは覚えなかった。


(離れたくない。でも……)


新菜は振り向かずに六角宮から下界に降ろされた。



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