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雨の神は名づけの巫女を恋ひ求める  作者: 遠野まさみ
姦計を祓う

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姦計を祓う(9)




ひふみ 

よいむなや 

こともちろらね

しきる

ゆゐつわぬ 

そをたはくめか

うおえ

にさりへて 

のます

あせゑほれけ




脳裏に浮かぶ、鯉黒の首の傷。ああして昔からずっと、故郷の村に対する恨みを内包していた、可哀想な犠牲者。


鯉黒の人間(自分)を蔑む目や、沈んだ娘のうつろな目を思い出しながら、新菜は唄う。




ひふみ 

よいむなや 

こともちろらね

しきる

ゆゐつわぬ 

そをたはくめか

うおえ

にさりへて 

のます

あせゑほれけ




誰もかれも、人に命を狂わされませんよう。





ひふみ 

よいむなや 

こともちろらね

しきる

ゆゐつわぬ 

そをたはくめか

うおえ

にさりへて 

のます

あせゑほれけ




新菜を締めあげていた渦と、天に上る禍々しい光を放っていた渦が、薄れていく。




ひふみ 

よいむなや 

こともちろらね

しきる

ゆゐつわぬ 

そをたはくめか

うおえ

にさりへて 

のます

あせゑほれけ




とぐろを巻いていた恨みの念は薄れゆき。


最後の唄に、パリンと砕け散った。





念の渦が割れて宙で放り出された新菜を、ナキサワが抱き留めた。


「新菜さん、見事な祓いだったよ……」


ナキサワは抱き留めた新菜をそのままに、渦の消えた月輝く空を見上げていた。


「君には人を救う力があるんだね……。あの娘は呪いを忘れて輪廻の道を辿った。君は素晴らしいことをやってのけたよ。これでヤマツミさまのまいた種がひとつ、消えた。しかし君の負った傷も深いな」


ナキサワが深刻な顔をして、新菜の腹の傷の出血を見る。そこへ首飾りが淡く光り輝き、傷を覆うと、すぅと傷を癒していった。


(今の気配は、ミツハさまのもの……)


「今の力はミツハさまだね」


不思議な気持ちになっていた新菜は、ナキサワに、やはりそうなのでしょうか、と問うた。


「私一人でやり切るつもりでしたのに、結局ミツハさまの助けを借りてしまいました……」


「花嫁殿を傷つけられたら、誰だって黙っていられないだろう。気にしすぎだよ、新菜さん」


そうだと良いのだけど……。新菜の心配は尽きない。


「これでミツハさまのご心痛を少しでも和らげられたのでしょうか……。帰ってみないと分からないので、何とも言えないです……」


「君に想われるミツハさまは幸せ者だ」


微笑んで言うナキサワに、そんなことない、と新菜は思う。


出会ってから助けられてばかりいたのだ。少し恩を返したくらいでは、ミツハの温情にはかなわない。


「そうかい? 僕はますますミツハさまが羨ましくなったよ」


どういう事だろう? 新菜が首をひねっていると、君、どうやって宮奥に帰るの? と尋ねられた。そう言えば、来るときはあの湖の祠を経由してここに来たけど、帰りはどうやって帰ったらいいんだろう。迷っていると、僕が送ろう、とナキサワが申し出てくれた。


「……ありがとうございます……。帰り道も確認せずに降りてきてしまいました。もしかしたらミツハさまのお気を煩わせたかもしれない……」


「はは、それは帰り方を示さなかったミツハさまの失態だね。おかげで僕は君を抱き上げることが出来るわけだ。それ!」


ナキサワはそう言うと、ひょいと新菜を抱え直すと、すいすいとくうを渡り、宮廷の御殿へ来たかと思うと御殿の天井を突き抜けて、六角宮に新菜を連れてきた。新菜の気配を察知したミツハが水宮から雲の橋を渡って出迎えてくれて、新菜はミツハに抱き締められた。


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