7. 36番力
『まぁ、俺の風貌はどうでもいいとして……。ザンツィル、よければスールイティ団に入らない?』
自分がそう言うと、ザンツィルは驚いた表情でこちらに視線を向けていた。盗みが上手いと噂れている程の腕前ならば、スールイティ団の仲間としてザンツィルを引き入れたい。
『……あんた本当にスールイティのリーダーなのか? 嘘ついてねぇだろうな?』
嘘をついていたのはザンツィルの方だろうと、呆れた表情でザンツィルを見ていた。
『本当本当、君みたいに嘘はつかないよ。もし、仲間になってくれるのなら、500万ゴルドの依頼を君に任せようと思ってるんだけど……なぁ〜』
『ご、500万ゴルド⁉︎』
目を輝かせながら満面の笑みでザンツィルはこちらを見ている。断ってくる様子はないので安堵していた。
どうやら上手く釣れたようだ。もっと報酬金の額を上げようか迷っていたが、500万ゴルドで釣れたのならば上出来だ。これ以上の金額は言わなくてもいいだろう。悩んでいるザンツィルの返答を待つことにした。
『……』
『断るなら他の盗賊に任せるつもりだから。500万ゴルドはその盗賊の物になるけど』
ザンツィルを焦らせて返答を急がせる。
『こ、断ってねぇだろ!』
ザンツィルはスールイティ団に入るだろうと確信し、小さな笑みを浮かべた。
『……スールイティに入ったら、オレは何をすればいいんだよ。審判のコインは持ってるけど』
……審判のコイン? 驚いた表情でザンツィルを見ていた。
『えっ……誰かから審判のコインを盗んできたの?』
盗んだ審判のコインのことを言っているのだろうと思っていた。だが、番力を使える者からどうやって盗めたのだろう。もし盗めたのならば相当な腕前だ。
ザンツィルは小さく首を横に振っている。
『……どういう事? まさか……君は審判のコインに選ばれているのか?』
『オレは、"36番の審判のコインに選ばれている"みたいなんだよ。だから、番力っていうのが使えるみたいで、手を使わなくても物が動かせるんだ』
『……』
番力が使える盗賊……是非ともスールイティ団の仲間として欲しいところだ。世界財産の一つでもある審判のコインも手に入れられる。何が何でもザンツィルを逃すわけにはいかない。
『凄いなぁー、手を使わなくてもいいなんて羨ましいね。ザンツィルにはさ、他の盗賊団達のアジトに侵入して高額な宝を盗んできてほしい。それだけ!』
『……それだけって、かなりリスクだってあるじゃねぇかよ。どうしよっかな〜』
『いいよ、別に嫌なら。断ったっていいんだからさ』
焦りを見せてはいけない。盗賊ならば、すぐに気付かれてしまう。