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36.Rs  作者: 川之一
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6. 本名?


 こちらを睨んでいる従業員の青年に小さく微笑んだ。

『チッ、離せって‼︎』

盗みが上手い者という情報しか聞いていなかったので、まさかこんな若者が噂されていた者とは思わず内心は驚いていた。自分と歳が近いように見えるが……。


 『君の名前はなんていうんだ?』

『教えませ〜ん。てめぇなんかに教えねぇよ! ヴァ〜カ』

『馬鹿って……酷いなぁー』


 ──ギリッ


背後に回している左腕を強く引っ張る。

『いでででででで‼︎  やめろよ、痛いだろがぁああ‼︎』

先に挑発してきたのは従業員の青年だ。名前を教えてくれるまで左腕を強く引っ張り続ける。痛みに耐えきれず名前を教えてくれるだろう。小さな笑みを浮かべたまま、無言で更に引っ張り続ける。


 『や、やめろって‼︎  名前を言えばいいんだろ⁉︎  "ザンハール"だよ、ザンハール! それがオレの名前だ‼︎』


 『本当にザンハール?』

従業員の青年の目が泳いでいることに気が付く。従業員の青年は恐らく盗賊だろう。何を言っても信じずに疑った方がいい。自分が本名かどうか聞いてから、従業員の青年の僅かな変化も見逃さずにいた。

『本名だよ。このレストランの料理長に聞いてみれば?』

『聞きたいけど、君の腕から手を離すと攻撃してきそうでさぁ』

『そ、そんな、しないですよぅ……』

何かしてくるのは間違いない。ナイフで攻撃してくるか、蹴ったり殴ったりしてくるか。従業員の青年の頭から右手を離すわけにはいかない。


 『君の本名を教えてほしいなぁ〜。盗賊の君に高額な依頼を頼みたいのに……』

従業員の青年の目つきが変わった。やはり、金の話には興味があるようだ。このまま本名を聞き出そう。

『あんたが依頼を? オレに?』

『うん。でも、君を信頼できないと……ちょっとねぇ』

『……』

悩んでいるのか従業員の青年は険しい表情をしている。もう嘘を吐いていたことがバレバレだが。


 『……オレの名前を教えたら、あんたも教えろよ』


 どうやら、上手く従業員の青年を騙せたようだ。

『もちろん!』

自分の笑顔を見ると、従業員の青年は大きなため息をついた。


 『"ザン……ツィル"。オレの名前だ』


 『ザンツィルかぁ。俺はライメゼ。スールイティ団のリーダーだ』

スールイティ団と言った途端、ザンツィルの表情が変わった。自分の言ったことが信じられないのだろう。


 スールイティ団は、盗賊ならば一度は聞いたことがある有名な盗賊団の一つ。


 再びザンツィルは大きなため息をついていた。

『ライメゼさん、だっけ? 嘘はやめてくれよ。あんたがスールイティのリーダー? 全くリーダーって風貌じゃねぇけど』


 ……本当に失礼な事ばかり言ってくる。


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