3. レグモナ
慌ててダラメットが自分の方へと駆け寄ってくる。
再び椅子を回転させ、ダラメットに視線を向けた。ザンツィルがスールイティ団から抜けることに焦っているのか、ダラメットの顔色は真っ青になっていた。自分も疲れてしまったのか小さなため息をついてしまう。
『ライメゼ、ザンツィルは何も悪くないんす‼︎ あんなに怒るのも俺が……』
『ダラメット、気付かない? 彼、俺達を一度も仲間だと思ったことないと思うよ』
『えっ』
驚いた表情のままダラメットは何も答えない。
ゆっくりと目を閉じた。
──三年前、東地方にある"レグモナ"という街で初めてザンツィルと出会った。
盗みが上手い者がいるという噂を聞き、レグモナに訪れ捜し出してスールイティ団に入ってもらおうと思っていた。自分が高価な宝石を持っているという噂を流せば盗みにくるのではと考え、レグモナの高級レストランで待ち構える。金持ちだと思わせなければならないので、黒色のスーツに毛皮のロングコートを纏い、酒場ではなく高級レストランを選んでいた。
〈さてと、どんな人物なのかな〜。盗みが上手いのなら是非ともスールイティ団に入ってほしいんだけど……〉
──コンコン
『?』
誰かがドアをノックしている。今いる部屋は本来は十人用の個室なのだが、一人で使わせてもらっている状況だ。ちなみに十人分の個室料金は既に支払っている。
『料理をお持ちしました。入っても大丈夫ですか?』
どうやら、レストランの従業員のようだ。料理を注文していたのをすっかり忘れていた。
『どうぞー』
──ガチャ
〈ん?〉
従業員の青年に視線を向ける。黒色のショートヘアーに前髪がかなり長く両目が隠れてしまっていて顔がよく見えない。レストランの制服を着ているので、従業員であることは間違いないと思うが……何故だか違和感を感じる。左手にはステーキが載った皿を持っていた。
『あの、料理をテーブルに置いてもいいですか?』
『うん、いいけど……君、もう少し前髪を切った方がいいよ。料理に髪の毛が入ったりしたらマズイだろうし』
『……』
何故か青年は黙ってしまった。注意されて怖気ついてしまったのだろうか。高級レストランなのに、このような身だしなみでも注意をされないとは……。
〈うーん……まぁ、いっか〉
小さなため息をついた。
『料理をテーブルにどんどん置いていってもらっていいかな。俺、ちょっと電話を……』
外で待ち伏せている団員に様子を聞く為、電話をかけようと思い、座っていたイスから立ち上がった。
『電話をする前に、早めに飲み物を選んでくれませんか?』
従業員の青年はこちらをジッと見ている。