2. 責任
自分がザンツィルを睨みつけると、ザンツィルもこちらを睨みつけてきた。何故、自分が怒られなければならないのかと考えているのだろう。ダラメット一人を責めるのではなく、皆が任務を失敗したことを反省しなければならない筈なのに、ザンツィルは責任を全てダラメットに背負わせようとしているように感じた。
ダラメットは張り詰めた空気に気が付いたのか、自分とザンツィルを焦った表情で交互に見ていた。
『喧嘩はやめようっすよ! リーダーすまねえっす、自分がミスした所為なんす……三人が……自分の所為なんす』
眉間に皺を寄せたザンツィルが人差し指でダラメットを指差す。
『そうだよ……お前が罠がある床を踏まなければ失敗しなかったかもしれないだろうがぁ‼︎ 使えない奴なんかと任務なんか出来るか‼︎』
怒鳴るザンツィルに呆れてしまった。自分は悪くないと言い張る上に、ダラメットを使えない奴呼ばわり……もう、黙っていられない。落ち着かないザンツィルはダラメットに対して、まだ何か言おうとしていた。
──バンッ!
『ザンツィル!!!!』
怒りで思わず机を強く叩いてしまった。自分が怒鳴ったことに驚いたのか、ザンツィルは黙ったままこちらを見ている。ドアに向けて指を差した。
……本当は言いたくはない言葉。だが、もうザンツィルは何を言っても団員達と協力をするつもりもなければ、自身が変わるつもりもないのだろう。いつかは仲間について何か大切な事に気が付いてくれるだろうと信じていた。
小さく深呼吸をする。
『もういい。お前は……スールイティ団から今すぐ出て行け』
驚いた表情でザンツィルはこちらを見ていた。ダラメットもまさか自分がそんな事を言うとは思ってもいなかったのだろう。
『……』
ザンツィルは下を向き黙ってしまう。ダラメットは自身の所為だと思ってしまったのか慌てて自分とザンツィルの間に入り込んだ。
『ふ、二人とも仲良く……』
『──ああ、分かった。お世話になりました』
『すっ⁉︎』
ザンツィルの返事を聞いて静かに目を閉じた。ザンツィル自身もスールイティ団にいて肩身が狭かったのかもしれない。閉じていた目を開けると、怒りからか鋭い目つきのザンツィルがこちらを睨んでいた。出ていくのならば、もうこれ以上話す事は無い。右手で振り払う動作をしながら椅子を回転させた。何処に行こうと、ザンツィルはもう自由だ。
『ちょ⁉︎ マ、マジでいいんすか⁉︎』
焦るダラメットに自分は何も答えなかった。
──バタン‼︎
ドアを強く閉めてザンツィルは出て行ってしまった。