13. 正直に
小さな笑みを浮かべながら、ゆっくりと右腕の肘を曲げた。そして右手で拳を握る。
『ハハハッ! じゃあ……!』
──ドッ!
『グゲェェ!』
自分の右肘が黒髪の男性の右の脇腹に強く当たった。調子に乗っている黒髪の男性を見ているととても不愉快だ。さっさと黙らせて、世界財産がどこにあるのか優しく問いたださなければ。激痛でよろけた黒髪の男性は右手に持っていたナイフを落としてしまっていた。切られた頬の血を右手で拭いながら、しゃがみ込んでいる黒髪の男性の元へと近付く。
──ドッ!
『どぁああ‼︎』
今度はしゃがみ込んでいた黒髪の男性の背中を右足で強く蹴った。バランスを崩した黒髪の男性はその場に倒れ込んでしまう。立ったままジッと倒れている黒髪の男性を見下ろしていた。
『お、おい……、兄ちゃん……見た目にそぐわない……力だ……な……』
『そう? まだ本気で殴ってないよ』
『……ハ、……ハハ、殺さないでやるから……さっさと行……』
──ガッ!
『ぐぁあああ‼︎』
黒髪の男性の背中を右足で踏みつけて、うつ伏せの状態にさせる。これでもう身動きはとれないだろう。落ちていたナイフを拾い、刃を黒髪の男性の頸部に向けた。このままナイフを落とせば命を狙える。
『さて、今度は俺の質問に正直に答えてね。そうしないと、このナイフを首に落とすよ』
『兄ちゃん……お前……何者だ?』
『さぁ、何者だろ? もうあなたの質問は聞かない。世界財産はどこにある? さっさと答えろ』
自分がそう聞くと、黒髪の男性は小さく笑っていた。やはり所詮は噂話……世界財産なんてあるわけがないのだろう。さっさとダウスモから立ち去るべきか悩み始めていた。
『なぁ……俺を……兄ちゃんの仲間に入れてくれないか?』
仲間に入れる? 自分はまだスールイティ団のリーダーだとは一言も言っていない筈なのだが……。
〈あー、俺がどの盗賊団に所属しているのか聞き出そうとしているのかな?〉
黒髪の男性の盗む腕前や性格などが全く分からないので、もちろんスールイティ団に入れるわけにはいかない。世界財産の質問をしても何度も同じような答えならば、もうここに用はないだろう。世界財産が隠された話は完全なデマだ。せっかく貴重な世界財産を手に入れられるかと思っていたのに……。
『に、兄ちゃ……ん、まさかスールイティ団員か……?』
『さぁ?』
黒髪の男性が何者なのか分からない以上、もう話すこともないだろう。世界財産は諦めるしかなさそうだ……黒髪の男性を気絶させてダウスモから立ち去ろう。




