11. ダウスモ
「何か心配事でもある?」
「……」
自分が不在になるので、何かあったらどうしようかと心配しているのだろうか。何故かアネアは何も答えない。
自分が長期間不在になる時は、任務で出ている"バームガル"をアジトに呼び戻す。
バームガルは、各地方の都市でスールイティ団と敵対する盗賊団の動きを監視する任務にあたっている。その為、あまりアジトには戻ってこない。いつでも戻ってきてもいいとは言ってあるのだが、バームガルは頑なに盗賊団を監視すると言ってアジトに戻ってこようとはしない。
バームガルはスールイティ団を守る為なら何でもすると言って、ニ年前に入団してくれた団員だ。
過去に所属していた"ザックトルム団"を追い出され、廃墟となった街ダウスモの道路で座っていたバームガルを偶然自分が見つけ声をかけた。
〈もう二年か……〉
『んー、何だ? 見かけない顔だな、兄ちゃん』
無精髭を生やし、薄汚れたボロボロのTシャツを着て、色あせたジーンズを穿いていた男性。黒い髪色でアップバングの髪型をしている。緑色の瞳はジッとこちらを見ていた。
『ここ廃墟だよね? 何でこんな場所で座ってるの?』
『ハハハッ! 何で? 俺のような負け犬の馬鹿にはここがお似合いだと思わないか? ……金髪の兄ちゃんは、何でこんな場所にいる?』
『……』
廃墟の街ダウスモに世界財産が隠されているかもしれないという噂を聞いて訪れていた。ダウスモには、かつて大勢の金持ちが住んでいたらしい。だが、近隣にアジトを構えた盗賊団がダウスモを襲撃し、怯えた住民達は皆ダウスモから逃げ出してしまった。
襲撃後、盗賊達が街からいなくなっても住民は誰一人ダウスモに戻ることはなかった。やがて、誰もいなくなったダウスモはゆっくりと廃墟と化していってしまったようだ。
世界財産を探しにきた……とは言わない方がいいだろう。黒髪の男性が盗賊の可能性があり、先に世界財産を見つけられては困るからだ。
『廃墟を見に来ただけ。あまりこの街に長居しない方がいいよ。盗賊達がまた来るかもしれないし』
『ハハハハッ! ……盗賊か。そうだな!』
面白い事など言っていないのに、何故か黒髪の男性は大笑いしている。あまり深く関わらない方がよさそうだ……。
『それじゃ、俺はもう行くよ。お元気で』
『もう行っちまうのかぁ〜?』
右手を軽く横に振りながら歩き出そうとした瞬間だった。
──ツゥゥ……
首元の皮膚が少し切れたのか少量の血が出始める。
『おーっと、動くなよ兄ちゃん。首を切られたくなかったらなぁ』




