新入生Aクラスの教師は
リチャードは新任だがその経歴から早速教壇に立つことになった。
これは事前に通達された事なので別になんとも思わないが、リチャードにしてみれば担当するクラスに問題があった。
問題、というと語弊があるか。
問題無いのか疑問に思ったという方が正しいかも知れない。
「今日からこのクラスを受け持つリチャードだ。
よろしく新入生Aクラスの諸君」
つまりそういう事だ。
バルザス所長曰く「相手が貴族の子供でもお前なら上手くやるのだろう?」との事だった。
まあ、体よく、問題を起こすと色々面倒くさい貴族のお子様達を擁するクラスの担当を任されたわけだ。
そして、そのクラスにはもちろん娘であるシエラの姿もあった。
適当に座ったのだろうが、シエラは最前列で目を輝かせてリチャードの授業を待っていた。
授業開始から二十分程前、リチャードと学校の校門で別れたシエラは入学式の帰りに受け取った案内状に書かれた通りに校舎の一角にあるAクラスの教室へと向かった。
教室の扉を開き、中に入ると、既に登校して席に付いていたグループで仲良く会話していたクラスメイトが皆押し黙った。
シエラは十歳にして顔立ちは可愛らしさの中に美しさも見られた。
それはシエラが他の子供達とは比べるべくもない程の人生を送ってきた故。
経験の豊富さから大人っぽく見えているのだが、貴族として生まれ育った少年少女達にそんな事が分かるわけもない。
少年達はシエラを「可憐だ」と称え、少女達からして見れば制服を着崩している事も相まってシエラは「格好良い」と評される事になっていった。
我々の知るところの小学校というよりは、どちらかと言うと大学の教室の構造に近い階段状になっている席の一番窓際。
荷物も何も置いてなかったので、シエラはそこに座って授業開始を待つことにした。
剣とライフルを床に置き、机に頬杖を付いてボーッと窓の外を眺めているとクラスメイト達がシエラの元にやって来た。
入試を首席で合格したシエラとお近付きになりたいと思っての事だ。
「あ、あのシュタイナーさん」
「……なに?」
「何かお話ししませんか?」
と、クラスメイトの少年少女達はシエラと仲良くなりたい一心で話をするが、彼ら彼女らは貴族でシエラは平民。
共通の話題などが少なく、結局話題となったのは好きな食べ物は、趣味は、と当たり触りの無い話題ばかりだった。
しかし、シエラはそれを蔑ろにはせず、好きな食べ物と趣味についてを話した。
趣味である読書に関しては、話しかけてきたクラスメイト達にも同じ書籍を読んた者がいたので話も弾み、クラスメイト達はシエラとの距離を縮めていく。
チャイム、では無く始業の鐘がカーンカーンと高らかに鳴り響き、皆自分の席へと帰っていく中、シエラは窓の外をボケッと眺める。
しばらくして教室の扉を開く音が聞こえてきたので、ソチラに視線を移したシエラが見たのは大好きな父の姿だった。