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育成上手な冒険者、幼女を拾い、セカンドライフを育児に捧げる  作者: リズ


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シエラの夢

 いつぞやの夜、風呂から上がってリビングでくつろいでいたリチャードに、シエラが「何故冒険者になったのか」と聞いた事があった。


 リチャードは読んでいた小説を閉じ、何かはぐらかすように笑って「さあ、どうしてだったかな」と応えた。


 だが、シエラが「なんで?」と、諦めずに聞いてくるのでリチャードは「参った、話すよ」と昔の話をするために手に持っていた小説をソファの前のローテーブルの上に置く。


 そして、冷えた紅茶を口に運び、それを飲み込むと「私も昔は強くなりたかったんだ」と話を始めた。


「私の父さんも母さんもまだ生きてた頃、丁度私が今のシエラと同じ歳だったかな。

 昔から本が好きだった私は良く冒険譚を読んでいたんだ。

 子供だった私は、いつか自分も絵本や小説の登場人物のように冒険者になって冒険して、魔物と戦ったりしたい、そして何よりも、誰よりも強くなりたいと思った。

 幸いこの国は冒険者になることを奨励している国だったからね、両親に冒険者になりたいと言った時は心配されたが、反対されたりはしなかったよ」


「それで冒険者になったんだ」


「男の子だからってわけでもなかったんだろうけど、そうだな。言ってしまえば冒険者になりたかったからなった。

 理由なんてそんな物だったんだ。最初はね。

 本格的に強くなりたいと願ったのは母さんが病気を患ってからだったなあ」


「リチャードのお母さん、私のお婆ちゃん」


「そう、シエラのお婆ちゃんだ。

 もう、会いに行けないほど遠い所へ行ってしまったけどね。

 …………母さんが病気になって、薬の為に金が必要になった。

 当時その薬は父さんの給金だけで買うには高くてね、私も必死にクエストをこなして父さんを助けようとしたんだ。

 しかしまあ、自慢じゃないが、私には才能が無かった。何をやっても中途半端、魔法は基本以外まるで駄目。

 それでも強くなって、難しいクエストを達成し、強い魔物を倒せば母さんと父さんを助けられると信じて、鍛えに鍛えた。

 諦めなかった、諦めたくなかった。

 そんな事をしているうちに、師匠がクエスト中に死んで、何年か経って母さんが病気に負け、父さんが後を追うように事故で――」


 冒険者になった理由はすでに話終えたが、リチャードは昔話を続けた。

 もしかしたら、誰かに聞いてほしかったのかも知れない。


「戦争が起こって、終戦まで王国の騎士達と肩を並べて最前線で戦い続け。

 心労から冒険者を辞めようかと思っていたそんな時さ、この間私の所属していたパーティが訪ねて来ただろう?

 彼等と出会ってね。

 随分長い間、一緒にいたよ。

 養成所で教えて貰えない現場での機微を教えながらお互い切磋琢磨して、泣いて笑って、支え合って。気が付けば私達はこの町有数のパーティさ。

 王国への貢献度からSランクに認定され、仲間達はそれでもまだまだ成長の余地があった。

 私以外は全員ね。

 彼等ならSランクの更に上、EXランクの冒険者になれるかもしれない、今でもそう思ってるし願っているよ。

 私が子供の頃に憧れた英雄に、他国への抑止力に、そして平和の象徴に、彼等ならなれるとね」


「リチャードは英雄にならないの?」


「私には無理だ、成長する仲間達を見ていて思ったよ、無才のわたしではここまでだ……と。そうだな…………夢を……諦めてしまったんだ」


「なら、俺が代わりにそこに行くよ。

 リチャードがなれなかった、えくすとら?ランクの冒険者に俺がなる」


「ハハハ、それは嬉しいな。

 娘がそうなってくれたなら、天国にいる母さんと父さんに自慢出来るというものさ、私の代わりに私の娘が英雄になったよってね」


「……いつか、俺が――」


 話が長くなったせいか、この時シエラは半分眠っているような状態だった。目は閉じかけ、フラフラしていて眠気で意識が朦朧としていた。


 そんな様子を見ていたリチャードは、この時の会話をシエラが忘れていると思っていた。


 しかし、娘は決して忘れなかった。

 そして入所式の日に決意を新たにシエラはリチャードに伝えたのだ。


 リチャードに命を救われ、娘に迎えられた。

 恩人である優しい父の諦めた夢を引き継ぎ、EXランクの高みを目指す。


 それが、今のシエラの夢、そして今のシエラが考え得る最大の恩返しだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃぁ泣くよ・・・ こんなんリチャードさんぼろ泣きでしょ・・・
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