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追跡者(アイリス)

 リチャードとシエラが釣りに向かって街道を歩いている頃。

 二人の家に訪問者が現れた。

 家主の不在を知らないアイリスである。


 いつもならギルドの執務室にて書類に睨みを効かせ、サインを書くために手を動かしている時間なのだが。


 今日この日、アイリスは親子二人を連れて遊びに行く事を決心して、普段は着ないブラウスにロングスカート、手には早朝から作ったサンドイッチの入ったバスケットを持ってリチャード宅を訪れたのだ。


 自然によ自然に、今日は休日で暇だからピクニックにでも行かない? って言えば良いだけ。

 ああ、でももし二人に断られたら……ええい、ままよ!


 と、アイリスは心臓が早鐘の様に鳴りそうになるのを深呼吸して落ち着かせようとする。


 だが、過去にあらゆるクエストをこなし、数多の強力な魔物を倒し、戦争すら経験した事がある歴戦の勇士は緊張のあまり玄関のドアノッカーを掴んだは良いが叩く事が出来なかった。


 そんな時だった、リチャードの家の前を通った隣の家に住んでいるおば様が玄関前でドアノッカーを掴んで固まっているアイリスに「あら? シュタイナーさんにご用かしら?」と声を掛けてきた。


「あ、こんにちは」


「はい、こんにちは。ご丁寧にどうも。

 シュタイナーさんなら朝から釣り竿持って娘さんと出掛けるのを見かけましたよ?」


「え? 本当ですか?」


「ええ、ええ。色々荷物も持ってましたから、しばらくは帰って来ないんじゃないですかねえ」


「そうですか、分かりました、ありがとうございます」


「いえいえ、それでは。地の神のご加護があらん事を」


 アイリスに言うだけ言うとおば様は立ち去っていった。

 袋を持っていたので買い物にでも向かったのだろう。

 1人取り残されたアイリスは落ち込んだのか息を大きく吸った後、特大の溜息を一つ吐く。


「なんで、なんで誘ってくれないのよ。

 いやまあ付き合ってるわけじゃないし?

 でも最近は仲良く出来てると思ってたのに、コレどうしよう…………追うか」


 サンドイッチの入ったバスケットの蓋が固定されている事を確認し、アイリスは魔法を2つ発動した。

 一つは個人の持つ魔力の残滓を視覚化する魔法、チェイサー。

 もう一つは身体強化魔法の中でも脚力強化に特化したアクセラレーションという魔法だ。


 割と本気で標的を追跡する際に使用されるような魔法の組み合わせを発動させてアイリスは走り出した、ロングスカートで。


「ああもう! スカートは失敗だったわ!」


 ヒールじゃ無かっただけマシか、と思いながら、アイリスは走り、二人に追いつくためにチェイサーで二人の向かった方向を確認しては最短距離を行くために2階建ての家屋の屋根の上まで一足で跳ぶ。


 そして、着地寸前に重量軽減の魔法を発動して、アイリスは屋根伝いに走り、跳び、リチャードとシエラを追った。


 一方その頃、自分達がまさか追われているとは露知らず、親子二人は街道を外れ、草原を川に向かって歩いていた。

 

「親父、魚釣りって面白いの?」


「ああ、面白いとも。

 最初は釣れなくて面白くないかも知れないが、掛かった瞬間の手応えはなかなかだぞ?」


「釣れるかな?」


「釣れたら今日のお昼は焼き魚だな」


「ん。親父の料理なら焼き魚も好き」

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[良い点] 片想い中の199歳の乙女、アグレッシブすぎる
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