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武器を振るならギルドの鍛錬場を借りよう

 翌日からシエラの特訓は熾烈を極め……なかった。


 いつものように早起きし、運動用のシャツとズボンに着替えた二人は「今日は向こうの区画まで走ろう」と日々徐々にではあるが距離を伸ばしてシエラの体力の付き具合をリチャードは見ていた。

 そしていつものようにジョギングを終えると家に帰って朝風呂を楽しむ。

 リチャードが冒険者として励んでいた頃には、全く思い浮かばなかった一日の始まりだ。

 

 そして、今日からはまた新しい日課が生まれることになる。

 午前中、シエラは勉学に勤しみ昼食を挟んでは昼寝をし、目覚めると筋力強化と武器の使い方の勉強の為、リチャードはシエラを連れ、鍛錬場を借りる為に冒険者ギルドへと向かった。


「アイリスに会うの?」


「ああ。そうだな、場所を借りるとは以前言ってはいるが、日時は指定していなかったからな。顔は出すべきか」


 ギルドに到着した二人は受付に顔を出し、アイリスの在席を確認すると「執務室で勤務中です」との事だったので「お呼びしましょうか?」というギルドの職員の心遣いを「いや、仕事を邪魔する訳にはいかない」と断ったリチャードはシエラの手を引いてアイリスの執務室を目指そうとした。


 その時だった。

 ちょうど二階への階段に差し掛かった時の事、二階から会おうとしていた冒険者ギルドのマスター、アイリスが下りてきた。

 不意の鉢合わせに驚き、三人が三人とも一瞬動きが止まる。

 最初に声を出したのはリチャードだった。


「やあ、アイリス。すまないね仕事中に」


「べ、別に構わないわよ、丁度休憩しようと思ってたし」


 どうしたのリチャード、会いに来てくれたの? 嬉しい。とは言えない片思い中のエルフさん199歳。

 そろそろ生誕200年を迎えるアイリスは周りの目もあって、ついツレナイ感じを出してしまう。

 そして彼女は自宅に帰った後に激しく後悔するのだ「なんであんな言い方しかできないんだ私は」と。


「以前話していた通り、鍛錬場を借りに来たんだ。

 しばらく通わせてもらうが構わないかい?」


「ええ、どうぞ。Sランク5人を育てたその力、とくと見せてもらうわ」


「そんな大層な事をする訳ではないよ、まずは基礎体力、武器の基本的な使い方からさ」


「そう。見学させてもらっても?」


「もちろん、シエラも喜ぶよ」


 というわけで、何とか想い人と共にいる時間を作れたことに小躍りしたい気持ちを抑え付け、アイリスはリチャードとシエラの後ろを付いてギルドの裏手、野外の鍛錬場へと移動した。

 そこでリチャードはまずシエラに自宅から持参した木剣を渡すが、そこで何かに気が付いたようにシエラが木剣とリチャードの顔を交互に見る。


「親父、買った武器忘れた?」


「いや、忘れたわけではないよ。まずは筋力を付けないと折角買った剣もうまく振れないだろう。

 怪我の防止の為にもまずは木剣からだ、良いね?」


「ん。親父がそう言うなら」


「よしよし、良い子だ」


 リチャードに頭を撫でられ嬉しそうに微笑むシエラを見て微笑ましく思う反面、羨む心がアイリスの口から「いいなあ」と言葉を吐かせた。

 

「アイリス、何か言ったかい?」


「な、なんでもない! なんでもないわ!」


「そ、そうか、すまない。聞き間違ったようだ」


「アイリス、素直じゃない」


「うぐ」


 リチャードがアイリスに背を向け鍛錬場の中央へと先に向かった後、残っていたシエラに言われてダメージを受けるアイリス。

 そんなシエラもアイリスを尻目に父の待つ鍛錬場の中央へ駆けて行った。


 そして軽く準備運動をした後、武器の持ち方から基本的な構えなどをシエラはリチャードから学び、素振りをしたり筋力強化に努め、この日の鍛錬は終了となった。

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