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元冒険者仲間の来訪

 リチャードが冒険者を辞めてしばらく経つ。

 長らく冒険者としてクエストをこなし、冒険を重ねて強くなり、時には怪我をして療養の為に休んだりもした。

 その療養期間の度にリチャードはこの世界にはびこる魔物の生態を学び、力だけではなく知識を用いて戦い続け、そして生き残ってきた。


 そんなリチャードの知識を欲して、ある日、昔の仲間達がリチャードの家を訪れ、玄関の扉を叩いた。


「やあ。久しぶり、というには早い再会だな」


「……リチャード」


「まあ、入ってくれ。遊びに来たわけでもあるまい? 何か話があるんだろう?」


 リチャードがわざわざ訪ねて来てくれた引退まで約10年所属していたパーティの仲間5人を招き入れてリビングに迎える。


 そこで5人はリビングのソファで座って小説を読んでいるシエラを見つけた。


 突然現れた5人の知らない人物に驚いたシエラは小説を持ったまま先に入ってきたリチャードの後ろに隠れる。


「リチャード、その子は?」


「ああ、紹介しよう。私の娘のシエラだ。

 シエラ、彼らに挨拶を。皆私の友人でね」


「ん。……はじめまして。シエラ・シュタイナーです。……よろしく」


「あ、え? ああ、はじめまして、よろしく……え? 娘? リチャードが結婚してたなんて聞いた事ないぞ」


「彼女は養子だ。縁があってね、引き取って一緒に暮らしているんだ」


 リチャードの元冒険者仲間たちはシエラの存在とリチャードの言葉に驚いて目を丸くしていた。

 青天の霹靂と言うやつだろうか。

 しばらく仲間たちはシエラを見つめて動かなかった。


「今日はどうした? 私の引退を受け入れてくれた君達が私を引き戻しに来た訳ではあるまい?」


「俺達を育ててくれた恩師、リチャード・シュタイナーを引き戻したくないと言ったらそれは嘘だ。

 正直俺達は、いや皆が違う考えでも、俺はアンタをまた仲間に加えて冒険したいと思ってる。でも――」


 リチャードの言葉に、大剣を携える一番若い剣士の青年がシエラの頭に手を置いているリチャードと、その手を嫌がらずにリチャードの横に立つシエラを見て、悲しそうに顔を歪める。


「こら、違うでしょトールス。私達がここに来たのはリチャードの知恵を借りる為でしょ」

 

「分かってるよミリアリス。

 すまない、先生の顔を見たらつい――」


 大剣使いの青年トールスを叱ったミリアリスと呼ばれた聖職者風のローブの女性の言葉に、リチャードは「相変わらずだな」と苦笑する。

 そして、リチャードはシエラにソファに座るように促してから一緒にソファに座ると、5人の元冒険者仲間たちにも座るように促した。


「さて、本題に入ってくれるかな? 私の知恵、知識は君達に伝えてきたと思うんだが」


「そうですね先生。いえ、リチャード。本題に入りましょう。

 私達Sランクパーティ、緋色の剣は明日からアースドラゴン討伐の依頼に向かいます。

 リチャードが抜けてから初めてのSランクの依頼です」


「アースドラゴンか、まあ君達5人なら問題無いと思うが……」


「ありがとうございます。そう言って頂けるだけでも自信に繋がります」


 リチャードがパーティに所属していた頃からリーダーはミリアリスが務めていた。

 魔法使いの中でも回復職寄りである彼女だが、後方に控えている彼女だからこそ、パーティ全体の動きが把握しやすいからというのと、単に彼女が一番弁がたつという理由からだ。


「今回のクエストからはリチャードの都度のアドバイスがありませんからね。

 アースドラゴンの弱点の再確認と討伐作戦に穴が無いか、それだけ確認して頂きたくて、今日は不躾ながらこうしてお邪魔しました」


「そう固くならなくて良いよ。引退したとは言え友人である事に変わりはあるまい?」


 そしてこの後、リチャードは元パーティメンバーの持ってきた資料を確認しながら、飛行能力は無いながらもSランクの魔物であるアースドラゴンの攻略法等の再確認を手伝った。


「ふむ、良く私の教えた事を覚えていたな。

 作戦に関しても特に問題は無いように見える。

 山岳地帯ならあの巨体だ、動けるルートには限りがあるしな。

 だが油断するなよ? 相手は賢い生物だ――」


「慢心は死を招く、リチャードの教えでしたね。

 分かりました、ありがとうございます」


 資料を片付け、ミリアリスは立ち上がるとそう言いながら頭を下げる。

 そして5人はクエストの最終準備の為に帰る支度を始めた。


「シエラ、さんでしたか。娘さんも冒険者を目指すのですか?」


「いや、この子の将来はこの子の物だからね。

 私は強制するつもりは全く無いよ。

 まあ、シエラが冒険者になりたいと願うなら、私は止めないがね。

 何故そんな事を聞くのかな?」


「Sランク冒険者であり、私達5人をわずか数年でSランクに導いたリチャード・シュタイナーが直々に育てる若い冒険者。

 見てみたいと思うのは当然では?」


「大袈裟に言う。私は大して何もせず、君達が努力のすえ辿り着いたSランクだと言うのに」


「リチャードは卑屈に過ぎます。貴方だって十分……いえ、失礼しました。

 改めて今日はありがとうございました先生。

 また皆で遊びに来ても良いですか?」


「ああ。次来た時は何かお菓子でも出すよ」


「楽しみにしてます。 ……では、行ってきます」


「行ってらっしゃい。君達に神の御加護があらんことを」

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― 新着の感想 ―
[良い点] また、フラグの匂いがしますね…ずっと片想いしている香りが…
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