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最果ての町

 最果ての町フラリク。

 最果てなどと呼ばれるフラリクは小さな町だが決して寂れている訳ではなかった。


 エルフの里、シーリンの森を含んだ美麗な聖域の手前の町として旅人や聖域への巡礼者が度々フラリクを訪れる為、宿屋、雑貨屋、様々な施設が町には数軒並んでいる。


 町の外れの小さな丘にはポツンと教会も建っており、町の真ん中には行商人が時折訪れる為、露店を開けるように広場も設けられていた。

 自然の豊かさに心惹かれて住み着いた旅人が開拓した町という事もあり、旅人の町とも呼ばれる事もあるこの町。

 フラリクにリチャードとシエラ、ロジナは冒険者達に案内されて向かっていた。


「では街道近くにいたヒュージボアはーー」


「ふむ。私達が遭遇したのはロジナが討伐した一頭だけだ。君達が受けた依頼の討伐対象だと思うが、すまないね戦果を横取りしてしまったようだ」


「いえ、ヒュージボアとまともにやり合ったら我々では怪我人も出たでしょうし。むしろお礼を言わせて頂きたいくらいです」


 冒険者パーティは乗ってきた馬車の御者に、先に戻って町に銀狼を従えた旅人が来ると伝えてくれと自分達は馬車に乗らずにリチャード達と歩いていた。

 

「それにしても、まさかシルバーハウンドをテイム出来る人がいるなんて」


「ああ〜いや、最初は随分汚れていてね。グレイハウンドだと思っていたんだ。洗った時にもしやと思ったんだ。毛色は似ているが確証が持てなかったんだが、やはりシルバーか。まあロジナとは縁があったのさ」


「このシルバーハウンド、雄なんですか? 雌なんですか?」


 ロジナをもの珍しそうに見る魔法使いの女性が興味津々で聞くが、リチャードはそのあたりを特に気にはしていなかったので「分からない」と答える。

 すると、ロジナに抱き付くように乗っていたシエラが不意に飛び降りてロジナの横に回り込んで首を傾げるように腹の下を覗き込んだ。


「ロジナ、付いてない」


「こらシエラ、そういう事言わない。ロジナが困ってるだろ?」


 リチャードに言われてシエラがロジナを見るとロジナの尻尾と耳が力無く垂れていた。

 人ほどではないが、その表情からもロジナが困っているのはありありと感じられる。


「ロジナごめんね」


「ワウゥ」


 歩いているロジナの背に当たり前のように飛び乗ってシエラはロジナの頭に自分の顎を乗せると、小さな手でロジナの頭を撫でた。

 その様子にリチャードは和んで微笑みを浮かべているが、冒険者達は冷や汗を流してシエラを見ていた。


「お嬢さん、凄い身体能力ですね」


「鍛えているからね。困った物さ、この間も湯屋の外湯の仕切りを飛び越えてきてしまってね」


 困った物さ、などと言いながらもリチャードの表情はどこか嬉しそうであり、誇らしげだ。

 

「仲が良いんですね」


「そうだな。大事な娘だからね」


「奥様は今どちらに? というかお二人は何処から来たんです?」


「事情があってまだ妻では無いのだが、この子の母親はエドラにいる。信じてもらえないかもしれないが、私達2人もエドラから来たんだ」


「エドラ⁉︎ 地図で見たら真逆の果てじゃ無いですか⁉︎ 隣国との国境に1番近い街ですよね?」


「ああ、そのエドラだよ」


「遠路遥々、なんて物じゃ無いですよ? なんでこんな場所まで」


「いや本当に。どうしてだろうな」


 さて、女神様が関与して神獣である羽鯨にエドラから魔法でここまで転移させられたと言って果たしてこの冒険者達は信じるだろうか? そんな事を考えながらリチャードは歩きながら空を見上げて目を細めた。


「まあなんにせよ、私達はエドラへの帰り路というわけさ」


 視線を元に戻し、歩くリチャード達の目に遠巻きにだが町が見えた。小さな湖の側にある小さな町だった。

 そんな小さな町フラリクだが、随分活気には溢れているようで、町からは遠目にでも人の往来が見える。


 ただ、やはり従魔契約をしていない魔物を連れているという事もあってか、すんなり町には入れそうにない。


 町の入り口付近には装備に身を包んだ冒険者と思われる一団や、この国の軍人である駐屯兵が数名、剣と盾を手にリチャード達を待ち構えていた。

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