プロローグ
初投稿です。
ページごとに多少文体が変わるのは書き慣れていないせいです。
後から修正していきますのでご了承ください。
ご意見ご感想、また評価を頂けると嬉しく思います。
辺境の地に『ヴィズの森』という大きな森があった。
別名『黒楢の森』とも呼ばれるこの森は、楢の木が長い年月を掛けて溜め込んだ魔素により、木々は黒ずみ、葉もとても濃い色をしている。また、そのせいで森は暗く閉ざされ、いつ魔物が飛び出してくるかもわからない危険な場所でもあった。
「きゃあっ」
森に響く少女の悲鳴。
しかしそれに応える者はいない。
一ヶ月前に近くの村から冒険者ギルドへ調査依頼が出され、今この辺りは今立ち入り禁止となっている。そしてその調査に訪れたのがこの少女というわけなのだから。
少女のランクからすれば決して無理な依頼ではなかった。
ただし、その情報が一ヶ月も前でなければ──
殴られる直前で割り込ませた愛剣は砕け、庇ったはずの横腹からは激痛が押し寄せてくる。食道から熱いものが逆流し、吐き出した。
荒い呼吸。激しく脈を打つ鼓動。
紛れもない『死』がすぐそこに広がっていた。
意識があるかないかの違いはあれど、結果は同じだった。
少女に再び立ち上がる力はもう残されていない。
敗者は蹂躙され、淘汰される。
これが、子供でも知っているこの世界の不文律である。
「はぁっ、はぁっ……」
ありえない。いったいいつから!?
食べる事しか能のない豚が、罠を張るなんて……。
掠れる瞳の先では、少女を嘲笑うかのような魔物達の姿。
汚い唾液を口から垂らし、己が欲望を抑えきれず本能のまま一歩、また一歩と少女へと迫る。
悔しい。悔しい……。
わたしはただ、あの人に。
あの人に褒めて欲しかった、だけなのに──。
少女が最期に想いを馳せたのは、憧憬の背。
大好きな姉の、後ろ姿だった。
「ごめんね、お姉ちゃん……」