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第9話 三人の現在

前回のあらすじ

エンデと契約結婚することになった

 

 エンデと握手を交わした後、再びソファーに腰掛ける。

 エンデも座り、テーブルの上にある呼び鈴を手に取る。


「執事を呼びたいので、魔法を解除していただいても?」

「ああ」

「それと、執事には先程の話を話しておいても構いませんか?」

「その執事は信用出来るのか?」


 俺がそう尋ねると、エンデは頷く。


「はい。父の代から我が家に仕えてくれている執事なので、ヒトとなりはわたしが保障致します」

「その言葉を信じよう」


 俺はそう言い、三重の魔法を解除する。

 それを確認した後、エンデは呼び鈴を鳴らす。

 するとすぐに、壮年の男性が入ってきた。


「お嬢様。如何なさいましたか?」

「エミール。話があるの」


 エンデは執事―エミールから視線を外し、俺の方を向く。

 それを合図に、俺は再び三重の魔法を展開する。


「防音、防聴、それにこれは……防視、ですか。それほどの内容なのですか?」

「ええ。これから話す内容は他言無用にお願いね」

「畏まりました」


 エミールはそう答えると、深々と頭を下げる。

 そしてエンデは、ついさっきここで話した内容をエミールに伝える。

 エミールは表情こそ変えなかったが、驚いているのは雰囲気から伝わってきた。


「なるほど、理解しました。確かに他言無用ですな」

「ええ。それと急にわたしに夫が出来たと言っても家の者が混乱すると思うから、その辺りのフォローもお願いね」

「はい、お任せを。……話は変わるのですが、クリス様の従者の扱いは如何なさいますか?」

「クリスさん付きの従者で構わないわ。何なら、新人の使用人として採用して、エミールが教育係になった方が色々と都合が良いかもね?」

「ではそのように」


 エミールはエンデとの会話を終えると、俺の方を向く。

 そして深々と頭を下げてくる。


「クリス様。これからどうぞよろしくお願いいたします」

「ああ。エンデからも言われているが、俺の目的については他言無用だ。重ねて言うが良いな?」

「はい」


 エミールはそう答えると、頭を上げる。

 そして再び、エンデの方を向く。


「それでお嬢様……いえ、奥方様。クリス様達は今日からこの屋敷で生活なさるのですか?」

「どうしますか?」


 質問されている張本人に、俺の方が質問された。


「可能なら今日からの方がいいが……無理にとは言わない。そちらの都合もあるだろうからな」

「……だ、そうよ?」

「準備にはそれほど手間取らないので、今日からでも問題はございません」

「なら今日からよろしく頼む」

「畏まりました。では少しの間、ベルトーチカをお借りしても?」

「ああ。……ベル。エミールに使用人としての心得を教えてもらえ」

「はい」

「では」


 エミールは軽くお辞儀をすると、ベルを連れて応接室から出て行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 ベルとエミールが応接室を出て行った後、俺はエンデにまだ聞いていなかったことを尋ねる。


「さて……エンデ。勇者パーティーのあの三人の今現在の情報を教えろ。と言っても俺も鬼や悪魔じゃない。エンデが知っている限りの情報だけで構わない」

「分かりました。ではお教えします」


 エンデはそう言うと、姿勢を正す。


「ではまず、ダール卿から。ベガの街を治めるダール卿はなんと言っても、奥方が複数いらっしゃることですね」

「複数?」

「はい。正妻のルミナ様の他に、側室が四人ほどおります。あとこれは噂程度の情報なのですが……正妻、側室の他に愛人が十人ほどいるとかいないとか」

「そうか」


 流石(?)、グランだ。

 毎夜の如く娼婦を抱くほどの性欲魔人なのには変わりないようだ。


「次は……アイギス卿にしましょうか。アイギス卿はデネブの街を治める領主になっておられますね」

「デネブ……ああ、あの海岸沿いの街か。確かリゾート地として有名だったと記憶しているが?」

「その認識で間違いありません。デネブの街は今も有名観光地として国内外に名を馳せています。……っと、話が逸れてしまいましたね。アイギス卿にも奥方はいらっしゃいます。ですが今の奥方は二人目なのです」

「二人目……一人目は?」

「第一子を出産直後に亡くなられた、とは聞いています」

「そうか」


 そのことに気の毒には思わなくはないが、俺にした仕打ちのことを考えれば同情する余地など微塵も無かった。


「最後はアポロニア卿ですね。アポロニア卿も他の二人と同じく、アルタイルの街を治める領主になられております」

「アルタイル……王都の次に大きい都市だったか?」

「はい。そしてアポロニア卿も他の二人と同じく婚姻なされています。その相手は――」

「聖女メルシア。メルシア・アルテミスか?」


 エンデの言葉を遮ってそう言うと、エンデは驚いたように目を見開く。


「そうですが……知っておられたのですか?」

「いや? ルナセールはメルシアに好意を抱いていたようだからな。そうだろうと予想しただけだ」

「そうですか……それとお三方は今も現役の冒険者として活躍なさっています。暗殺はまず成功しないと考えるべきかと」

「その情報は価値があるな」


 暗殺も復讐する手段の一つにはあっただけに、その情報はありがたかった。

 これで奴等への復讐は、正攻法しかないと分かった。


 つまり――一対一(タイマン)での殺害だ―――。






復讐対象の現在と居場所までをも知ったクリス/エド。




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