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4.【弁当騒動】

 何気ない日々の繰り返しに戻り、眞鍋が馬路の恋愛について忘れかけていた時である。

 その日の朝も眞鍋は朝礼前に仕事へ対する意識を集中させていた。


「眞鍋」


 不意に声を掛けられ、ただただ腕にはめた時計を眺めていた眞鍋は顔を上げ、神妙な顔の馬路を見詰める。

 そして、「なんだ?」と問い返すよりも先に馬路の持つ見慣れない可愛らしい弁当箱に視線が止まった。


「・・・弁当だよな?」

「弁当だな」


 眞鍋は至極、当然とも云うべき当たり前の事を馬路に確認する。


「・・・自炊か?」

「そんな訳ないだろう。仮にそうだとしても、こんな如何にも女子力のある弁当なんか作ってこれるか」

「だよな。しかし、そうなると・・・」

「ああ。会社の前で例の久美原って娘が渡された」


 そう答えると馬路は自分のデスクの上に置き、二人して、それをしげしげと眺める。


「中は確認したのか?」


 しばらくの沈黙のあと、眞鍋は馬路にポツリと質問すると馬路は首を左右に振った。


「まだ見てない」

「確認しよう。案外、どっきりでしたってオチかも知れないからな」


 二人はどちらからともなく頷くと布包みを丁寧にほどき、弁当箱の中身を確認する。

 弁当箱は二層になっており、上はカボチャの煮付けや茹でた人参など緑黄色野菜にタコの形に切ったウィンナーが添えられていた。


「本格的だな?」

「そうだな?」


 二人は改めて、この弁当箱の女子力の高さを再認識すると下の弁当箱に視線を移す。

 その下を見て、二人は我が目を疑った。

 予想はある程度していたが、まさかの直球であった為、デレるよりも困惑の方が強かった。

 二人が目にした下層の弁当箱ーーそこにはハートの形をしたそぼろごはんがあったからである。


「馬路!?久美原って娘とどういう関係なんだ!?」

「だ、だから、わからないってーー」

「いやいや!わからないじゃないだろ!

 こんなアプローチされて!

 お前、なにしたんだ!?」


 完全に動揺する二人はあまりにも直球な愛情弁当が頭から離れず、しばらく、思考がフリーズする。


 本来、社畜には不要な筈の感情。


 それを前にーー特に貰った方の馬路はーーどうすべきか、経験のない頭で考える。

 朝礼の時間五分前に眞鍋はようやく、正気に戻ったが、弁当を貰った馬路は未だに頭を抱えていた。


「とりあえず、この話は一旦、保留にしよう。

 まずは仕事に気持ちを切り替えないとな」

「ん?あ、ああ。そうだな?」


 自分に言い聞かせるように眞鍋が呟くと馬路も未だに困惑しながら頷く。

 果たして、この弁当の真意はなんなのか?


 それが気になりつつも二人は普段通りに朝礼に出て、仕事に励むのだった。

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