砂漠の主、盗賊と出会う
とある島の広い砂漠の端に佇む小さな塔の中での出来事だった。
山を抜けて砂漠に到達してきた数十名の男達はやっとの思いでその日の宿となりそうな塔を見つけたのであった。
「ハァハァ、マッシュのアニキィ〜」
「何だ?どうした?」
「この塔なんかやっぱこわいっスよ!砂漠の中にあるにしちゃ砂つぶのひとっつも見つかんないし、その割には食いもんとか服とかもないし!」
一日かけて山を越えてようやくこの塔までたどり着けた彼らであったが、中の少し奇妙な雰囲気に訝しさを感じていた。
「んなこたぁオレだって分かってるよ!!人が住んでるような気配はないのに、変に手入れが行き届いてやがる...もしかしたらバケモノの住処に来ちまったのかもな。まあ安心しろ、オレがいる限りお前らに手出しはさせねぇ。」
と、この集団のリーダー格であろう男マッシュは背中に背負っていた剣を下ろしながら言った。
マッシュは他の数十名の男達と盗賊団を結成し、ひとまずの頭として、アジトとなる場所を求めてやってきたのだった。
「さっすがアニキ!ホントたよりになるっす!」
「ケンナギの覇者がいてくれるのホント心づよいっス!」
と周りの男達も少し警戒をくずしながらそう言った。
「とりあえず今夜は手元の食料で夕飯すましちまうか...ん?」
マッシュが他の盗賊達にそう言いかけた時、塔全体が少し揺れた。
「ヒィィィィィィィィ、と、と、塔が揺れてるぅぅ」
「アニキ!食料置いてた部屋から変な音が!」
「!!」
その声を聞いて盗賊達は慌てて荷物を見に行くと、そこら中に砂ぼこりがぱらぱら舞っていた。
目を凝らしてみると奥の方に何か動く影があった。
盗賊達が武器を拾い上げ、警戒しながら近付いて行くと影から声がした。
「誰さ?お前ら?人んちで何してんさ?」
ちょうどその時砂ぼこりが消え、得体の知れなかった影が少年の姿へと変わっていった。
白い布と黄色の刺繍で作られた半袖半ズボンに、明るい目付き、長い黒髪の少年であった。